Activity Theory
昨年末に参加したソフトウェア開発に関するあるワークショップで Activity
Theory (文化・歴史的活動理論)のことを教えられました.
それは,心理学の世界でのモーツアルトと称されるソビエトの学者レフ・ヴィ
ゴツキが1920年代に提唱した考え方なのですが,それまでの西欧流心理学が個
人の心の内側にだけ焦点を当てていたのに対して,外側からの社会的視点を導
入して,教育心理学特に発達心理学の分野に新しい展望を開きました.
第2次大戦後,ヨーロッパやアメリカでもこの「活動理論」に対する関心が高
まり,フィンランドの認知科学者ユーリア・エンゲストロームなどが中心にな
って,教育学にとどまらず,社会学・経営学・文化人類学・芸術論その他,複
数の人間によって営まれる協調的活動の分析や理解のための方法論として整備
されてきたようです.
詳しくは,邦訳されているエンゲストロームの主著「拡張による学習」(新曜
社)をお読みください.
エンゲストロームが提示した分析手法としての三角形図式を「詩」の世界にあ
てはめると,行動主体としての詩人,その活動対象としての詩,読者・批評家
そして他の詩人たちから構成されるコミュニティ,そしてそれらの間の相互関
係を調停(mediate) する社会的メカニズム(ツール)ということになります.
いまインターネット上に氾濫している作品群(いわゆるネット詩)の中にわれ
われの心を打つすぐれた詩がほとんど存在しないという事実は,そこに用意さ
れている掲示板や WebLog あるいはニュースグループといったメカニズムに,
詩人たちの活動を「調停する」機能がどこか欠けているからではないでしょう
か.
それはさておき,ヴィゴツキが遺した大著「芸術心理学」の一部の章だけを訳
した「寓話・小説・ドラマ‐その心理学」(国文社)は,なかなかおもしろい
本です.とくにその冒頭の寓話に関する分析,散文的(哲学的)寓話と詩的寓
話とのカテゴリ分け,そして後者における比喩の重要性についての分析は,詩
を読み書きする者にとって一読に値すると思います.
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