YASUI Hiroki wrote:
> 安井@東大です。
> 
> 
>>YASUI Hiroki in <ymrmfysgtf9j.fsf@sx102.ecc.u-tokyo.ac.jp>
>>
>>>日本国憲法59条2項に
>>> 「衆議院で可決し、参議院でこれと異なつた議決をした法律案は、衆議
>>>  院で出席議員の三分の二以上の多数で再び可決したときは、法律とな
>>>  る」
>>>という規定がありますので、“衆議院で三分の二以上の議席を獲得するこ
>>>とを目的としての解散”という理屈も一応成り立ちます。
> 
> 
> 太宰 真さん in <dfp7o9$ehv$1@news-wst.ocn.ad.jp>,
> 
>>(1)細かいことを言うようなので恐縮なのですが、憲法の目からすれば、内
>>閣が、衆議院で三分の二以上の議席を獲得することを「目的として」解散に
>>踏み切るかどうかはどうでも良さそうな気もするのですが。内閣が、それを
>>「目的」にしようがすまいが(つまり、内閣の意図が別のところにあろうとも)、
>>客観的に、事態がその可能性を含む限りは合法的な解散であった、こうは
>>考えられないのでしょうか?
> 
> 
> 拙稿は、先の解散にどのような「正当性」があるのかという点に関する松
> 山さんの記事に対してコメントしたものであり、解散の合法性を論じたも
> のではありません。そもそも、合法性について論じるのなら、7条解散説に
> 基づく憲法運用が慣行化していることに言及すれば良いだけのことであり、
> 59条2項に触れる必要はないでしょう。

なるほど。しかしまた、「正当性」とはいかなるものを言うのでしょう。
勿論この疑問は、ここで、「合法性一般」や「正当性一般」さらに「正統性
一般」を論ずるような議論をするつもりである事を示すものでは御座いませ
ん。当方の中では「合法性」と「正当性」との区別の実益があまりなかった
ものですから不注意で見解に違いをもたらすほどのものとは意識できなかっ
ただけで御座います。で、どのような違いとなって見解に表れるのでしょう
か。

> なお、上記記事内容から判断する限り、太宰さんは正当性と合法性を全く
> 区別しない立場に立っておられるように見受けられますが、その種の信奉
> 者の方との議論は私の能力を超えていますので、両者の区別の問題につい
> てこれ以上深入りするつもりはありません。

わたくしは、「両者(「合法」と「正当」)の区別の問題」について関心を
持つものでは有りません。その区別が、今回の具体的場合に決定的に違いを
見せると考えておられる、安井@東大氏のご意見をぜひお聞かせください。
今回の具体的場合には特に関心が有ります。と申しますのは、わたくしには
さほど結論に影響を及ぼすものとは考えられないからです。

確かに、わたくしは、基本的に、広い意味での「悪法は法ではない」と言う
立場に立つゆえ、「結果の妥当性」を導かない法はその解釈も含めて、法で
はなく、それにいくら適合的であっても「合法」ではありえない、と考えま
す。即ち、「正当」でなければ「合法」ではない、との前提で「合法」と言
う言葉を用いたのでした。ただそれだけのことなのです。ですから安井@東
大氏にあられては、「正当性」と読み替えて誤りを指摘してくださって大い
に結構なわけです。安井@東大氏は、皮肉的に「正当性と合法性を全く区別
しない立場に立っておられるように見受けられますが、その種の信奉者の方
との議論は私の能力を超えています」というような言い方をされて「内容」
に入るのを避けれおられるようですが、むしろ、わたくしは、

   概括的にではなく個々の具体的法を前にして、実質的に、
   その法の「正当性」と「合法性」とを常に必ず峻別できる

とする考えをこそ皮肉ってみたくもなりますね。もちろん峻別しようとする
意図がわからないわけではない。例えば、嘗ての治安維持法、このような法
について種々の事情から全否定(=合法性の否定)はできないまでも、いく
らかでも悪を制限する事を可能にする読み方をするには「正当性」と言う概
念を用いた方が便利だ、と。しかし、この様な懸念は現日本国憲法のもとで
は必要ないことではありますまいか。従いまして、法の「合法性」を超えて
「正当性」を語ることの「目的」だけはお答え願いたいと思います。「結論
の違い」を見ない世界で「正当」・「不当」だのあるいは「合法」・「非合
法」だのと区別を語っても語る意味がないと言えましょうから。

