Path: ccsf.homeunix.org!ccsf.homeunix.org!news1.wakwak.com!nf1.xephion.ne.jp!onion.ish.org!news.daionet.gr.jp!news.yamada.gr.jp!newsfeed.media.kyoto-u.ac.jp!newsfeed.mesh.ad.jp!jpix!newsfeed1.dti.ad.jp!giga-nspixp2!np0.iij.ad.jp!news.iij.ad.jp!news.sra.co.jp!news2.sra.co.jp!k2 From: k2@sra.co.jp (Kouichi Kishida) Newsgroups: fj.rec.poems,japan.poem Subject: A Poem in Mournful Mood Date: 13 Dec 2003 17:13:54 GMT Organization: Software Research Associates, Inc., Japan Lines: 73 Message-ID: NNTP-Posting-Host: srasva.sra.co.jp X-Trace: sranhh.sra.co.jp 1071335634 49403 133.137.160.64 (13 Dec 2003 17:13:54 GMT) X-Complaints-To: news@sra.co.jp NNTP-Posting-Date: 13 Dec 2003 17:13:54 GMT Cc: k2@sra.co.jp X-Newsreader: mnews [version 1.22PL2-T2(IMAP4-patched)] 2000-03/20(Mon) Xref: ccsf.homeunix.org fj.rec.poems:48 japan.poem:12 ---------- 物語の午後 ---------- みどりいろの ビイドロの酒盃が 記憶の螺旋階段をゆっくり ころがりおちてきて 壁ぎわの魔術テーブルのうえに 揺れながら立ちどまる なぜか こぼれもしなかった なかの葡萄酒が ゆっくりと泡だち 赤紫の細い糸になって 天井のほうへのぼってゆく 時刻は おそらく 薄曇りの午後 不吉な電話の声は しかし いつまでもしゃべりだそうとしない いつのまにか 溶けだしたグラスが なめくじのかたちに変わりながら 壁の穴に なんとかもぐりこもうと もがいている ようやく 天井にとどいた糸には 羽化しかけた夢の蝶がぶらさがり ぜんまい仕掛けの唇をふるわせながら 昨日の続きの 物語をはなしはじめる ---------------------- Kiss cedar, Call witch!  Postscript:  昨夜遅く Web News のページを開いたら,都筑道夫さんの死  が報じられていた.さまざまなジャンルにまたがる都筑さんの小説には多彩  な詩 (ポエジー) があり,わたしも,それに刺激されていくつかの詩作を試  みたことがあった.EQMM連載の書評「読ホリデイ」に,このところ若干気力  の衰えが感じられていたので,いくらか予感してはいたものの,突然の訃報  はやはりショックだった.  11月27日,ここしばらくお嬢さん一家とくらしていたホノルルの病院で  亡くなられたと,訃報にはあった.  27日の午後,わたしは長崎の造船所で,深海地下探査船「ちきゅう号」の  建造現場を見学し,その夜はソフトウェア保守技術についての討論を目的と  したワークショップのメンバーとの懇親会に出ていた.  時差を計算に入れるとハワイの27日はこちらの28日になるが,その日わ  たしは別の会合のために長崎・東京間を飛行機で往復した.その機内で読ん  でいたのが,光文社文庫でシリーズものとして復刻された都筑さんの作品集  のうちの1冊「猫の舌に釘を打て」だったことは,偶然とはいえ不思議な感  じがする.  その夜,思案橋横丁のクラシック・バー(ソシアルビルの4階に入り口があ  り,狭い階段を降りると3階がバーになっているという不思議な造り)で,  都筑さんの小説にでてきてもおかしくない雰囲気の女性バーテンダーに作っ  てもらったウォッカ・マーティニの味を,いま舌で思い出そうとしているの  だが,....