ども、みやこしです。

 氷炎 雷光風(ひえん らいこふ)さんから、
「第一章で、『配達員』にキャスティングされていた『大原 崇』さんという
 のは、グレイス役の大原さやかさんの弟さんではないか?」
という情報をいただきました。
 確かに、大原さやかさんの弟さんは、大原崇さんという賢プロダクション所
属の声優さんです。同姓同名ですし、確証はありませんがおそらくそうなので
しょう。
 こんなおいしいネタを見逃していたとは…氷炎 雷光風さん、情報ありがと
うございました。

「英國戀物語エマ」第二章「二つの世界」

■ストーカー坊っちゃま
 いつもの店でエマを待ち伏せするのが日課と化しているらしい坊っちゃま。
今日も首尾よく、買い物帰りのエマに会い、家まで(やはり半ば無理矢理)送
る事ができました。そして、エマが手袋を返そうとするのを「口実ができます」
と断ったりしますが、「ああ見えても、奥様は何時でも歓迎していらっしゃい
ますよ」と言われてがっくりです。

 店員に、現われる時刻まで読まれているぐらい、通い詰めているらしい坊っ
ちゃま。毎回、律儀に何かを買っていっているようです。今回はスプーン(お
そらく銀製の)でしたが、エマに声を掛けてから手に持ったままのスプーンに
気付き、慌ててポケットに突っ込むのが可笑しい。
#何となく、「ウルトラマン」でハヤタ隊員が変身カプセルと間違えてカレー
#スプーンを掲げる場面なんかを連想してしまった私はかなり古いです(^_^;

 ところで、エマは、坊っちゃまの言う「口実」が、自分の事ではないと思っ
ているようです。すると、前回では、坊っちゃまの目的が自分だと気付いてい
た訳ではなかった、という事になります。前回のエマの様子からすると、気付
いていない筈はないと思えたのですが…。坊っちゃまが親切にしてくれるのは、
自分が坊っちゃまの恩師である先生のメイドだから、くらいにしか思っていな
かった、という事でしょうか。

■ジョーンズ家の一族
 家に帰るなり、メイド−前回も登場したおばさん。原作にも登場しますが、
テレサという名前はアニメでつきました(確か…)−に怒られる坊っちゃま。
どうやら、仕事をサボって出歩いているのを、テレサが苦労して言い訳してい
るようです。
 アニメだと、坊っちゃまは遊んでばかりいるようにしか見えませんが、原作
では、一応父親の仕事を手伝っていて、それなりに「できる」人のようです。
その辺りが今後アニメで描かれるかどうかは謎ですが。

 そこに、坊っちゃまの弟妹達が帰ってきました。上から、グレイス、アーサ
ー、ヴィヴィアン(通称ヴィヴィー)、コリン。アニメでははっきりと言われ
ていませんが、アーサーは学校の寄宿舎からの帰宅で、他の3人は保養地から
の帰りです。坊っちゃまの「アーサーも一緒だったのか」と、ヴィヴィーの
「駅でちょうど一緒になった」という台詞は、それを表わしています。

 いかにも淑女然とした雰囲気のグレイス、ぶっきらぼうな感じのアーサー、
都会っ子で活発そうなヴィヴィー、何か言おうとして兄や姉に先を越されてし
まう内気そうなコリンと、4人の特徴がよく出ている場面です。最後に、コリ
ンを気遣う坊っちゃまは、いかにも「お兄ちゃん」していて良いですね。

 そして、父リチャード・ジョーンズ氏の登場です。坊っちゃまが、招待を全
て断っており、あまつさえ断わりの返事を執事のスティーブンスに任せている、
というのを叱責し、いかに社交が重要であるかを説きます。さすがに坊っちゃ
まも逃げきれず、父リチャードが先回りして出席を約束した舞踏会に出ざるを
得なくなりました。

 ここで、父リチャードが言っている通り、ジョーンズ家は先祖代々の貴族で
はなく、爵位もありません。商売によって財を成し、上流階級(ジェントリ)
の仲間入りを果たした、いわば「成り上がり」です。同じ上流階級の人間とは
いえ、元からの貴族連中とは立場が違います。それだけに、社交界での付き合
いは、より重要になるという事なのでしょう。

 ジョーンズ家の人々についても、キャスティングは概ねイメージ通りでした。
ただ、グレイス役の大原さやかさんの声だけは、イメージしていたのよりちょ
っと高過ぎるかな、という感じがありましたが、おいおい慣れる…かも。

