ブッシユ大統領は3日、テキサス州での演説で、「日本はイラク民主化の手本だ」と述べた。第二次世界大戦では敵国であった日本が米国の指導のもとにいまや立派な民主国家となり、米国の同盟国として世界に貢献している、と述べ、イラク民主化の手本だというのである。
 日本の民主化に成功したのは事実だが、日本とイラクとでは事情は全く違うのである。その主要な違いは4点ある。
 第一は、日本には単一の民族国家であったが、イラクはクルドとアラブの二つの民族がいること。第二に、日本人は実質的に無宗教であるが、イラク人はイスラム信仰が厚く、しかもスンニ派とシ-ア派が鋭く対立していること。第三に日本には「天皇」という国民統合の焦点があったが、イラクにはそんなものはないこと。第四にイラクにはアメリカにとって垂涎の的である世界第二の石油資源があるから、それをアメリカに横取りされるというイラク国民の懸念があるが、無資源国日本の国民にはそんな懸念はなかったかったこと。
 この4点の違いこそ、日本とイラクの民主化の難易度の違いを示すものなのである。 

 戦争終結から3年も経つのに、いまだこんな違いにも気が付いていないとは、不勉強すぎる。
 日本占領にあたっては、占領担当者は、アメリカの文化人類学者ル−ス・ベネディクトが日本と日本人の特性を研究した不朽の名著「菊と刀」を勉強して、最適な占領政策を策定したと伝えられているが、日本民主化成功の裏にはそんな努力もあったのである。
 それに比して、ブッシュ政権の武力だけに頼るイラク政策はお粗末極まるし、それにはブシュ大統領のこんなお粗末認識が影響していることも確かなのであろう。
 村上新八