2006.03.14 Erkel Theatre (Budapest)
Imre Kerenyi (Dir), Kalman Szennai (Cond),
Andras Molnar (Bank Ban), Zsuzsanna Bazsinka (Melinda),
Janos Toth (Tiborc), Sandor Egri (Petur Ban),
Istvan Bercelly (Endre II), Bernadett Wiedemann (Gertrudis),
Tamas Albert (Otto), Levente Molnar (Biberach),
Veronika Botos (Viola d'amore solo)
1. Erkel: Bank Ban

実話を元にしたハンガリーオペラの代表作です。作曲のエルケル・
フェレンツはハンガリー国歌の作曲者でもあります。時代設定は
13世紀ですが,1848年の革命自由戦争直後に台本が書かれたため
外国人支配に対抗する国威発揚的色合いが濃いです。共産主義時代
にも好んで上演されたとか。国威発揚とは言っても結局救われない
悲劇になっているのはどこか屈折したハンガリー人らしいですが。

このオペラの公演ではいつもハンガリー人観衆が盛り上がり,有名な
アリアでは劇の途中でも何度もアンコールが起きると聞いていたので,
特に3.15革命記念日の前夜なだけにそりゃあたいへんなことになるかも
と戦々恐々だったのですが,意外と反応は冷めていました。バーンクの
「祖国を愛する歌」だけはしつこく拍手が起こっていましたが,これも
結局アンコールはやらず流していました。この日はメリンダとペトゥル
が少し弱かった他は歌手が非常に良かったです。堂々と威厳あふれた
バーンク,歌唱力で泣かせたティボルツ,圧倒的声量のゲルトルード。
憎たらしいオットーや姑息なビベラヒも非常に達者な演技で参りました。

このオペラ,ハンガリー以外で上演されることはまずないでしょうが,
曲調は全く前期ロマン派の範疇で耳に馴染みやすく,曲も舞台も極めて
ドラマチックなオペラらしいオペラです。「男のオペラ」とも言える
でしょう。ビオラ・ダ・モーレやツィンバロンといった近代オペラでは
風変わりな楽器も活躍して聴かせどころ満載なので,旅行者の人にも
一見の価値ありとオススメしたいです。

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はっしー@ぶだぺしゅと

演奏会備忘録 <http://www.ne.jp/asahi/hot/space/concert/>