Role of Internet
4月の初めから断続的に続いた Life on the Road が終わり,よ
うやく家に戻って,ひさしぶりに Internet を覗いてみたら,朝
日新聞の Web で2月から連載されていた四元康裕さんの「現代詩
劇場:声の曲馬団」が4月末で最終回になっていた.
http://www.asahi.com/culture/circus/
これはドイツ在住の四元さんがらの作品を週1回のペースで掲載
するというかたちの Weekly Poem Magazine だった.四元さんの
詩は,ひとことでいえば現代社会の状況を斜めの角度からとらえ
た一種の Message Poem で,わたし自身の好みとは若干食い違っ
ているのだが,読者から寄せられた感想に作者が答える「観客席」
というコラムが用意されていて,そこでのやりとりが,いまの時
代における「詩」というメディアの役割や限界を考える上で,な
かなか興味深く読ませてもらっていた.
連載開始にあたっての作者のことば:
オランダには、地下にも運河が走っていて、広場の一角にその
水門を操るためのハンドルがある。夏の夜には、門を開き、水
を流さないと、街中にいやな臭いが立ちこめる……
最近その話を聞いて、私は思いました。私達の暮らしに言葉は
溢れかえっているけれど、ひとりひとりの胸の奥底には、行き
場を失った感情が澱んでいて、ときおり思わぬ所から噴出する。
そのことが、政治や経済の問題にも、深く係わっているのだろ
うと。
私は、自分のなかの広場から、手探りで、地下の水門を開いて
みたいと思います。暗渠に閉ざされた、さまざまな声を聴きた
い。私の運河は、日本語という海を介して、他者のそれと繋が
っているので、あなたにも、その声が届くかもしれません。
で述べられていた意図はある程度達成されたかのように感じられ
る.あくまでも「ある程度」でしかないが,....
ひるがえって,この News Group を初めとして Internet 上に存
在するいくつもの掲示板や Web Magazine あるいは Web Page を
眺めてみると,そこには四元さんがいう「行き場を失った感情」
の噴出としかいえないような「詩のような」ものが毎日のように
数多くポストされ続けている.
先週ウィーンで開かれた Human Computer Interaction について
の国際会議の休憩時間に,北欧からきた何人かのの研究者たちと
Activity Theory の核心をなしている「人間のコミュニケーショ
ンや思想形成を Mediate(調停)するツール」としての言語その
他の人工的メカニズムのあり方について議論したのだが,Internet
上にいま存在する News Group や Bulletin Board などのメカニ
ズムに,単なる感情の噴出の場ではなく,われわれの詩的創造力
を刺激し高めるための機能をどうやったら持たせることができる
のかは,機械(ネットワーク)と人間との相互作用の将来を考え
る上で,ひとつの重要なテーマであると感じられた.
Activity Theory のアメリカにおける推進者の1人 Bonnie Nardi
女史は,シリコンバレーで働く人たちの行動に関する文化人類学
的な分析を通じて,Internet その他のコミュニケーション手段を
利用した個人的ネットワークの構築と活用の重要性を指摘してい
るが,詩作そのほかの芸術活動においても,そうした Intentional
Network が果たすべき役割もあるのだと思われる.そのさい,ど
のようなメカニズムが Internet 上に用意されるのが望ましいのだ
ろうか.
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Kiss cedar, Call witch!
Now back in Tokyo
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