そんなに急でもないけど登り道が随分長く続いていた。山の中とい
うよりは、ふつうな農村の風景と里山があるだけ、ちょっとした下
り坂もあるけどこれが有名な三国峠とは思えないので、おたのしみ
はまだ先のことなのだろう。
そんな道端に旅行中の格好をした少女(自称)が休んでいた。傍ら
にはランドナ(自転車、ただし空を飛ばないものだけをさす)がス
タンドを立てている。
ランドナ(自転車、ただし空を飛ばないものだけをさす)はなぜか
しくしくと泣いていた。
「どうしたホクナン、まだ三国峠は先だぞ
 こんなところで弱音をはいてどうする」
少女(自称)はなだめるような口調でホクナンと呼ばれたランドナ
(自転車、ただし空を飛ばないものだけをさす)に話し掛けた。
「いや、別に僕は自転車だから疲れもないんだけど
 こんどの役は喋る自転車かよ...
 と思うと情けなくて泣いていたのです」
「たしかにひどい配役だな」
「つーか、ムエはあぶねーよ
 こんな自転車道路どころか歩道すら充分じゃない道」
「しかし舗装してない道は辛いし
 ホクナンだってガタガタになっちゃうぞ」
「そうかそれもやだな」
二人の会話が途切れる。山のほうから聞こえてくる聴きなれない音
色の鳥のさえずりがそよかぜにのり流れてくる。
ふとなにかを思い出したかのようにホクナンが喋りだす。
「いま気が付いた
 僕すげー羨望のまとかもしれない
 そう考えたらうれしいかも」
咄嗟に何かに気が付いた少女(自称)ムエはそばにあった樽の漬物
石にでも使えそうな岩を持ち上げてホクナンめがけて投げつけた。
がっちゃーんと壮絶な音がしてランドナ(自転車、ただし空を飛ば
ないものだけをさす)は大破した。
「今回は事故でランドナ(自転車、ただし空を飛ばないものだけを
 さす)が壊れたのでここで中止!」
「事故じゃないじゃん」

少女(自称)は壊れたランドナ(自転車、ただし空を飛ばないもの
だけをさす)をずるずる引きずって来た坂を下り去っていった。

広告:
 水野夢絵が歌うシングルCD『三国三国にしてあげる』
 予約受付中です。
 (つーわけなので水野さん歌ってください歌詞は適当でいいです
  音源はほくなんさんが持っていると思うのでそっちから)

-- 
のりたま@盆休み前に歌詞つくったけど
     紛失してしまいました、わははっ、覚えてもいない