佐々木将人@函館 です。

>From:Sin'ya <ksinya@quartz.ocn.ne.jp>
>Date:2003/10/26 10:33:10 JST
>Message-ID:<bnf88m$s9b$1@news-est.ocn.ad.jp>
>
>  私の投稿は政治の話でしたが、その内容が法律を考慮するとどうなのか、も
>し解説してくださる方がいたらうれしいな、と思いました。

もしそういうものであればそのことを明記すべきでしょう。

>  国際政治における行為は国際法の観点からアムネスティなどの人権団体など
>から批判されることもあるので、場合によっては、クロスポストしてもかまわ
>ないと思います。

そのことを明記した上でフォロー先を指定すべきでしょう。
(なお、法律学と政治学の違いについて後述)

>  特に、人道・人権・戦争に関する国際法は、しろうとが条文を読んでも理解
>できないようなものではなく、過去の政治的行動のつみかさねであり、また、
>人々の道徳的・倫理的な考え方がもとになって作られていると思います。その
>ような法律は、法律そのものがきわめて政治的なものなのではないかと思いま
>すが、どうでしょうか。

そういう考え方が全くの誤りであることをまず認識してください。
私の投稿やwebサイトの論述を信用しなくとも
国際法の適切な概説書の冒頭にある「国際法とは何か」の部分を読むと
懇切丁寧に上記の考え方の誤りを正してくれます。

端的に言えば政治学と法律学の区別がついていないから
こういう考え方になると言っても過言ではありません。

法律はたいていある目的実現のために制定されたり成立します。
そしてその目的実現のための方法が法律制定以外にもある以上
法律制定自体政治の問題とも言えます。
法律制定自体政治の問題とも言えるのであれば
法律の内容の決定もまた政治の問題と言えることにも何の疑いもありません。

この点において国内法と国際法の違いは全くありません。

さてそうは言ってもたいていの大学では
政治学と法律学は別物だと扱われています。
それはなぜかと言えば学問分野としては別だと考えられているからです。
法律学の定義自体にはいろんな説がありまして
例えば私がよくいう「法律という客観的存在をその研究対象にする」
で言うなら
国際法と国内法は法律である点において全く違いはなく
それゆえ国際法(学)は法学に、国際政治(学)は政治学に分類されます。
(国際関係論がどうなるのかはちょっとわからない。
 もしかしたら社会学かもしんまい。)

そしてその解釈の技術論にも国内法と国際法の本質的差はありません。
国内法ならだめだが国際法なら
「素人が条文を読んでも理解できないようなものでな」いから
なんとかなると考えているのであれば
大きな勘違い以外の何物でもありません。

実のところ法律学は職人芸ではなく学問体系ですから
きちんとした手順を踏めば誰でも理解できるものです。
したがって国内法と同様に国際法を理解することができます。
国際法なら素人でもなんとかなるのと同じ程度に
国内法なら素人でもなんとかなります。
もし両者が違うと思っているのであれば
この場合のきちんとした手順は
まず「違うという誤った考えを捨てる」ことです。

>SASAKI> 「いや、一時帰国の約束は(国家間の約束なので)条約にあたるのだ。
>SASAKI>  一時帰国の約束を果たさないことが条約違反にあたるのだ。」
>SASAKI> という反論をするのであれば
>SASAKI> まず真っ先に議論しなければならないのは
>SASAKI> 先行する国際法違反と後行の国際法違反の衝突の処理であって
>SASAKI> それなしに「一時帰国の約束を果たさないのは非難されるべき」とか
>SASAKI> 「でも本人が戻りたくなければそれでいい」というのは
>SASAKI> 法律論としてはあまりにもラフだと思います。
>
>  ラフかもしれませんが、そんなにむずかしい問題なんですか?

難しいかどうかはわかりませんが
法的な思考ならまずこう考えなければいけません。

そしてこの程度で難しいというのであれば
これをなんの気なしにできる程度にまで熟練する必要があります。
(法的義務の存在を主張するためには
 法的義務の根拠を示さなければならないことは
 法解釈の基本中の基本ですし
 複数の法的義務の内容が衝突する場合には
 それを処理しなければならないと認識することも
 これまた法解釈の基本中の基本です。)

>  約束をやぶったことは謝罪するべきでしょう。その後どう処理するかは別と
>して。

謝罪というのも国際責任が発生した際の解除方法であり
国際法上の制度の1つです。
(参照 国家責任に関する暫定条文草案45条2項(b))
そして国際責任が発生した場合にはその解除方法の大原則は
原状回復なのは前投稿でも述べたとおりですし
同43条もそのことを示しています。
今回の拉致問題で謝罪を法的義務と考えるのであれば
今日本に帰って来ている被害者を北朝鮮に帰すのが原状回復で
それもまた法的義務と考えなければなりません。
(むしろ謝罪より優先される。)

にもかかわらず
「本人が帰りたくないと言えばそれは尊重される。」というのは
その法的義務と矛盾した主張です。

確かに嫌がる人間を強制的に引き渡せば
人権上の問題は発生するかもしれませんが
その人権上の問題が国際法上の問題としても
やはり上記「引き渡すべき法的義務」との衝突が問題になります。
それらについて適切な解決策が示されなければ
国際法の議論としては誤り以外の何物でもありません。

(ちなみに本人が嫌がれば強制的に引き渡せないという
 一般的な国際法のルールは存在しません。)

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cal@nn.iij4u.or.jp  佐々木将人
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まさと  「それ青いブレザーでキュンキュンさせながら言わないと……。」