Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
佐々木@横浜市在住です。
# 「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から着想を得て
# 書き連ねられているヨタ話を妄想と呼んでいます。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)<ckdgd5$206$2@zzr.yamada.gr.jp>、
(その2)<clfs1u$sq4$2@zzr.yamada.gr.jp>、
(その3)<cmkpa7$n9v$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その4)<cnpq23$uoi$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その5)<couhh3$6bl$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その6)<cq3l78$ci5$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その7)<crdmn4$ft7$3@zzr.yamada.gr.jp>、
(その8)<csvnro$s1b$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その9)<cu7vhd$j9o$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その10)<cvrqev$sj1$1@zzr.yamada.gr.jp>、
(その11)<d1lt0f$qn6$1@zzr.yamada.gr.jp>の続きです。
^L
★神風・愛の劇場 第173話『水妖』(その12)
●桃栗町町境近く
エリスが更衣室から戻ってみると、既にまろん達は皆食事は終えていてテーブルの
上もすっかり片付いていました。エリスはアン以外の二人の方へ軽く頭を下げます。
「失礼。待たせてしまいましたね」
「別に気にしないで」
「そうそう。それよりもうちょっと休んだ方がいいよね」
「は?何でです」
「いやだって。ほら食事の後だし」
「ああ成る程、まだ食べたばかりですしね。皆さんは」
まろんと都はエリスの言葉の最後の部分を理解するのに少しの時間が必要でした。
申し合わせた様な動きで互いの顔を見、それからまろんがぽつりとたずねます。
「ダイアナさんは、その、お腹とか苦しくないの?」
「お腹?ああ、パフェですか。もう溶けましたよ」
「ああそう…」
「…」
何が話題の趣旨なのかサッパリ判らないと言った顔のエリス。アンも含めた三人が
苦笑いする様を小首を傾げて見回していました。
*
そろそろ勝負を再開しようという話となり、何処に行ったのか姿が見えなくなって
いた男性陣をキョロキョロと探すまろんと都。特に探す風でもなくついていく
エリスとアン。歩きながらエリスにアンがそっと耳打ちします。
「ねぇ本当に大丈夫なの?」
「何がさ」
「だって、いくらなんでも食べ過ぎでしょ。動けるの?」
「さっきから言ってたのはその事か」
「うん。だってあんまり」
「あのさ」
エリスはアンよりも、もっと声を小さくして囁きます。
「別に馬鹿にする気は無いけど、アンはまだ私ほど誘導物質を沢山出せないよね」
「…でも、私だって慣れてくれば」
「そう。それで慣れてくれば判るんだけど、一度に広い範囲に展開するとさ、
消耗するっていうか体内の備蓄ががくんと減るんだよ」
「それじゃあれ、最近の大暴れの分の補給って事?」
「まぁそんな感じ」
「でもノイン様のお屋敷ではそんなには食べないのに」
ノインの家での普段の食事ですら、その容姿から想像されるよりは充分に食べる
量が多い二人。ですがそれは既に当然の事となっています。
「あの家で満足するまでバカ食いしたら話のネタにされるだけじゃん」
「それはまぁ・・・」
「まだ我慢出来ない程って訳じゃないんだけど、食える時になら食っとこうって
思ったんだよ。それにタダだったし」
エリスはちょろっと舌を出して見せます。
「一応、本業は侍女だからね。やっかいになってる家の家計は気にしてるのさ」
「へぇ〜、見直した」
「おいおい。もっと自分を信じて欲しいな」
アンもエリスと同じ様に少しだけ舌を見せてから微笑むのでした。
そしてそんな事をしている間に、まろん達はシドを見つけたらしく遠くから
大きな仕草で手招きしてきていました。小走りに駆け寄るとそこはテラス状に
迫り出した3階部分の下にある、微妙に場違いな印象を与える一画でした。
もっとも、ここが温泉という意味ではありがちな面もあるのですが。
「さて次のお題です」
色々な電子音が混ざり合う中を数人の子供が駆け回る騒々しい場所。所謂
ゲームコーナーの最前列に鎮座する巨大な透明の箱をまろんは指差します。
「何でUFOキャッチャーなのよ」
都の速攻の突っ込みにまろんは自信ありげな笑顔で応えます。
「公平でしょ?腕力関係無いし、外国には無さそうだし」
「無いの?」
都の問いにエリスとアンは首を横に振りました。
「知らないよね?」
まろんはもう一方の当事者代表であるシドに聞きました。相変わらずな毒の
無さそうな笑顔を見せながら彼は答えます。
「知ってる。日本人街でだったかなぁ、見たのは」
「え〜〜〜」
がっかりした声を上げるまろんにシドは慌てて付け加えます。
「でもやった事は無いよ。やりかたも知らない」
「じゃぁ公平なままだよね」
