シドニ−で行なわれた日米豪の外相、国務長官による「日米豪閣僚級戦略会談」では、中国の軍拡、6者協議、イランの核開発などいろいろな問題が話し合われたようだが、新味のあるものではなかった。
 ライス長官の本当のねらいは、来月にも予定されていた日豪のイラクに駐留部隊撤退を延期させることにあったのだと思う。
 会談後麻生外相は、「撤退云々の話は出なかったが、イラク政府もまだ機能していないなかで撤退する理屈が立たない」と撤退延期をほのめかしている。
 撤退云々の話が出なかったというのはウソで、この話が中心だったと思う。
 米国としては、イラクの治安は悪くなる一方で、ついに、シ−ア派スンニ派の武力抗争激化へとエスカレ−トし、両派に多数の犠牲者が出ている今、日豪の部隊に撤退されることは、他の派遣国の連鎖撤退という「ドミノ現象」を引き起こしかねないし、これはスンニ派及びアルカイダ勢力を勢い付かせるだけ、という懸念から、これを延期してもらいたかったに違いないのだ。
 復興支援、人道援助という自衛隊派遣の大義は消え失せ、いまや「撤退ドミノ」防止のつっかい棒にさせられているのだ。ライスはこれに成功したのである。
 村上新八