Path: ccsf.homeunix.org!CALA-MUZIK!mmcatv.co.jp!agnes-news.agnes.aoyama.ac.jp!news.assist.media.nagoya-u.ac.jp!news.nagoya-u.ac.jp!nfeed.gw.nagoya-u.ac.jp!news-sv.sinet!ns04b.ous.ac.jp!nd-os001.ocn.ad.jp!dojima-n0.hi-ho.ne.jp!not-for-mail From: Miyakoshi Kazufumi Newsgroups: fj.rec.animation Subject: Emma #10 Date: Sat, 11 Jun 2005 21:53:44 +0900 Organization: hi-ho Internet. Lines: 243 Message-ID: <42AADED8.A06826F3@tim.hi-ho.ne.jp> NNTP-Posting-Host: west16-p14.eaccess.hi-ho.ne.jp Mime-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=iso-2022-jp Content-Transfer-Encoding: 7bit X-Trace: dojima-n0.hi-ho.ne.jp 1118494426 4629 202.224.186.15 (11 Jun 2005 12:53:46 GMT) X-Complaints-To: dojima-n0.hi-ho.ne.jp NNTP-Posting-Date: Sat, 11 Jun 2005 12:53:46 +0000 (UTC) X-Mailer: Mozilla 4.78 [ja] (Win98; U) X-Accept-Language: ja Xref: ccsf.homeunix.org fj.rec.animation:4108 ども、みやこしです。 第五章に引き続き、第十章演出の金澤洪充氏のブログで、第十章の「書けるだ け書ける裏話」が掲載されています。 ↓ http://millions.xrea.jp/kimcgi/brog/index.php どういう事を考えながら作っているのかが窺えて面白いのですが、「エマ」の ような作画上の細かいルールが多い作品は、「割に合わない」という理由で断 る方も多い、などという話を読むと、やはり現場は大変なままなんだなぁ、と こんな記事を思い出したりしてしまうのです。 ↓ 「萌えアニメ、増えても暮らし楽にならず、じっと手を見る」 http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0505/23/news062.html 「英國戀物語エマ」第十章「すれ違い」 ■インド人は千里眼か  またもや、ジョーンズ邸の玄関の庇の上で寛いでいるハキム。わざわざ梯子 をかけて上ってきたヴィヴィーが、テニスの相手をねだるのにはつれない態度 のクセに、遥か彼方の門にやってきたエマを目ざとく見つけ、スティーブンス に「ウィリアムの客」として部屋に通しておくように言いつけます。忠実な執 事スティーブンス、門番が難色を示すのを抑えて、エマを客間に通します。  ハキムが「昼寝」をしているのは、第六章でも出てきた、玄関の庇の上です。 ヴィヴィーに「屋根の上で?」と聞かれて、「家の中は狭い」とか言ってます が、象を馬の代わりに使っているような人からすれば、このジョーンズ邸でも まだ狭いのでしょう(^_^; ちなみに、原作では庇ではなく、本当に屋根の上で「昼寝」をしてます。ヴィ ヴィーが、窓から出入りすれば良さそうな所を、わざわざ梯子をかけて上って くるのも、原作の場面を意識しての事でしょう。ヴィヴィーが窓を通らなかっ たのは、一応、メイドさん達が掃除をしていて塞がっていたから、という事に なっているようですが、やや無理矢理っぽいかも(^_^;  スティーブンスが、エマを客間に通すのは原作通り。