 一方のエマは、洗濯物を取り込みながらも、何となく坊っちゃまの事が気に
なっている様子。その様子を猫に見られて、思わず咳払いなんかしている所が
可愛い。

■舞踏会
 舞踏会には来たものの、壁飾りと化している坊っちゃま。友人−ロバート氏
は原作にも登場します−に諭されても、自分から誰かを誘う気は無さそうです。

 その壁飾りに声を掛けたのは、キャンベル夫人。彼女の娘、エレノア嬢は、
今日が初めての舞踏会、社交界デビューという事で、お相手してくれるように
頼みます。快諾して、坊っちゃまは、キャンベル夫人の背中に隠れるようにし
ていたエレノア嬢とダンスを踊るのでした。

 エレノア嬢役は小林沙苗さん。見た目も性格も可愛らしいエレノア嬢にはピ
ッタリです。見た目といえば、エレノア嬢とヴィヴィーが似ているのは、別に
何かの陰謀でも何でもなく、作者が「描き分けができていないだけ」だそうで
す(^_^;

 ちなみに、キャンベル家は、爵位(子爵)を持つ歴とした貴族です。

 それにしても、舞踏会の場面というのは、人(それもやたら凝った衣装の)
が多いので大変そうです。

■日傘
 日は変わって、グレイスとヴィヴィーの買い物に付き合っている坊っちゃま
は、たまたま同じ店に来たエレノア嬢と再会します。
 店に入って、後ろ姿でもすぐ坊っちゃまに気付いたエレノア嬢と、顔を見て
もすぐにはエレノア嬢を思い出さなかった坊っちゃま。舞踏会での出来事を、
あくまで社交辞令としての意味以上には考えていない坊っちゃまと、そうでは
ないエレノア嬢との、2人の「温度差」が端的に表現されている場面です。

 ちなみに、エレノア嬢の後に控えている女性は、原作にも出てくる、エレノ
ア嬢付きのメイドさんです。名前はアニメでも無いようですが…。

 さて、日傘を買いに来たというエレノア嬢に、こういう物を贈られるとレデ
ィーは喜ぶもの、と聞いて、坊っちゃまは一本の日傘を選んでレジへ。坊っち
ゃまが、贈り物として包んでくれるように頼むのを聞くと、ヴィヴィーはエレ
ノア嬢へのプレゼントかと色めき立ち、エレノア嬢はそんなつもりでは、と慌
てます。が、当の坊っちゃまは、何の事かと大ボケをかます始末。その一言で、
店内の空気が一変し、それでようやく、自分が紛らわしい真似をしていた事に
気付いた坊っちゃまは、エレノア嬢に謝罪します。しかし、誰に贈るのか、と
いうヴィヴィーの追求ははぐらかす坊っちゃまでした。

 何というか、「空気読め」というツッコミが世界中からされそうな坊っちゃ
まの振る舞いですが、可哀相なのはエレノア嬢です。期待してしまった恥ずか
しさいっぱいな様子が、小刻みに震える手によく表れています。

 あと、エレノア嬢に対して親しげなグレイスとヴィヴィーの様子から、彼女
達は以前からの知り合いであった事が見て取れます。おそらく、お茶会等で女
性同士の親交はあったのでしょう。原作でも、グレイスとエレノア嬢とはかな
り仲が良いようで、手紙のやり取り等もよくしているようです。

■二つの世界
 一方、買い物帰りのエマは、坊っちゃま達が店から出てくる所を偶然見てし
まい、思わず踵を返してしまいます。それ以来、坊っちゃまの待ち伏せしてい
る店を避けてしまうようになるエマ。

 しかし、遂に坊っちゃまが家に訪ねてきます。

 先生の言いつけで買い物に出たエマは、後を追うように出てきた坊っちゃま
と、久し振りに公園を歩きます。日傘を贈りたいという坊っちゃまに、エマは、
レースのハンカチだけでも充分、これ以上そんな高価な物は受け取れない、と
言うのでした。

 自分が、エマの気持ちを考えていなかった事に気付き、謝る坊っちゃま。そ
して、プレゼントは止めます、ただ時々こうして一緒に過ごすのは構いません
か、と申し出ます。その坊っちゃまの言葉に、素直に肯くエマなのでした。

