こん○○わ、PARALLAXです。

"S. GOTO" <goto.shinichiro@tx.thn.ne.jp> wrote in message
news:9er4vo$b92$1@news.thn.ne.jp...
> 後藤です

ども(^○^)/。では、続き。

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【突然妄想劇場】瀬戸内少女野球団 球魂一発 北の○○・南の××
        炸裂! 女の意地が、マリンスタジアムに花開く
                     (5回裏 その1/2)
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◆15:40 5回裏 プロミストアイランドの攻撃

 ひゅっ ぱす!

爺や5「すたーいく、わん!」

 容赦ない速球の投球がきっちり小さめのストライクゾーンぎりぎ
りに決まり、主審のコールが容赦なく上がる。これを聞きながら、
花穂は身を捩らんばかりに焦り悩んでいた。どうしよう、どうしよ
う、そんな言葉ばかりが頭を回っている。しかし、いっかな解答の
女神は自分に降りてこようとしなかった。勿論、幸運の女神も。

 ひゅっ ぱす!

爺や5「すたーいく、つー!」

 そしてそんな様子の花穂の気持ちは、マウンドの美奈子にも十分
伝わっていた。辛いわね、確かに。そうは思うものの、だからと言
って同情し憐憫の投球なぞできるものではない。自分たちの本質を
あっさり見抜いた彼女たちの事、そんな手抜きの投球などすれば烈
火の如く怒り出すだろう。当たり前の友人として自分たちに接して
くれる彼女たちに、そんな強者の驕りである哀れみの行為なぞ手向
けられる筈も無い。だから、自分は自分ができる精一杯の事をする。

 ひゅっ ぱす!

爺や5「すたーいく、すりー! ばったー、あうっ!」

 結局、たった3球で打席を降りた花穂。肩を落とし首を項垂れ、
見るからに落ち込んでいるのが判る。1塁側ベンチへとぼとぼと帰
ってゆく花穂を見送りながら、同情を禁じえず見送る美奈子。と、
彼女の耳にショートのレイがぽつりと呟く声が聞こえた。

レイ 「ネタが無いのは、首が無いのと一緒ね・・・」

 そう。大ネタ揃いの姉たちと違い、自分の手持ちネタが全く無い
事を最も気に病んでいるのは当の花穂本人だった。衛然り、千影然
り、咲耶然り。あの雛子や鞠絵でさえ、ベンチでや第1打席早々で
大ネタを披露し、成功を収めている。だが、自分には何がある?
そう思うと、1塁側ベンチで彼女たちと席を並べている事すら辛く
なる花穂だった。憔悴しきり、瞳に涙さえ滲ませながら、ベンチへ
帰る花穂。口々に慰めの声をかけてくれる姉たちだったが、そんな
言葉も自分に対する蔑みにしか聞こえない。そしてそんな風に考え
てしまう自分が最も嫌いになる花穂。いけない、こんなことじゃ。
笑って笑って花穂。でも・・・

爺や5「すたーいく、わん!」

 遠くから主審のコールが聞こえてくる。どうやら次打者の白雪も
あっさり料理されているようだ。可笑しいな、料理が得意な白雪ち
ゃんが、あっさり料理されているなんて。ついこんな事を考えてし
まい、次の瞬間にはそんな考えで哀れな自分の同類を探している自
分に気付き、ますます自分が嫌いになる花穂。霞み歪む視界をぐい
と拭い、今にも溢れそうだった涙を右手で拭くと、自分を気遣う姉
たちへ無理に笑顔を向ける花穂。しっかりしなくちゃ、私はみんな
のチアガールなんだから。あれ、だけど、みんな元気が出ないみた
い。どうしたのかな、こんなに私は笑っているのに。

爺や5「すたーいく、つー!」

 ほらほらみんな、花穂はこんなに元気なんだから。こんなに笑っ
ていられるんだから。だからみんなも元気を出して。にこにこと笑
顔を皆に向ける花穂。だが、誰も笑おうとしない。おかしいな、お
かしいな、いつもなら私の向ける笑顔に、みんな笑ってくれるのに。

爺や5「すたーいく、すりー! ばったー、あうっ!」

 ほらみんな、笑って笑って。あれ?白雪ちゃんも三振しちゃった
の?うーん残念だったね、でも次はきっと打てるよ、大丈夫、大丈
夫だって私も三振だったんだものでも次は打てるんだからみんなと
一緒にうてるんだから点もはいるんだからだからみんなわらってわ
らってげんきでいこうかほはみんなのおうえんだんだよげんきがで
ないとかほもげんきがなくなっちゃうわらってわらって

白雪 「花穂ちゃん・・・」

 どうしたのしらゆきちゃんげんきないのだったらかほのげんきを
あげるだからしらゆきちゃんもいつもみたいにわらってわらってほ
らかほもわらうからみんなといっしょにわらうからだから

