水野@元秋田です。

いよいよ最終話まであと1日(テレビ神奈川の場合)と迫ったD.C.II S.S.。
その最終話予想……と称した妄想がいろいろ頭の中をよぎって,
ついつい文章化してしまいました。

妄想の量に対し作文が遅いため,
途中までしかできていないんですけど,
ひとまず投稿します。
本当の最終話を観てから続き作るかも。


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---- D.C.II S.S. 〜ダ・カーポII セカンドシーズン〜 ----
  --------     アナザー最終話 (不完全版)     --------

0.
義之が消えて暫くの時が経ち, 3年生の卒業パーティの準備も
そろそろ始まろうかという頃。
誰もが何事もなかったかのように毎日を過ごしている。
風見学園本校2年3組・朝倉音姫ただ一人を除いて――

悲しみに押し潰されてはいられなかった。
落ち込んでいる暇はなかった。
『一身同体』とまで誓い合った義之を失った事は,
音姫にとって命を失ったにも等しいほどの苦しみを与え続けていたが,
由夢を, まゆきを, いつまでも心配させる訳にはいかなかった。
何も知らない, 憶えていない二人に, 迷惑はかけられない。

家では家事を。
学校では学業と生徒会活動を。
すべてが今までと同じようにはできていないかもしれない。
それでも音姫は, 気丈なふりを続けた。
何かに没頭していれば, 義之の事を思い出さなくて済むから。
枕を濡らすのは, 寝ている時だけで良い。


1.
風見学園付属3年3組。
このクラスの生徒達も, いつも通りに日々を過ごしていた。
ほんの数日前より同級生が1人欠けている事に気付かないまま。

音姫はあまりこのクラスには近付きたくなかった。
そもそも義之が居なければ, このクラスの生徒達と知り合う機会は
ほとんどなかったのだ。
誰かの顔を見る度に, 否が応でも義之の事を思い出させられてしまう。

しかしこの日の昼休みは, 何の因果か3年3組の前を通ってしまった。
そして, 義之の友人達――だった面々――が何やら集まって騒いでいるのが
目に付いてしまった。
……行かなきゃ。
そうは思っても, 音姫は彼女達の様子から目が離せなかった。

 茜 「小恋ちゃん, 本っ当ーに, 解んないの?」
 杏 「どう見ても, ただならぬ関係としか, 思えないけど」
小恋「はあっ, もう, 何度も言ってるでしょ? 全然見覚えないんだってば」

どうやら, 写真らしきものを見ながら,
写っている人物について議論しているらしい。
小恋と親しくしているらしいのだが, 肝腎の小恋は憶えがないようだ。

 渉 「そういうお前らも一緒に写ってんじゃねーか。俺もだけど」
杉並「憶えがないのなら, 他人だろう。しかし……俺も一緒に居るというのは,
      どういうことだ?」
 茜 「あーんもう何なのよこれー! 心霊写真!?」
小恋「あ, 茜, やめてよ……」
 杏 「心霊, というには鮮明すぎるし, 明るすぎるわね」

小恋だけじゃない, 全員が写っていたようだ。
――まさか。
思わず音姫は, 教室に足を踏み入れてしまっていた。

 渉 「あ, 音姫先輩。ちわーっす」
音姫「あの……その写真って……」
 茜 「これ, 小恋ちゃんが家から持って来たんです」
小恋「去年の体育祭の時の写真の筈なんですけど, 知らない人が写ってて……」
 杏 「知らないのに, どう見ても恋人同士にしか見えない」
杉並「うむ, 実に不可解だ。不可解イコール興味深い!」

――そう。
その写真は, 去年の体育祭で, 小恋と義之が撮った写真だった。
恋人同士にしか見えないのは当然で, その頃二人は間違いなく恋人だったのだ。
そして, 一緒に写っている生徒達も, みんな義之の友人だったのだ。

なのに。
今, その写真を見ている5人は, 誰も義之の事を知らない。
憶えていない。
こんなに幸せそうな笑顔でいた小恋ですら。

小恋「ななかも, 知らないって言ってたし……」
 茜 「誰も知らなさすぎて, 却って引っかかるのよねえ。
      こんな事ってあるの? 不自然すぎない?」
 渉 「音姫先輩もこいつに見覚えありません? ……音姫先輩?」

音姫「……ごめんなさい, 判らない!」

居たたまれない気持ちになって, 音姫は逃げ出した。


2.
必死で堪えたが, 溢れる涙を止められなかった。
恥も外聞も無く生徒達を掻き分け, 音姫は廊下を走った。
少しでも3年3組から遠ざかりたかった。
なぜあそこへ行ってしまったのだろう。
苦しみが増すばかりだと, 判っていた筈なのに。

廊下の角で, 向こうから来た影とぶつかりそうになった。

まゆき「おっと! ……音姫?」
 音姫 「まゆき……」

どうしてこうも間が悪いのだろう。
心配をかけたくない一人であるまゆきに, よりによってこんな時に会うなんて。

 音姫 「ごめんなさい, まゆき。何でもないから……」
まゆき「何でもないって, そんな顔しといて, 信じられる訳ないでしょう。
        何があったのよ?」
 音姫 「何でも, ないから……本当に, 何でもないから……」

