Re: 基底変換写像は恒等写像?
工繊大の塚本です.
In article <0571742c-7d70-4284-a4f5-45973d4d9c03@m4g2000vbl.googlegroups.com>
KyokoYoshida <kyokoyoshida123@gmail.com> writes:
> > > 因みに2つの射が等しいの定義は何なのでしょうか
> > > (調べてみたのですがちょっと見当たりませんでした)?
> > 圏論の立場から言えば, それは given である,
> > というだけです.
>
> すっすいません。"given"とはどういう意味でしょうか?
「与えられている」「所与である」です. どの射が等しいか,
ということも含めて, 何が射であるかが定まっている, という
ところから圏論は出発します.
> 纏めますと
> 線形空間は正式には右加群の概念である。
タテベクトルの数ベクトル空間を使い, その上での
線形写像を左から行列を掛けることで表すなら,
作用する環が(斜)体である場合の右加群と考える
方が自然です.
> そして任意の元xを一次結合をベクトル(n×1行列,1×m行列)表記すると時は
> vector成分のベクトルをヨコベクトルに
ベクトルを並べるときには横に並べる.
> scalar成分のベクトルはタテベクトルに書くという風習がある
スカラーを並べるときには縦に並べる.
> (∵見易くするため)。
> 従って,x=Σ_{i=1}^n v_i a_i (但し,v_iはvector,a_iはscalar)
> という風に書かねばならない(∵上述の線形写像の矛盾回避の為)。
掛け算の規則を今のままにするなら, 本来はそちらが自然です.
> ところが斜体Fが可換体の場合には,x=Σ_{i=1}^n v_i a_iは
> x=Σ_{i=1}^n a_i v_i と表記する慣習ができてしまった
> (∵西欧人は「〜の〜倍」という言い回しにどうしても馴染めなかった為)。
言い回しに慣れなかったかどうかはともかく, 多項式などの
場合の係数は変数の前に付けるのが先に習慣になっていますから.
> 但し,例外は時系列解析やcode theory.
ヨコベクトルを主に扱うという意味で例外でしょう.
> となるのですね。
> f(v_i)=裡_{j=1}^n a_ij w_j
> (但し,v_i,w_jはvector,a_ijはscalar, i=1,2,…,m)
> で(a_ij)が表現行列とせずに
> f(v_j)=Σ_{i=1}^n a_ij w_j で(a_ij)が表現行列と
正しくは, f(v_j)=Σ_{i=1}^n a_ij w_i
^
> (スムーズな表記ではありませんが)表記する歴史があったのですね。
>
> これで漸く謎が晴れました。
> 所でこのように線形空間は正式には右加群として考え,
> Σを使った一次結合表記の時には左加群として表記するという事は
> とても重要な事と思います(西欧の文化背景を知らない私は以前より
> 常々疑問に思っていましたので)。
可換な環が作用するなら, 右加群も左加群も区別する必要は
ありませんから, 初学者には無用の混乱を起こすのみです.
可換でない環を扱うようになれば, 自然と気が付くことです.
> どうしてこのような重要な事は日本の各線形代数の教科書は
> 述べていないのでしょうか?
その教科書は初学者用ということですね.
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塚本千秋@数理・自然部門.基盤科学系.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chiaki@kit.ac.jp
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