「いいかい?」
シドの言葉はエリスに向けられた物です。エリスは視線だけを彼に向け、
それからまろんに応えます。
「構いませんよ」
「決定。それでは私がお手本を見せます」
まろんはいそいそと100円玉を取り出し機械に投入します。そして三つある
ボタンの一つを押すと、ぴろぴろぴ〜と力の入らない音をさせながら中で金属製の
爪が付いた物がぶらぶらと揺れつつ移動していきます。その動きを猫の様にじっと
目で追うエリスとアン。やがて爪が透明な箱の端近くに行ったところで、えいっ
という声と共に残り二つのボタンをまろんが押すと爪が少し奥に移動してから
先端を開きつつ下にするすると降りて行きました。それから箱の中に三分の一程の
高さまで詰まっている謎の生物の布製模型の傍で爪は閉じ、そして最初の位置まで
戻ってからもう一度開閉して動きを止めました。
「…」「…」「…」「…」
「今のは失敗です。次が手本です」
まろんは棒読み解説台詞の様な言い回しで再挑戦を宣言しました。それから
繰り返される最初と同じ“手本”をエリス達の目がじっと追いかけます。
「…」
「あの…」
「結局、何をするモノなの?」
へらへら笑っているまろんの首根っこを都がむんずと掴んで後ろに下がらせます。
「退け、素人!」
都は硬貨を投げ込むと音楽がへろへろと奏でられ始めるよりも早く、操作盤の上を
バシバシバシッと叩いていました。爪は殆ど前進せずに下降を始め、ぽっかり
開いた大穴のすぐ脇にある謎の生物を掴むとそのまま持ち上げ微かに戻ったと
思った途端に離していました。こうして、ぼとんという鈍い音と共に謎の生物は
外界へと解き放たれたのです。取りだし口からヌイグルミを拾い上げると、
都はそれをまろん目がけてぽんと放り投げてよこしました。
「おぉ〜」
溜息にも似た感嘆の声が男性陣の間から上がり、エリスとアンはへぇ〜という
顔で都を見つめます。その表情にどこか尊敬の念を込めて。
「都、凄ぃっ!」
「穴の周りはね、あと一歩で取られ損ねた宝の山なのよ。よく見てやりな」
「へへ〜ぃ、恐れ入りました」
「じゃ、そういう事で。何でもいいからヌイグルミを獲得してね。その時に
使ったお金が少ない方が勝ちよ、いいわね」
何時の間にか審判を交代した都が戦士達にルールを説明します。操作盤を
覗き込みながらふんふんと頷いているエリスとアン、そしてシド。どうやら
今回は彼が相手になる様でした。そんなシドが都に質問を発します。
「何でコインの投入口が三つもあるのかな」
「それぞれ一回100円、三回200円、八回500円よ。何度も挑戦するなら
最初から投資した方が得なわけ」
「勝敗は少ない投資の方が勝ちなんだよね」
「そうよ。よく考えてね」
「なるほどね。で、どうしようか?」
シドの言葉の後半の相手は自分だとエリスはすぐに気付きます。
「どうって、何だよ」
「先にやる?それとも俺が先にやろうか」
「私が先にやる」
一瞬で答えたエリスですが、実際は先にやる事で更に詳しく手順を研究する余地を
相手に与えてしまうリスクと取り易そうなヌイグルミとやらを先に取ってしまえる
利点を秤にかけた結果です。
「ではどうぞ」
別にどちらでも構わないといった感じで軽く受けるシド。エリスは彼が本当に
どちらでも良いと考えたのか、それとも同じ様に有利不利さを勘案したのかと
少しだけ考え、そしてすぐに頭から消し去ります。それからアンの差し出した
100円玉を受け取ると早速初体験となる人間界のゲーム機械に挑むのでした。
全くの未経験という事もあり、エリスは素直に都のやって見せた通りの手順を
実行しました。ただし夫々のボタンに片手の指を一本ずつ乗せていて、それは
叩く様な押し方では無く触れているだけという印象でした。その状態でエリスは
まろんや都には押した事すら判らないくらいの一瞬の動きでボタンを押しています。
そしてその動きの速さ故、手本となる都の操作のタイミングとはズレてしまって
いました。早すぎた操作を少しずつ補正し、結局エリスは三回目にして都が取った
場所の隣にあったヌイグルミを手にしたのでした。
「初めてやったにしては上出来よ」
「どうも」
明らかに、結果に満足していない顔のエリスでしたが都の言葉に苦笑して見せる
くらいの余裕はありました。そしてヌイグルミをアンに渡すと、続くシドの挑戦を
じっと見守りました。途中何も言わなかったエリスとは違い、シドは「あれれ」
「あぅ」「よしっ!」等と声を発しつつゲーム自体を楽しんだ様子でした。
ヌイグルミを手にするまでの三回を存分に、心ゆくまで。そしてその時点で
都が宣言します。
「はい、勝負あり。アンタの勝ちよ」
「え?何で?」
と疑問を発したまろんの頭に都の空手チョップが炸裂します。
「何を見ておったのじゃ、ボケが」
「だって二人とも三回で」
「使った金額が少ない方って言ったでしょ」
「へ?」
「奴は200円しか使ってませんよ、まろんさん」
エリスが面白くなさそうに、しかし事実を淡々とまろんに教えます。
「最初から200円使って三回で取った奴の勝ち。私は300円使いましたから」
「あ〜、そういう事ね」
「どうせ一回じゃ取れないと思ったからなんだけど、偶然が味方してくれたかな」
笑顔で語る勝者の弁を、探るような目で見つめるエリスでした。
(第173話・つづく)
# 中々主題に辿り着かない。何故だ。(ぉぃ ^^;)
では、また。
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■■■■■■ 佐々木 英朗 ■■■■■■■
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