A Poem in Mournful Mood
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物語の午後
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みどりいろの
ビイドロの酒盃が
記憶の螺旋階段をゆっくり
ころがりおちてきて
壁ぎわの魔術テーブルのうえに
揺れながら立ちどまる
なぜか
こぼれもしなかった
なかの葡萄酒が
ゆっくりと泡だち
赤紫の細い糸になって
天井のほうへのぼってゆく
時刻は
おそらく
薄曇りの午後
不吉な電話の声は
しかし
いつまでもしゃべりだそうとしない
いつのまにか
溶けだしたグラスが
なめくじのかたちに変わりながら
壁の穴に
なんとかもぐりこもうと
もがいている
ようやく
天井にとどいた糸には
羽化しかけた夢の蝶がぶらさがり
ぜんまい仕掛けの唇をふるわせながら
昨日の続きの
物語をはなしはじめる
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Kiss cedar, Call witch!
Postscript: 昨夜遅く Web News のページを開いたら,都筑道夫さんの死
が報じられていた.さまざまなジャンルにまたがる都筑さんの小説には多彩
な詩 (ポエジー) があり,わたしも,それに刺激されていくつかの詩作を試
みたことがあった.EQMM連載の書評「読ホリデイ」に,このところ若干気力
の衰えが感じられていたので,いくらか予感してはいたものの,突然の訃報
はやはりショックだった.
11月27日,ここしばらくお嬢さん一家とくらしていたホノルルの病院で
亡くなられたと,訃報にはあった.
27日の午後,わたしは長崎の造船所で,深海地下探査船「ちきゅう号」の
建造現場を見学し,その夜はソフトウェア保守技術についての討論を目的と
したワークショップのメンバーとの懇親会に出ていた.
時差を計算に入れるとハワイの27日はこちらの28日になるが,その日わ
たしは別の会合のために長崎・東京間を飛行機で往復した.その機内で読ん
でいたのが,光文社文庫でシリーズものとして復刻された都筑さんの作品集
のうちの1冊「猫の舌に釘を打て」だったことは,偶然とはいえ不思議な感
じがする.
その夜,思案橋横丁のクラシック・バー(ソシアルビルの4階に入り口があ
り,狭い階段を降りると3階がバーになっているという不思議な造り)で,
都筑さんの小説にでてきてもおかしくない雰囲気の女性バーテンダーに作っ
てもらったウォッカ・マーティニの味を,いま舌で思い出そうとしているの
だが,....
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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