国連設立60周年を機にアナン国連事務局長が提唱した国連改革は混沌としてきた。
 国連の常任理事国入りを目指す日本、ドイツ、インド、ブラジルの4Gは、6月に枠組み決議を、9月までに新常任理事国の選挙と国連憲章の改訂を目指したが、米国から延期の要請があり、加えてライス国務長官からはドイツの常任理事国入りを拒否する旨をドイツに伝えたという。その理由はドイツがイラク戦争に反対したからだという。日本については、中国が「歴史認識問題」で反対を表明している。
 イタリア、韓国など、常任理事国の拡大に反対する「コンセンサス委員会」は反対運動を加速させているし、米国の態度もはっきりしない。米国は、地域バランスよりも貢献度を重視すること、新常任理事国には拒否権は与えないこと、常任理事国の拡大は最小限にすること、この三つを掲げているほかは、4G提案の決議提出の延期要請とドイツの常任理事国入り反対を表明しただけである。米国の腹のなかは常任理事国を今以上にややこしくしたくたいということだけなのであろう。
 さらに、米下院外交委員会では、国連改革がうまくゆかねば米国の国連分担金をの半分を凍結する法案を採択したという。この委員会の言う国連改革とは、議案によっては投票権を国連分担金で加重したものにするとか、国連活動全般を監査する機関を新設するとかで、アナン氏の国連改革提案の趣旨とは全く違ったものなのだ。
 国益、既得権擁護、主導権ねらい、羨望、国連不信、国連の無害化などなど百鬼夜行、魑魅魍魎の巣と化している国連の実態を反映して、国連改革の期待は展望ゼロになってきている。
 村上新八