At Tue, 02 Nov 2004 19:46:43 +0900,
in the message, <41876593.E313894F@ht.sakura.ne.jp>,
IIJIMA Hiromitsu <delmonta@ht.sakura.ne.jp> wrote
>本題のほうは解決しているので、スレッドを切って、補足と私から質問。
>
>> たとえば、XさんがYさんにお金を貸したとして、Xさんは「返してくれ」と裁
>> 判を起こしたとします。Yさんが銀行に預金を持っていることは分かっているけ
>> ど、判決がおりるまで待っていたら、Yさんはそれを生活費やら車やらに使い込
>> んでしまうかもしれない。……そういう場合に、「判決がおりるまで預金を凍結
>> せよ」という仮処分を出してもらうわけです。
>
>このケースだと、仮差押を受けてYさんは、「毎月の各種支払いに困るから、一
>定の範囲だけでも凍結解除してくれ、そのかわり、敗訴したときに完全に支払不
>能にならないように、裁判所に一定額を預けます」という手続きをとります。

# 読者一般の便宜。

仮処分と仮差押えは別のものです。
上記孫引き部分では「仮処分」とありますが、これは次の投稿の引用に「仮差
押」とあるとおり仮差押えが正解です。

仮差押えとは、「金銭債権を」保全するために債務者の責任財産の処分に制限
を加えるもの。
仮処分には、係争物に関する仮処分と仮の地位を定める仮処分とがあります。
前者は、特定の物または権利を対象に「金銭給付以外の」給付を目的とする債
権を保全するもの。
後者は、今回はまあどうでもいいけど、債権の保全を目的とせずに本案判決ま
での間に債権者の損害などを避けるために一定の地位を仮に定めるもの。

よって、上記設例は貸金返還請求権という「金銭債権」保全の事例であるから
「仮差押え」ということになります。


ところで、仮差押えの執行の取消(執行前ならば停止。)をするために供託す
る金銭を、仮差押解放金と言います
この仮差押解放金は、「裁判所ではなく供託所に供託する」ものです。
法律構成としては、仮差押えの対象が、債務者が供託所に対して有する供託金
取戻請求権に替るということです
(要するに、供託するからそっちを代りに仮差押えの対象にしてくれというわ
 けです。)。

……なのですが、執行の取消(停止)は仮差押えの執行(仮差押命令ではな
い)を取消す(停止する)もので、仮差押えの対象となった債権の「一部」に
ついての処分を可能にするということはないです
(前述の通り、仮差押えの対象が供託金取戻請求権に替るわけで、これを部
 分的にやると一つの仮差押え命令の対象が二つに分かれることになって法律
 関係が複雑になります。)。
したがって、「一定の範囲だけでも凍結解除」ということはありません。
全部解除になります。


で、ついでに参考までに言いますと、

At Tue, 02 Nov 2004 03:52:57 +0900,
in the message, <41868609.E0A61EDA@ht.sakura.ne.jp>,
IIJIMA Hiromitsu <delmonta@ht.sakura.ne.jp> wrote
>貸出だけですよね? なら本訴より仮処分を考えたほうがいいです。

「本来の」制度趣旨としては、仮処分などの民事保全手続は「(現在または将
来の)本訴を前提とする」ものであって本訴と不可分のものです。
「仮」と言うくらいですから。
なので、仮処分命令が出たけど本訴を提起しない場合、仮処分命令が取消しに
なる可能性もあります。
ですから仮処分をやるなら、本来は、「本訴を考えておかなければならない」
です。

もっとも、これは建前論で実際には保全処分の本案化というのが言われて久し
く、本案を前提としない保全処分というのが増えているのではありますが。

-- 
SUZUKI Wataru
mailto:szk_wataru_2003@yahoo.co.jp