ども、みやこしです。

今回の記事の参考にしようと思って、Googleで「ミューディーズ」を検索した
のですが、何故か出てくるのは「エマ」関連のサイトばかりとゆーのはどうな
んでしょうか(^_^;
(「ミューディ」で検索したらその他のも引っ掛かるようになりましたが…
 ちなみに綴りは“Mudie's”)

「英國戀物語エマ」第四章「ミューディーズ」

■車は外を走りましょう
 今日もたくさんのメイドさん達が、仕事と噂話に精を出すジョーンズ家。そ
の廊下を、エンジン音を立てて通り過ぎたのは、その噂の主であるハキムと、
ハキム・ガールズを乗せた自動車です。どうやってか、坊っちゃまの部屋に乗
り付けた自動車から爽やかに挨拶するハキムに、呆れかえる坊っちゃま。その
坊っちゃまを、例のごとく無理矢理乗せて、ハキムの自動車はロンドンの街へ
と繰り出すのでした。

 ハキムの噂話をしているメイドさんは、第二章でも登場した、フランシスと
メアリです。ハキムの事を「可愛い」と言ってた茶髪の方が、前はアーサー派
だったフランシスで、「変わり者みたい」と言ってる金髪の方が、坊っちゃま
派だったメアリ…だと思います。
 前は、アーサーの「ねちっこさがたまらない」とか言ってて、今度は「真面
目なオトコなんてつまらない」とか言ってる(おそらく)フランシス、いい趣
味をしてらっしゃる(^_^;

 で、今回のハキムの新兵器は自動車です。それも、当時はまだ発明されて間
もない筈のガソリン自動車を、いったいどうやって入手したのか謎ですが、そ
れを自在に運転するハキム・ガールズもまた謎の存在です(^_^; 自動車の上に
すっくと直立しているハキムも侮れません。
 しかしこの場面、自動車の勢いでメアリのスカートが捲くれ上がったりと、
作画も趣味に走ってます。

 また、珍しく真面目に仕事をしている(らしい)所を連れ出される坊っちゃ
ま。ハキムが「面白いものがたくさんある」と滞在を延ばした理由を聞いて、
前回の事を連想したりしている辺り、まだハキムに事の真相を訊けていない様
子です。

 そして、またもやハキムの手足となって坊っちゃまを自動車に乗せるハキム
・ガールズ。無言の連携が面白いのもさることながら、彼女らの飾りがたてる
音が、また芸が細かくて良いです。

■ミューディーズ
 場面は変わって、エマに本を借りてくるように頼むケリー先生。ハキムの来
訪は近所の話題になっていたらしく、先生の耳にも入っていました。何故かそ
の事を謝ってしまうエマに、「あなたが謝る事は無いでしょうけど」と笑って
返す先生。
 まったくこの先生は、来訪の目的が判らないような事を言っていましたが、
完全にお見通しといった感じで侮れません。また、エマに声を掛ける時も、掃
除の手を止めて坊っちゃまの写真を見ていたりするエマに気付いているかのよ
うに、ちょっと間があったりするのが憎い(^_^;
 ちなみに、アニメでは、先生が普通に用事を頼んでますが、原作では、とあ
る事情により先生が行く事が出来ないため、エマに代わりに行ってもらうよう
になってます。その「事情」は、原作通りの展開なら、順序を入れ替えて後に
出てくるでしょうが、さて。

 一方、ハキムの自動車はガス欠で立ち往生していました。
 燃料切れと言われて、
「燃料とは何だ?」
と返すハキムに、頭痛そーな坊っちゃま。
 さらにハキムは、人が出入りしている建物を見つけ、それが貸本屋のミュー
ディーズと聞くや、そちらに向かって歩きだしてしまいました。慌てて後を追
う坊っちゃまも大変ですが、自動車+ハキム・ガールズと一緒にその場に取り
残された、自動車を見てくれたどこかのおじさんも大変です。
 まあこのおじさんの場合、ハキム・ガールズがお相手してくれるようなので、
むしろ嬉しいかもしれませんが(^_^;

 そしてミューディーズ館内。
 先生に頼まれた本を見つけたエマの耳に、他の女性客が、とある本の前でし
ている話が入ってきます。
「不幸な生まれの女性と、貴族の男性が、身分違いの恋をするんだけど…」
 なんかどこかで聞いたような話に惹かれたのか、その本も借りてしまうエマ
なのでした。
 一方、ハキムと一緒にいかがわしい本に見入っていた坊っちゃま。そこに通
りかかったエマと顔を合わせて、坊っちゃまは慌てますが、エマの方も恥ずか
しげに俯くばかり。結局、二人ともまともに話も出来ず、エマの方からその場
を立ち去ってしまうのでした。

 ミューディーズとは、「1860年、ニューオックスフォードストリートに新店
をオープンした巨大貸本屋」だそうです。当時は、まだ本は高価な物であった
ため、この手の貸本屋が多数存在していたとか。店名に
“MUDIE'S SELECT LIBRARY LIMITED”
とあるように、精選された「健全なセレクション」を誇っていたそうなので、
ハキム達が見ているような類の本が果たしてあったのかどうかは疑問ですが(^_^;

