佐々木将人@函館 です。

>From:"Miyasun" <miyasun@mtj.biglobe.ne.jp>
>Date:2003/07/21 00:37:34 JST
>Message-ID:<bfecd0$jbi$1@cala.muzik.gr.jp>
>
>まず、「偽証」の詳しい定義。

それ必要なんですか?

fj.soc.lawではずいぶん前に話が出ている
(調べてみたらもう5年前だったよ。)
たがみよしひさ「なあばすぶれいくだうん」5巻収録の第30話
「暁の視線」における6月26日午前4時30分ころ
三笠通りをジョギングした姐ちゃんに証言を求めるとする。
彼女がすれちがい様に見たのは緑色の服を着た若い男の人。
でも現実には彼女は太陽の昇ってくる方向に走っていて
太陽を否が応にも太陽が見えていた。
そのためすれちがった人の服も緑に見えたもので
実際には白だったもの。

さあ「緑の服でした」と証言したこのおねいちゃんは偽証したのか?
……詳細は <19980823175302cal@host.or.jp> を見ていただくこととして……。

刑法の偽証罪については通説判例の立場は
「自分の記憶と異なることをことさらに述べるのが偽証罪」ですから
事実と異なるかどうかは基本的には問題にしちゃいません。

でも「自分の記憶と異なるかどうか」を問題にしているの?

>「偽証」の定義は600倍の差がでるほど国によって大きく違うのか。

偽証罪についてはありえるんじゃないんですか?
今調べてみたら英米法でいうperjuryは日本と定義違うもん。
(しかもコモン・ロー上の犯罪とされたのは1613年で
 それ以前は犯罪ではなかったらしいし。)
偽証罪ですらそうなんだから、偽証なら……。

>日本での偽証の立件は韓国とは言わないまでも欧米より甘いのか。
>日本は罪に問われないだけで実は偽証は多いのか。(2000年に5件という
>程少なくないのか)

これって数値に基づく議論ができるんですか?もともと。
まず裁判所が事実はこうだと判断するけど
本来その判断が正しいって保障はまるでない訳だし
むしろ「裁判所の判断に従おう」という約束で動いている訳ですな。

その約束が適正に守られているがゆえに
「裁判所の判断が正しい」と仮定することができたとしてはじめて
その判断に反した証言が問題になるでしょう?
しかも裁判所の判断に反していることが偽証罪になるかと言えばそうではない。
自分の記憶に反しているのを知りながらあえて言えば偽証罪にはなるけど
そうでなければ偽証罪にはならない。
そうなると「日本で偽証が多いのか?」という質問は
「日本では偽証罪の構成要件を満たす事例が多いのか」
と書き換えることができてはじめて
「日本で自分の記憶に反しているのを知りながらあえて言う人は多いのか?」
という質問にさらに書き換えられることになるけど
……他人の記憶とその証言内容を照らし合わせる客観的な方法ってあるの?

まして「偽証罪」じゃなく「偽証」なんだからなあ……。
「偽証ってなあに?」ってところから検証しないと……。

だからその質問に確たる根拠もなくまた自分の経験則であることも断らず
あたかもそれが事実であるかのように
「日本は偽証が多いです」とか「日本は言われるほど偽証が多くありません」とか
言う人がいたら
すべからく眉唾と思っていいでしょう。

ちなみに法律論を離れれば

「韓国の従軍慰安婦の証言は嘘が結構多いので鵜呑みにはしないように」
というのは「韓国の従軍慰安婦」に限定することが妥当性を欠く話で
「証言は嘘が多いので鵜呑みにはしないように」
とだけ書けばみんな納得するんじゃないんですか?
……もっと言えば証言に限らず「鵜呑み」にはしなさんな……と言いたい。

それほど流行してはいないかもしれませんけど
「依頼人は嘘をつく」というのは当然の前提にしていいと思う。
……最近のドラマだとNTVの「最後の弁護人」でも言っていたね。

もしかしたらこう書いている私だって
公然と嘘を書いているかもしれない……(笑)

でもそこで自分なりにいろいろ判断していくもんでしょ。

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cal@nn.iij4u.or.jp  佐々木将人
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