白雪 「花穂ちゃん・・・どうして・・・」

 ほぉらわらってわらってかほはげんきみんなもげんきかほがわら
えばみんなもわらうかほのおうえんがみんなをげんきになればかほ
もげんきになっておうえんしなきゃいけないのげんきでいなきゃい
けないのかほはげんきみんなもげんきかほがわらえばみんなもわら

白雪 「花穂ちゃん・・・そんなに悲しいの?」

えばみんなもわらうかほのおうえんがみんなをげんきになればかほ
もげんきになっておうえんしなきゃいけないのげんきでいなきゃい
けないのかほはげんきみんなもげんきかほがわらえばみんなもわら

白雪 「花穂ちゃん!」

 ずるずると引きずりながら帰ってきた右手のバットを投げ捨て、
白雪はぎゅ、と花穂を抱きしめる。大きく、何度も何度も花穂の名
前を呼びながら力いっぱい何度も何度も抱きしめる。だが、しかし、





 にこにこと微笑を浮かべて、





 滔滔と流す涙を拭いもせずにいた花穂の、





 瞳に、光は戻ってこなかった。





 遠くから主審の告げるバッターアウトのコールが聞こえてくる。
どうやら第3打者の衛もあっさり三振に沈んだらしい。それはそう
だろう。気遣う姉たちへ最初は笑い答えていた花穂。しかしどうも
様子がおかしい。それに最初に気付いたのは亞里亞だった。年代が
近いだけに、そして最も「閉じた心」に理解が深いだけに。彼女の
ゆったりとした言葉に愕然とした姉たちだったが、正鵠を突いてい
る事は間違いない。これを見たまま打席に向かった衛がバッティン
グに集中できなかったから、碌に憑依もできなかったからと言って、
誰が責められようか。

美奈子「どうしたの? まさか、さっきの打席で?」

 チェンジが宣告されても花穂を囲んだまま動きを見せなかった
1塁側ベンチの様子がおかしい事に気付いたセーラーチームが此方
を覗きに来た。最も心配そうな顔をしているのは美奈子。おろおろ
と花穂の様子を話す咲耶の言葉と、そして光を失ったままの虚ろな
目付きな侭に虚ろな微笑を浮かべるだけの花穂の様子に愕然とする
セーラーチーム。わなわなと自分の口に手をあてた美奈子が言う。

美奈子「私のせいだ・・・私が、あんな球を投げなければ・・・
    私のせいだ、私の、私の!私のぉ!」

 ぱぁん!

 ぱちくり、と大きな瞳を瞬かせる美奈子。首を傾いだまま呆然と
する。頬が熱い。見れば、凛然とした厳しい顔で、振り下ろした掌
をそのままに、仲間が其処にいた。





 まことが。





まこと「しっかりしな!美奈子ちゃん。今はそんなこと言っている
    時じゃないし、そんな事考えちゃ駄目。判るね。」

 まことが厳しい顔のまま、美奈子を諌める。

四葉 「そうデスよ、美奈子さん。美奈子さんがそんな事、考える
    事ないデス。それより、今は花穂ちゃんを。」

 四葉がまことに続く。他の仲間の言葉なら美奈子も言い返してい
たろう。が、この二人に言われては黙るしかない美奈子だった。

はるか「しかし、このままはまずいな。」
みちる「そうね。野球なんかやってる場合じゃないわ。」
せつな「病院より自分の部屋の方が良さそうです。早く運びましょう。」
咲耶 「あ、ならば此方です。」
春歌 「さ、花穂ちゃん。参りましょう、部屋に帰るのですよ。」

 皆で花穂を案じながら、そのまま3塁側ベンチ裏へ花穂を連れて
ゆこうとした。唯々諾々と、乾いた微笑を凍りつかせたまま、誘わ
れるがままに連れられる花穂。既に5回裏を終了しており試合とし
ては成立、このままシスプリチームの勝利が確定する・・・試合が
終われば。だが。





うさぎ「待って、みんな。」





 と、其処に声が掛かる。ふと振り返れば、そこにいたのはうさぎ。
花穂が心配でたまらないと言った表情のまま、春歌と白雪に抱きか
かえられる様にして連れ去られる花穂を見ている。

レイ 「うさぎ、何を」

 また喧々と言いつのり掛けたレイだったが、ふわっと肩口を押さ
れ、止められた。振り返ると、亜美が自分を止めているのが判った。
自分を見ずにうさぎだけを見ている亜美が。彼女の真剣な眼差しに、
うさぎを再び見返すレイ。と、漸く気付く。あれは。あのうさぎは。
光るドレスもティアラも無い、薄汚れたユニフォーム姿。だけど…。





レイ 「・・・クィーン・・・」

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また長くなりましたので切ります(^^ゞ。続きはこの後直ぐ。では。
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