 また、エマが、先生に頼まれた本以外に、「身分違いの恋」の本も借りてし
まうのは原作通りですが、原作では先生の会員証で一緒に借りてしまうところ
が、アニメではエマ自身の会員証で借りるようになってます。ミューディーズ
の年会費は「2ギニー(=2ポンド2シリング=42シリング)」だったそうで
すが、当時のメイド、中流階級の家庭で家事一切をこなすエマのような雑役女
中(Allworks)の年給が、おそらく20ポンドも無かったらしい事を考えると、
エマが自分の給料から、年給の1割を越えるような年会費を払っているとはち
ょっと考えにくいところです。実際、店内にいる客も、それなりの服装をした
人ばかりで、エマのような労働者階級の人間はいないようです。
 想像するに、先生は、エマに眼鏡を与えたり、読み書きを教えたり(実際に
はもっと色々な事を教え込んでるというのが後に判ってきますが)と、単なる
メイドに対する以上の事をしています。ので、おそらくこの会員証も、給与以
外の一種の「特別手当」として、先生がエマに与えたのではなかろうか、と思
われます。

 あと、棚に並んでいる本が、3冊セットになっているものが多いのも注目点
かも。当時のイギリス小説は、3巻本の形態で構成されるのが多かった、とい
うのを表わしているのだと思われます。

 で、坊っちゃまの前から急いで立ち去ってしまうエマ。借りた「身分違いの
恋」の本を隠してしまったり、ミューディーズを出た後も珍しく走ってたりと、
もう大変です(^_^;

 ちなみに、走るエマを見ているのは、例によってカードをしているアルと、
その友人二人。
「走れ走れ若人よ、この世は一献の夢ならん。時を惜しみて走りゆけ」
「ゲーテか?」
「俺だよ、と」
 この辺のやり取りは原作通りですが、原作ではさらにこの後に、以下のよう
な一節が続きます。
「歩みが止まれば…休息の日は近い…」
 これが何を意味するかは、アニメでも、また後に明らかになる…かも。

■テニス
 結局、ガス欠の自動車を馬車で牽引して帰るはめになった坊っちゃま達。
 坊っちゃまに「隠している事は無いか」と聞かれて、「グレイスにテニスに
誘われた」と、そらっとぼけるハキムが意地悪です(^_^;
 この馬車の中の一連のやり取りを見ても、判り易すぎる坊っちゃまがハキム
に勝てるとは思えません。

 で、そのテニスの日。
 妹のヴィヴィー相手に本気を出すアーサーや、勝てないとなると放り出して
しまうクセに、ハキムが相手をしてくれるとなると一転してやる気になるヴィ
ヴィーと、相変わらずのジョーンズ家の子供達。

 一方、そのハキムを品定めしているかのようなレディ3人組は、エレノアの
友人達であり、グレイスの熱烈なファンです。名前は、濃茶の髪と瞳がイライ
ザ、前髪を下ろした金髪で碧の瞳がファニー、同じく金髪ですが前髪を上げ薄
紫の瞳がアリス。ハキム・ガールズみたく「三人でひとり」といった感じで、
いつも息のあったお喋りをしています。

 彼女達がアーサーに言っている「プリフェクト」は、原作では「監督生」と
書かれています。役割は、後でグレイスが説明してくれている通り、生徒の代
表で、最上級生から選ばれて下級生を監督したり指導したりする、重要なもの
のようです(生徒会長のもっと偉いもの、みたいな感じでしょうか)。ちなみ
に、アーサーが通っているのは、原作ではイートン校という事になっています。
#某作品の「スール制度」を連想させますが、これは1対1の関係は無いよう
#です(^_^;

 プリフェクトの意味を兄達に聞いてもなかなか答えて貰えないコリンが可哀
相ですが、別に兄達もワザと無視している訳ではなく、単にコリンが、そうい
う、ひたすら間の悪い星のもとに生まれてしまった、というだけの事です。
 頑張れ、コリン。泣くな、コリン(^_^;

 また、ハキムがヴィヴィーに言ってる「ウィンブルドンのシャーロット・ク
ーパー」というのは、女子全英オープンの優勝者のようです。ちょっと調べた
所では、1895年・1896年・1898年の最低3回は優勝しているようです。あと、
シャーロット・クーパー・スターリーという人が2回優勝しているようですが、
同一人物かどうかは判りませんでした。
 確かに、アーサーの言う通り「調子のいい」事を言っているハキムですが、
レディの扱いが上手いという点では、坊っちゃまやアーサーは遠く及ばないで
しょう(^_^;

