ハッピーエアライン



俺の名は近衛文麿、飛行機マニアである。
今日、平成18年1月1日は新規参入航空会社ハッピーエアラインの就航日である。
俺はこの日のために三日前から並んだ。
勿論、搭乗券第一号を手に入れるためである。
不思議なことに並んだのは俺だけだったが、ま、いいか。
機内にはちゃんとそこそこの乗客が乗っていることだし。
しかし、離陸を待っている間に俺は他の乗客達の様子が違うような気がし始めた。
聞き耳を立てていると、やはりそうだ。
彼らはみなハッピーエアラインの会長・社長・社員達だ。
エンジン始動!
誰かが叫んだ。
「社長! エンジンが一発でかかりました!」
社長とおぼしき人物。
「え? ほんとか。また間違いじゃないのか。」
誰かが言った。
「社長、本当です。ほら、まともに動いています。」
社長とおぼしき人物。
「あ、ほんとだ。
 やはり機械も本番の緊張のなかでは普段出ない力が出るんだ。」
技術者らしき人物。
「一分二十秒・・・一分三十秒・・・一分四十秒。
 か、会長! プロペラが一分四十秒回り続けています!
 昨日までの記録一分三十七秒を破りました!」
会長とおぼしき人物
「ええええっ。 うっそ〜〜〜っ、信じらんな〜〜〜い。」
全員。
「ばんざあい、ばんざあい、ばんざあい。」