At Fri, 12 Sep 2003 17:53:53 +0900,
in the message, <20030912175353cal@nn.iij4u.or.jp>,
cal@nn.iij4u.or.jp (SASAKI Masato) wrote
>ゆえにその場合は意思表示だとしても単独行為ととるしかない。

ここまでは全面的に賛同しますが
(と言うか、別投稿でそれは既に触れていたりする。)。

>単独行為において(著作権の場合に)内心を重視する必要があるのかい?
>……となって前の投稿につながります。
>
>実際田村先生は契約の場合に
>当事者が著作権について詳しくないがゆえに許諾の範囲が不明確なのであれば
>内心をどうこうするのは法律的に意味がない、
>当事者が契約によって達成したいことを想定し
>著作権法に精通していればなされたであろうことによって
>合理的に解釈すべきだ……という趣旨のきわめてごもっともな指摘をしています。

これは、著作権法に限らず契約(法律行為)一般に言えることです。
契約(意思表示)の解釈は一般的には当事者の「合理的」意思解釈であって当
事者の実際の個別的内心事情を完全に斟酌したものでないのは改めて言うまで
もありません。

>ならば契約でない場合に内心をどうこうしないで
>許諾を与えたという外観を基準に著作権侵害にならないという効果を与えて
>なんの問題があるだろうかと続きます。

その許諾が本当に「許諾かどうか」という点を無視できないと言っておきま
す。
許諾であるがその内容が不明確というのとは決定的に違います。

>そもそも意思表示でおしすすめた方が妥当なら
>著作権法63条の規定は当然のことをあらためて書いただけで
>特別の意味は全くありません。
>……さすがにそこまで言い切っている本もないんだけど。

特別の意味が必要ありますか?
当然のことを述べた注意規定であると解しても何の問題もないです。

条文は、一般人をしてできるだけ明確に理解できる方が望ましいのだから、論
理操作なしでもはっきり判る条文がある方がいいという場合もあります。
著作権法のように、権利保護についてまだ未成熟な部分が多い権利に関する法
律であれば、考えてみれば当然ではなく考えるまでもなく明確な規定があった
方がいいです。

# 誰か、著作権法の許諾に関する規定を「自分の権利を他人に使用させるとい
 う処分ができるのは当然だ」という趣旨のことを言っていた人がいた記憶は
 ありますが。
 半田先生だったかな?

>そして許諾がなければ(他に規定のない限り)著作権侵害になるのですから
>許諾をしても著作権侵害になることがあると解して著作権者を保護するというのは
>公正な使用を軽視しすぎる点で問題おおありだと思います。

そもそも、それが本当に「許諾」なのかあるいは許諾であるとしても有効な許
諾なのかどうかということが問題なのです。
有効でない許諾(あるいはそもそも許諾でない)ものを「許諾」だとして著作
権侵害にならないという方がよほどおかしいです。
例えば強迫による許諾をもって著作物を利用する行為が「公正な使用」とは到
底言えないということ。

これは、法律行為一般における意思表示だって全く同じです。

# で、準法律行為にあっても結局は意思表示の規定を性質に応じて類推適用す
 るのだから結論において違いは全く出ない、というのは最初に述べたとお
 り。
 結論が同じなら「公正な使用を軽視する」という批判は実際には当らない。
 どちらも「権利者の保護と公正な使用」の調整を図るということでは何ら差
 はなくその結論も結局は妥当な線に落ち着く。
 違うのは「理論構成だけ」。

-- 
SUZUKI Wataru
mailto:szk_wataru_2003@yahoo.co.jp