むしろ、わたくしの関心事は、

> 合法性について論じるのなら、7条解散説に
> 基づく憲法運用が慣行化していることに言及すれば良いだけのことであり、
> 59条2項に触れる必要はないでしょう。

に在ります。「憲法運用が慣行化」していることは「合法」でも「正当」で
も有りません。立場によっては「違法」なまま持続しているに過ぎないと見
るべき場合で有りましょう。「合法的」(ここでは憲法適合的)であるため
には解散は69条のみによってなされるべきか7条によってなされるべきか
の問題は依然残っているのです。で、その何れを採用すべきかは、今回のよ
うな具体的場合にも説得的な理由と「妥当」な結論を読み取れて始めて言え
ることであって、それを素っ飛ばしては決められない。

更に、「合法に付いて論じるなら、、、59条2項に触れる必要はない」とされ
ている点も疑問です。仮に7条が合法=正当であったとしても、内閣が解散
を無制限にできるか否かは、7条説に立つ理由によっても異なってくる。翻
って、解散根拠を何処に求めるかと言うことと、「どんな場合」にそれが可
能か、ということとは別もの。法を読む場合、例えば議院内閣制を採用して
いるからとかの、中間項目を作って、そこから直ちに7条説に至ったりすべ
きではなく、その具体的な「どんな場合」がはたして「妥当な場合」である
かという一種の「結論の妥当性」を、どちらの説からより導きやすいかでも
って決定すべきだと考えます。議院内閣制と言いましてもそれは結局は日本
国憲法で言うところの「議院内閣制」であって、また、それにしか日本国憲
法は関心を示すことはない。

やはり、今回のような事例では、憲法規定の第59条2項に触れる必要がある
と言えましょう。そして、それと因果関係を持つ解散であるからこそ「正
当化」もできるし、「合法的」でもあるわけです。それ以外にはできない。

>>(2)「衆議院で三分の二以上の議席を獲得する」ことを、「一応」の「理屈」だ
>>と仰いますが、では、此たびのような解散が許容される主たる理由をどのよ
>>うに考えておられるのでしょうか?
> 
> 
> 合法性ではなく正当性についての質問と解釈して私見を述べますが、端的

勿論それで結構で御座います。

> に言うならば、
>   内閣が最優先視している政策課題の立法化が頓挫した時点において、
>   その問題を最優先課題に設定している内閣の是非について、国民に政
>   治的意思表明の機会を与えたこと
> でしょうか。

なるほど。しかし、この考えはなんでもかんでも国民に戻してやれば正当化
出来るとする極めて安易な考えである、とは思われませんか?「代議制」に
はそうでない場合と比べて利点があるという価値判断があることをご存知で
すか?しかも、この考えは、衆議院の存在を軽視し、頭ごなしに、直接国民
と会話できるとする考えに似ていて基本的な日本国憲法の趣旨、内閣総理大
臣は国会議員の中から国会の議決で選ばれるに過ぎない存在、とする趣旨を
軽く見る立場ではないでしょうか。日本国憲法の代議制では、例えて言うな
らば、国民と直接会話できるのは衆議員参議員のみであります。此度の問題
では、衆議院は内閣を信頼していて、これは国民の趣旨であることが前回の
選挙で既に明確であったわけです。

ですから、かろうじて「正当化」できるのは、安井@東大氏の言われる「政
策課題の立法化(の)頓挫」を、憲法第59条2項に言う、衆議院で三分の二
以上の議席を獲得するのに不分明な事態が生じたこと、と読んだ場合であり
ます。即ち、憲法の趣旨を遂行できるようにするために行われるものであっ
て、その限りでしか今回の場合には解散の正当性を見つける事はできないの
です。それ以外は、内閣の衆議院からのあるまじき超然化に過ぎない。

また、その限りにせよ、客観的に「正当性」を見つけられる以上は、実際の
内閣の「真意」がどこにあったかなどとは無関係に許容されてよい。実際に
も、「真意」を問う事などは無意味ではないでしょうか。聞いたって本当の
ことを言うはずが無いからです。

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太宰 真@URAWA