四歳の男の子が棉飴を銜えたまま転んで、棉飴の割り箸が喉に刺さり、運ばれた病院の医師は、傷口に薬を塗っただけで、親の心配を意に介せずに帰宅させ、数時間後男児は死亡した、という「業務上過失致死」事件の裁判で、裁判所は、医師の過失は認めたが、無罪の判決を下した。
 6センチの長さの割り箸喉の奥から小脳まだ達しており、致死的な障害だったから、医師の過失によって死亡に至ったものではないと判断して無罪としたものである。
 この子の両親は、納得できないとして大変憤っている。両親の気持ちは分かるが、告訴事実からすれば「過失致死」とは言えないであろう。過失と死との間に因果関係がないからである。
 しかし、子供に意識がなく、ぐったりとしている状態から、脳神経外科に連絡して、脳のCT検査をするくらいのことは必要であったし、これに気付かず、「眠っているだけ」として帰宅させたことは、助ける方法はなかったとしても、親として尽くせるだけ手を尽くしたという思いにはなれないだけに、無念至極であろう。この意味での慰謝料問題は残るのだ。
 更に、その子のカルテは後で書き加えられ、変造された疑いもあるというのである。とすれば、この罪も問われねばならないであろう。
 判事は「訴因」意外についての判断をしてはならないから、こういう判決はやむを得ないのかもしれぬが、「助からない障害だったから無罪」というのはいまひとつ納得し難いものがある。
 村上新八