 そしてグレイスとエレノア嬢の登場。
 もういきなり顔を赤らめているエレノア嬢に萌え萌え(爆)。
 さらに、坊っちゃまに対して積極的にテニスを教えてもらおうとする勇気に
拍手。
 でも、
「初めてなんです。私…何も判らないから…」
という台詞は、聞きようによってはちょっとアブないかもしれません(おい)
 おまけに、坊っちゃまがまたエレノア嬢の手を取り、しかも身体を密着させ
るようにして丁寧に素振りを教えたりするものですから、エレノア嬢も、周り
の人達も皆その気になろうというもの。
 しかし、アーサーの言う「あの二人がうまくいけば、爵位持ちと親戚になれ
る」というのが現実だったりするのもシビアな所です。
 ただハキムにとっては、そんな事とは関係なく、坊っちゃまがエレノア嬢と
うまくやってる(坊っちゃまにその気は無いにせよ)のが気に食わないのか、
テニスの勝負を申し込みます。
 しかし、勝ったのは坊っちゃまだったようです。その夜、メイドのアニーに
その事を嬉しそうに話すエレノア嬢がまた不憫と言いましょうか…(可愛いん
ですけど(^_^;)。

■二人にとって素敵な日
 一方のジョーンズ家には、夜更けにも関わらず怪しい音楽が流れておりまし
た。
 たまらず起き出した坊っちゃまがハキムの部屋を訪れると、ハキムは、眠れ
ないからと宴の最中です。しかしハキムは、踊り子達を下がらせて、改まって
話し始めます。エマに告白した事や、振られた事、坊っちゃまがエマに気があ
る事にも気付いていた事、などを。
 しかし坊っちゃま、ハキムが振られたと聞いて、
「いや、喜んでる訳じゃ…」
と言いつつも、明らかに顔は喜んでます。ハキムの言う通り、あまりにも判り
易すぎです(^_^;

 結局、ハキムにけしかけられる形になってしまった坊っちゃまは、例によっ
ていつもの店でエマを待ち伏せ。
 エマを見つけ、今日は物を買わずに出て行く坊っちゃまを見て、
「今日は二人にとって素敵な日になりそうだわ…女の勘ですけど」
という店員のサラさんこそが素敵です。

 で、エマを呼び止め、またいつものように公園を並んで歩くものの、今日は、
何かを言おうとして何も言えず、黙って歩く坊っちゃま。
 ついには、エマに
「戻りましょうか」
なんて言われ、よりによってハキムの事などを話し始めてしまいます。
 まあこの辺りの果てし無く無器用な所が坊っちゃまらしいと言えなくもない
ですが、エマがハキムを振った事を知っているのを話した上で、ハキムの事を
「悪い奴じゃないんです」とか言うのは最悪です。これではまるで、エマにハ
キムと付き合う事を勧めているようにしか聞こえません。

「ハキムさんの事なら、この間お返事した通りです」
 このエマの台詞も、おそらくそう思ってしまった故のものではないでしょう
か。いつものエマらしくない、やや早口で固い口調と、視線を逸らせて俯き加
減の、やや悲しげにも見える表情が実に印象的です。

 さすがに鈍い坊っちゃまも間違いに気付いたか、慌てて軌道修正します。ハ
キムが羨ましい、思うままに言葉にしたり行動出来たらどんなにいいか、と。
 それに対して、ジョーンズさんはジョーンズさんのままで、と応えるエマ。
 本当に良いのか?とツッコミたいのはやまやまですが、エマが良いと言うな
ら良いのでしょう(^_^;

 とりあえず、また一歩近付いた二人。エマの手を引いて走り出したり、テレ
サを振り回したりして浮かれまくっている坊っちゃまは放っといて、自室で髪
を解き、静かにあの本を読むエマを見守りつつ、続きは次回。

■次回予告
 第五章「晩餐会」。
 サブタイトルからしますと、原作では、またもや坊っちゃまがエレノア嬢を
たぶらかす(違)話の筈ですが、予告の絵は、紅茶セットに、赤々と燃える石
炭に、一葉の写真。この写真は、先生の家の暖炉の上に、坊っちゃまの写真と
並んで飾ってあるものの内の一つです。写っている二人の話が出る…のかな?

■全体をみて
 今回は、冒頭から、ミューディーズを経てアルが詩を詠む所までが、「先生
の事情」を除き、ほぼ原作第六話に沿っていますが、テニスの場面から以降は
殆どオリジナルです。アーサーがプリフェクトになった、というやり取りの辺
りだけ、第九話からちょこっと抜き出されてます。
 基本的には、エマに振られたハキムが、今度は坊っちゃまの背中を蹴飛ばす
話。しかも今回の言動を聞く限りでは、半ば振られる事を承知の上で告白し、
坊っちゃまに危機感を持たせるつもりもあったような。
 蹴飛ばされた坊っちゃまの方も、何とか勇気を振り絞ったようですが、呆れ
るぐらい直接的なハキムに比べると、まだまだ1万光年ぐらいは遠回りしてい
る感じです。しかも、エレノア嬢に対しては、さらに罪作りな事をしてしまっ
ていますし(^_^;(確かにカミソリを送りつけられそう)
 前途多難と言う程度では済まなさそうな感じで、極々ゆっくりと近付いてい
く二人でありますが、さてどうなることやら。

では。

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宮越 和史@大阪在住(アドレスから_NOSPAMは抜いてください)
BGM : マジカルちょーだいっ by 宮崎羽衣