Re: 『お馬鹿さんを解剖す』第三部 Re: 構成要件という言葉の疑問
かなり正確にぼくの見解を理解していただき感謝致します。表現がまずい部分が
有ることは百も承知していたのですが、それでも言わんとすることが理解されて
いてホッとしております。結論としましては、「鳴り物入り」氏に対する評価は
あなたの仰る通りだと思います。ただ、その他の彼の見解を総合すると、あなた
のようにはっきりと受け取るべきかは疑問であったことも有り、その点には厳密
に立ち入ることはしませんでした。あなたの事実の捉え方が正しいのだとすれ
ば、ぼくも、あなたと同じ評価をすることになったでしょう。
さて、一つおお聞きしたいのですが、あなたの言う「一般構成要件」とぼくが捉
えている「一般構成要件」とは、果たして同じかどうかです。ぼくは、こう考え
ます。たとえば、民法第96条にはこう書いてあります。
(第96条)詐欺又は脅迫による意思表示はこれを取り消すことを得。
この場合、「取り消す」ことができるという効果与えられるためには、相手に対
する「詐欺」行為あるいは「脅迫」行為が前提として相手から為されなければな
りません。また、取り消そうとした者が「意思表示」と言えるものを実際したこ
とが必要です。ですから、単なる事実行為等は、取り消そうとする者がいくら止
めてほしかったとしても、そのようなものを「取り消す」ことはできません。ま
た、この意思表示は相手が詐欺や脅迫行為をなしたことから生じたものでなけれ
ばなりません。取り消そうとする者が既に何らかの事情で欺罔状態に有ったり畏
怖状態に有ってそれが原因で意思表示をしたのであれば「取り消す」ことはでき
ません。
このように、「取り消す」ことができるためには、単純化して言いますと、
詐欺又は脅迫
意思表示
詐欺又は脅迫と意思表示との因果関係
と言うようなことが無ければなりません。これらはいくつかの項目(要素)が集
まった要件をなしています。このようなことはどの法分野にも有ります。これを
「一般構成要件」とぼくが言っているのです。
ただ、注意しなければならないのは文言上にあがっていない要件要素が有るとい
う点です。この詐欺脅迫の場合、意思表示をしてしまった者がもし、自己が負担
すべき義務の意味内容を理解し得ない者であった場合には「取り消す」ことはで
きません。つまり、この場合「取り消す」ことができるためには「意思能力者」
でなければならないのです。もし、意思無能力者であれば「取り消し」を待つま
でもなく「無効」だからです。そうしますと、この「意思能力が有る」ことも
「取り消す」ことができるための要件でなければなりません。
そうしますと、民法第96条の(一般)構成要件は、
詐欺又は脅迫
意思表示
詐欺又は脅迫と意思表示との因果関係
意思能力者
と言うことになろうかと思います。(厳密さは目をつぶってください)そして、
これら四つの要素はは等しく同一平面上のこととして捉えられ、しかも確定順番
が有るわけでもありません。
ではそれと刑法に於ける「犯罪構成要件」とはどこが違うか。この事例を仮に犯
罪だとして考えると、
刑法的な種々の原理や基礎理論をもとに
詐欺又は脅迫
意思表示
詐欺又は脅迫と意思表示との因果関係
この三つを構成要件として絞るだろうと思われます。残りの意思能力の要件は犯
罪構成要件から外すでしょう。それは他の犯罪成立要件である「責任能力」の中
の要素とするでしょう。従って判断の順番は後回しと言うことにもなります。
犯罪構成要件には何と何を盛るか、あるいは何と何を外すか、という詳しいこと
はここでは申し上げれませんが、このように刑法の趣旨や目的あるいは基礎理論
から要素を限定して最終的な犯罪構成要件が「型」あるいは「枠」として形作ら
れるわけです。これを、ぼくは刑法上の「構成要件」あるいは「犯罪構成要件」
と考えております。
以上です。
--
みんなのケンちゃん
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
GnuPG Key ID = ECC8A735
GnuPG Key fingerprint = 9BE6 B9E9 55A5 A499 CD51 946E 9BDC 7870 ECC8 A735