ただし、原作では、エ マが門の前で裏口に回ろうと躊躇している所に、スティーブンスがいきなりや って来るのですが、ハキムがスティーブンスに言いつけて出迎えに行かせると いう、より自然な流れになるように段取りが追加されてます。 また、門番がエマを見て胡散臭そうに詰問したり、すれ違うメイドさん達がエ マを「何この女」みたいな目で見てたりと、エマが場違いな所に来てしまった 感じがより強調されているように思えます。父リチャードがエマを目撃するの もオリジナルです。 それと、今回も、エマは帽子に黒い帯を付けて、喪に服していることを表わし ています。  客間に通されたエマを、グレイス以下妹弟達が「品定め」しているのも原作 通り。以前の立ち聞きの時といい、こーゆー場面では行動が皆そっくりなのが 可笑しい。今回は、コリンも出遅れていません(^_^;  ちなみに、エマに対する印象は、 グ「美人ね」 ア「メイドにしてはね」 ヴ「全然地味じゃない。眼鏡なんかかけちゃって」 コ「…」  とりあえず、ヴィヴィーには、眼鏡っ娘属性は無さそうです(^_^;  で、その頃の坊っちゃまはというと、例のごとく、サラさんの店でエマを待 っているのでした。そこで骨董屋のオヤジとサラさんから、先生が亡くなった 事を聞くと、店を飛び出し、馬車を捕まえて先生の家へ向かいます。  この場面はオリジナル。原作では、エマとは外で待ち合わせをしていたのに 坊っちゃまが遅刻し、ジョーンズ家に向かったエマと行き違いになってしまい ます。その待ち合わせの約束をした時に、坊っちゃまは先生の死を知らされて いたようなのですが、アニメでは、坊っちゃまはまだ知らなかったようです。 今回のエマの訪問は、それを知らせる為もあったようです。  あと、骨董屋のオヤジが「知っていれば、私らも葬儀に顔を出した」と言っ ている所からして、先生の葬儀は、本当に誰にも知らされていなかったようで すね。エマと、臨終に居合わせたアル、そのカード仲間の二人と、特に知らせ なくても知る立場にあった人だけが参列していた、と。 ■別れの挨拶  一方、客間で待ち続けているエマ、それを覗いている妹弟達、という図に動 きがあったのは、ハキムがやって来たから。「昼寝」をしていた時のインド風 の服装から、英国紳士風のスーツにしっかり着替えてきています。それを見た ヴィヴィーが、唖然とした、といった感じで「着替えてる…」と言うのが何か 可笑しい(^_^;  「何となく」その場を逃げ出してしまった妹弟達ですが、ふと気付くとコリ ンがいません。案の定、逃げおくれてしまったコリン、ハキムに押されるよう にして客間に入ってしまったものの、エマとハキムに見つめられて逃げ出して しまいます。それでも、ちゃんとドアを閉めていく辺りは、小さいながらも紳 士としての躾はしっかりしているようで。  残ったエマとハキム。生まれた村に帰る、と、坊っちゃまに別れの挨拶をし に来たと言うエマ。戻るつもりは無い、というエマの言葉に、疑問を呈するハ キム。 「変だな。エマはウィリアムが好きで、ウィリアムもエマが好きなのだろう?  何故ひとりで遠い所へ行く?」  この辺りのやり取りは、ほぼ原作通り。ただ、ハキムの疑問に対して、原作 では、エマははっきり「あきらめる」と言ってます。何も答えない…というか、 答える事ができないアニメ版のエマの様子は、この時点では、まだ彼女に迷い があるように感じられます。 ■怒れるヴィヴィー  また一方、「逃げ出した」方の妹弟達。逃げおくれてしまって泣いているコ リン、「忘れてたわけじゃないのよー」と宥めるグレイス、「忘れてたんだよ な」とさらにコリンを泣かせるアーサー。  そんな中、一人怒っている風のヴィヴィー。どうも坊っちゃまの事ばかりで はなく、ハキムが「着替えて」いた事に対しても怒っているっぽい(^_^; アーサーが、エマの事を「玉の輿でも狙ってるのかな」と言ったのにつられて か、「そうと知って兄さまをたらしこんだのよ」と、上流階級のお嬢様にして はいささか相応しくない言葉を吐くヴィヴィー。