 おそらく、エマが、坊っちゃまは違う世界の人間であるという事を実感した、
最初の出来事です。何かを期待するように、いつも坊っちゃまが待ち伏せして
いる店を覗き込んだりした直後に、レディー達といる坊っちゃまを見てしまっ
たため、余計に動揺が大きかったのでしょう。慌てて買い物篭から野菜を落と
すエマ、という、実に珍しいものが観れる場面です。しかも、その落とした野
菜を、エレノア嬢達の馬車が踏みつけていく、というのがダメ押しになってま
す。

 夜、髪を梳きながら何かを考え、買い物帰りにも回り道をするようになり、
自分から壁を作ってしまったようなエマですが、今回は先生が助け船を出して
くれました。
 エマ手作りのスコーンを美味しいと言う坊っちゃまに試すような事を言って
みたり(この時、斜め後ろからの表情が見えないエマの顔がインサートされた
りするのも、原作では度々使用されている手法です)、エマを買い物に行かせ
て坊っちゃまと話す機会を与えてみたり。
 でも、エマの後を追って慌てて出て行く(しかもスコーンを両手に持ったま
まで)坊っちゃまに何も言わないのは、少し先生らしくないかもしれません。
結構失礼な振る舞いのように見えるので、結局後を追わせるにしても、何か一
言ありそうなものですが。

 それにしても、髪を梳いたり、玄関を開ける前にエプロンを軽く手ではたい
たり、エプロンを着けたり、キャップの紐を締めたり、お湯を沸かしたり、と
いった、エマの動作や仕草は相変わらず良いです。
#「そんなトコばっかり見てるんですか?」と問われれば、
#「はい、そんなトコばっかり見てます」と答えるでしょう(^_^;

 あと、坊っちゃまに恋人ができたらしい、と噂していてハウスキーパーのメ
イドに怒られていた2人は、フランシスとメアリというオリジナルのキャラで
す。原作では、ジョーンズ家の使用人で名前があるのは、執事のスティーブン
スぐらいだったと思います。この2人は、「エマ教育ラジオ」でパーソナリテ
ィーを務めています。声からして、アーサー派の方がフランシス、坊っちゃま
派の方がメアリではないかと思うのですが、自信はありません。
#この「エマ教育ラジオ」で、メアリが、フランシスを「フラニー」と呼ぶの
#が何か好きです。

■後日談
 さて、結局日傘は誰の手に渡ったかというと、テレサにプレゼントされたの
でした。こんな派手な物を、でもせっかくですから、と渋々受け取ったテレサ
ですが、結構愛用しているご様子。
 それを街で偶然見かけたエレノア嬢は、贈り先が誰だか判って、安心するの
でした。
 でも、これが全然「安心」ではない事は、視聴者には判っています。つくづ
く、坊っちゃまは罪作りです。

■次回予告
 第三章「告白」。
 象が吠える!象が走る!コリンは泣き、先生は呆れ、エマは驚き、そして謎
のインド人が笑う!
 …確か、この作品は、19世紀末の英国を舞台にした、身分違いの男女の恋を
描くラブロマンスだった筈ですが…(^_^;

■全体をみて
 今回、原作にあるのは、グレイス達が帰ってくる所と、坊っちゃまが父リチ
ャードに怒られて舞踏会に出て、エレノアに出会う所、これだけです。それも、
話の順番を入れ替えた事に合わせて改変が加えられています。あとは、全てア
ニメオリジナルです。前回の予告から、話の順番をかなり入れ替えてくるとい
うのは判っていましたが、2回目にしてこれだけオリジナルの場面を加えてく
るとは予想外でした。
 前回が、2人がそれぞれ「自分が相手の事を好きになる」という話だったと
すれば、今回は、2人がお互いに「相手も自分の事が好きだという事に気付く」
話だと言えるかもしれません。
 確かに改めて観ると、このプロセスが原作には無かったような気がします。
それは、あまりにも判りきっている事なので、作者も描かなかったし、読者も
気にしなかった、という事なのかもしれません。
 このプロセスと、2人の間に存在する階級の差とをより明確に描く為、とい
う風に考えると、このオリジナル部分もアリかな、という気がします。
 ただ、やはり、慌てるエマや、先生の態度等に多少の違和感を感じるのも確
かですが。
 また、作画もまだ全体的に丁寧で良い感じなのですが、それだけに、時々パ
ースが変なカットがあったのが引っ掛かります。欲を言えばきりが無いですが、
是非頑張って欲しい所です。

では。

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宮越 和史@大阪在住(アドレスから_NOSPAMは抜いてください)
BGM : マジカルちょーだいっ by 宮崎羽衣