怒りが抑えきれず、「ちょっ と言ってやるわ!」と、グレイスが止める間もなく飛び出して行ってしまいま す。  すれ違うメイドさんを驚かし、階段の手すりを一気に滑り降りて、客間に飛 び込んだヴィヴィー。 「あなたねぇ、何のつもりだか知らないけど、さっさと諦めて帰ったら!?ウィ  ル兄さまもウィル兄さまだけど、あなたも常識無さ過ぎよ!!使用人は使用人、  主人は主人、それくらいの事何で判らなぃ…」  と、ヴィヴィーの啖呵もここまで。グレイスが口を塞いで連れ出し、アーサ ーがきっちりドアを閉めていく、この姉弟の連携が何か可笑しい(^_^;  この客間に怒鳴り込むヴィヴィーの場面は原作通り。手すりを滑り降りる辺 りとか、やはり動きがあると面白いです。普段アクションが少ない作品だけに、 たまにこういう場面があると引き立ちます。  この後、姉と兄に「連行され」てぶーたれるヴィヴィーの場面はオリジナル。 「だいたい、皆自覚が足りないんだよ」などと偉そうに言っているアーサーで すが、一緒になって客間を覗いていたお前がゆーな、という気も(^_^;  で、その頃の坊っちゃまはというと、先生の家に行ったものの、誰もいない 様子にがっくりしてます。へたり込んでる場合じゃありませんぞ。  またまた一方、キャンベル家では。前回の事が尾を引いているのか、元気が なく食事も喉を通らない様子のエレノア嬢。 ここで、エレノア嬢の父・キャンベル子爵登場です。原作では、単行本第5巻 でようやく登場する方ですが、随分早くのご登場となりました。キャンベル夫 人が、ジョーンズ家との縁談を進めていいか、と聞くのに答えず、給仕が食器 を片付ける音にも注意するなど、僅かな場面ですが何となく「嫌な親父」とい った雰囲気が漂ってます。 ちなみに、声は堀勝之祐さん。個人的には、「良い声過ぎる」という気が(^_^;  それにしても、エレノア嬢の「恋の病」はかなり重症のようです。ベッドに 横たわってため息をつく、その憂いた表情が何とも不憫です。 ■すれ違い  ヴィヴィーが連れ去られた後の客間。エマは、帰る事を決心してしまったよ うです。 「同じ英国だろう」と言うハキムに、「違います」とはっきり言い切るエマ。 ここに来てはっきり判った、住んでいる世界が全然違う、と。その上、「今日 会わなくて良かった」とさえ言います。 「全然良くないぞ。私は、相手がウィリアムだというから退いたのだ。勝手に  帰るな。ひとりで決めるな」 「もう、決めたんです」  この辺りのやり取りは、原作とはかなりニュアンスが異なります。原作では、 ハキムはもっと言い方が激しく、それに押される感じで、エマも引き止められ そうになるのですが、アニメの方が、エマの決心がきっぱりしてます。ヴィヴ ィーのような小さな女の子にさえもああまで言われて、それでも何とかなる、 とは確かに思えないでしょうなぁ。  そして、ジョーンズ邸を出ようとしたエマですが、玄関を出た所で、戻って きた坊っちゃまと鉢合わせ。駆け寄った坊っちゃまは、エマを抱き締め、何も 知らなかった事を詫びます。劇的な場面に、妹弟達も、メイドさん達も驚いて 見守るばかり。 #原作だと、ここで奥様が「ファンタスティック!」と叫ぶ所ですが、残念な #がらジョーンズ家には奥様がいません(^_^;  しかし、そこに出てきた父リチャードは、エマを庇うように立つ坊っちゃま を、妹弟達や使用人達の面前で張り倒します。 #驚きながらもコリンに目隠しするアーサーが変。遅いって(^_^; 「恥を知れ」と言う父に、「恥じる事など一つもありませんよ。父さんこそ、 こんな事をして恥ずかしくないんですか」と言い返す坊っちゃま。 #いや、人前で女性を抱き締めるのは、充分恥ずかしい事です。別の意味で。  その坊っちゃまを無視して、父リチャードは、エマに向かって言います。 「今日のところはお引き取り願えませんか。いずれ、何がしかの埋め合わせは  します」  …これはまた。何ですか、お金で解決しようって事ですか、お父様?「手切 れ金をやるから、二度と来るな」って事ですか?もう、完全に対等の人間とし てさえ見ていないようなお言葉ですな。 #父にここまで言わせるとは、脚本家容赦無い(^_^;  その父の言葉を聞いて、駆け出してしまうエマ。「失礼します」と言う、そ の言葉の震えが何とも言えません。 #さすが冬馬さん、お見事です。  制止する父を振り切り、エマを追いかける坊っちゃまですが、呼びかけても 振り返りもせず走り去るエマを、ついに見送ってしまうのでした。  …だーかーらー、何でそこで追いかけるのを止めるんですか、坊っちゃまは。 確かに、エマは振り返ってもくれないし、この時点ではまだエマが故郷に帰る 事を知らなかったので、日を改めて落ち着いてから会う方がいい、とか考えた のかも知れませんが、それでも、ねぇ…。この場は、何がなんでもエマを捕ま えなきゃならん所でしょうに。こんなヘタレ坊っちゃまの為に、女性が二人も 泣かされてるかと思うと…。 #それにしても、息一つ切らせず走るエマに対して、始めから息が荒い坊っち #ゃま、という対比も可笑しい(^_^; 日頃の運動量の差が如実に表れてます。  その夜。坊っちゃまが沈んでいるのは当然として、父もかなり浮かない顔で す。その父にお酒を勧める執事スティーブンス。この人も、グレイス同様、気 苦労が多そうです。 ここで、思わせぶりにまた例の女性の肖像画が浮かび上がりますが、父の浮か ない顔の原因、という事でしょうか。ちょっと意図が判りづらいカットです。 灯を持って階段を降りている女性も、顔が見えないので何やら意味深な感じを 受けます。これは、髪から見てグレイスだと思うのですが、顔を見せないとい うのに何か意味があるのか…。 #肖像画の女性本人なのでは、といった推測もネット上で見かけましたが、そ #れだと原作とは全然違う展開にせざるを得ませんし、何より、公式サイトの #人物紹介の説明とも食い違ってしまいます。 #ちなみに、長らく更新されてなかった公式サイトの人物紹介に、キャラが追 #加されてます。でも、コリンの紹介で「少し顔見知りする所があり」って、 #そりゃ「人見知り」でんがな、とツッコミたい(^_^;  そして、ジョーンズ家から逃げ出したエマは、エウーゴに身を投じ…じゃな くて(^_^;)アルの所へ。  この先一体どうなるのか、原作を知っていても予測がつかない展開に驚愕し つつ、続きは次回。 ■次回予告  第十一章「過去」。  ついに明かされる(?)エマの過去。幼いエマに迫る魔の手、必死に逃げる幼い エマ、と、時節柄ヤバいネタかな〜と思っていましたが、ちゃんとやってくれ るようで。 ■全体をみて  今回は、原作単行本第2巻の第十二話をベースにしてはいますが、展開はか なりオリジナルに近いです。何より、原作では本当にすれ違いっ放しのエマと 坊っちゃまが出会ってしまうというのは、大きな改変です。 #前回の記事で「父リチャードとエマとの直接対決か!?」とか書いてしまいま #したが、まさか本当に直接対峙する事になるとは。  この改変によって、物理的な「すれ違い」であった原作の話が、エマと坊っ ちゃまとの心理的な「すれ違い」の話に置き換わってしまったように思います。 相変わらず情熱だけで突っ走っているような坊っちゃまに対し、「現実」をし っかり見つめて(というか見せつけられて)しまったエマ、という。原作を読 んで、「もしこの時、エマと坊っちゃまがすれ違いっ放しではなく、出会えて いたら」というのを想像してしまう事がありますが、それを実際にやられてし まった訳で、「そー来たか!」と唸ってしまいました(^_^;  ただ、出会ってしまった事で、物事が良い方に進むどころか、かえって事態 は悪化してしまいました。この辺、最悪の予想の更に斜め上をいくかのような 展開には、驚かされるばかりです。  しかし、今回の話だけ見ると、いい加減頼りにならない坊っちゃまに見切り をつけたエマが、貧しくても頼りがいのありそうなおじさまに走った、と見え なくもないなぁ、などと思ってしまいました(^_^; さて、どうなりますことやら。 では。 -- 宮越 和史@大阪在住(アドレスから_NOSPAMは抜いてください) BGM : ループ by 坂本真綾