言えない。
義之の事も, 自分の事も, 言えない。
親友のまゆきだからといって, 言える訳が無い。
何故なら, まゆきも義之のことを憶えていないのだから。

まゆき「はあ……話したくないなら, 無理に話せとは言わないけどね。
        天枷さんの時といい, 最近音姫ってばあたしを頼ってくれないじゃない。
        一人で全部抱え込まないで, 少しは親友を信じてくれないかな。
        一人は辛いでしょ?」

まゆきの気持ちは嬉しい。
秘密ばかりの自分を今でも親友と呼んでくれる。
そんなまゆきに, やっぱり本当の事を言えない自分が嫌になる。
……できないよ, この事は, 相談なんて。

まゆき「……しょうがないなあ。
        話せるようになったら話してよ。
        たとえ天地がひっくり返るような事だったとしても,
        あたしは必ず音姫の味方をするから。それだけ憶えておいて」
 音姫 「ごめんなさい, ……ありがとう」

嬉しい。
だけど, やっぱり居たたまれない。


3.
音姫は学園長室に来ていた。
魔法使いの大先輩, さくらの部屋だ。
だが今, さくらは居ない。

音姫「さくらさん。
      私, どうしたら良いんですか?
      弟くんが消えてしまって, みんなが弟くんの事を忘れてしまって――」

しかし, 音姫の問いに答える声はない。
部屋の主はもう居ないのだ。
自分の魔法の責任をとるため, さくらは魔法の桜の木と同化してしまった。

音姫「――誰も憶えていなくて, 私だけが憶えていて。
      なのに, 写真が出て来て。
      ううん, 写真だけじゃない。この学校には, 家にも,
      この島全部, 弟くんの思い出でいっぱい――」

一人しか居ない部屋に, 音姫の震える声が響く。
俯いた瞳からこぼれた涙が, 机の上に浸みを作る。

音姫「――いっそみんなと一緒に忘れられれば,
      こんな苦しい思いをしなくても済んだのに。
      どうして, 私だけ忘れられないの?
      私が魔法使いだから?
      事件を沢山起こして, 弟くんを助けられなくて,
      弟くんを忘れることもできなくて……
      そんなものが魔法なの?
      魔法って一体何なの!?」

かつて『正義の魔法使い』として, 一人孤独に初音島を支えていた音姫。
そんな音姫にできた唯一無二, 『一身同体』の仲間が, 同じ魔法使いの義之だった。
まゆきが言った通り, 一人は辛い。
特に, 二人でいる事を知ってしまってからは。

音姫「もう嫌だよ……
      もう, ここに居たくないよ!
      弟くんの, 思い出の無いところに行きたい……!」

    「そんな事を, 言っちゃ駄目だ」

音姫が叫んだ時, 突然背後から声が上がった。
魔法の事まで口走っていたから, 聞かれてしまったかと慌てて振り返ると,
そこには帽子を被り赤いマフラーを巻いた少女が立っていた。

音姫「天枷さん……?」

天枷美夏。数ヶ月前, ほんの一時期だけ風見学園に通い, 去っていった少女。
その正体は, 現代では唯一であろう, 『心』を抑制されていないロボットだ。
学園を『卒業』した後は天枷研究所に戻り, 時々水越先生を通じて
様子を聞くくらいだったのだが, 何故突然学校に来たのだろう?

美夏「音姫先輩が桜内の事を憶えているのには意味がある。
      忘れたいだなんて, そんな事を言っちゃ駄目だ。
      そんな事をされたら, 美夏が一人で憶えていることに
      なってしまうではないか。美夏も一人きりにはなりたくないぞ」
音姫「天枷さん……! あなた, 弟くんの事を, 憶えてるの!?」
美夏「美夏はロボットだからな。人間とは記憶の構造が違う。
      写真や手紙がそのまま残るのと同じなんだ。
      『桜内義之という人間が居た』という事実そのものまでは
      いくら魔法でも消せはない。そういうことだそうだ」

音姫はますます驚いた。『心』を持つロボットだとは知っていたが,
まるで魔法の事も知っているかのようではないか。
以前学校に居た頃は, そんな様子などまったく無かったのに。

音姫「天枷さん, どうして魔法の事を……?」
美夏「所長の友達という人から教えてもらった。
      最近, 水越先生となんだか話が食い違うようになったから,
      おかしいと思っていたらその人が,
      みんなが桜内の事を忘れたというじゃないか。
      魔法で生み出された桜内が消えたからだと。
      憶えているのは音姫先輩だけだ, と。
      最初はまさかと思ったが, 実際桜は枯れているし,
      学園長は居なくなってるし, ……それにここで,
      音姫先輩は泣いているし。
      魔法とか理屈は良く解らないが, 状況は理解してる」

自分だけじゃなかった。
義之のように音姫を支えてくれる人ではないけれど,
義之の事を共に語り合える人が居た。
音姫は泣いた。
美夏に縋り付いて泣いた。


4.
美夏「これも聞いた話だけどな。
      昔, 魔法の力で引き裂かれた恋人達が居たんだそうだ。
      お互いが恋人である事を忘れ, その間に他の人から想いを寄せられたんだが,
      二人が恋人だったという事実は消えず, 最後には魔法に打ち勝って
      また結ばれたんだとか」

音姫がようやく落ち着いてから, 美夏は話を続けた。
人の想いは魔法を超える, という話は, 音姫も昔教わった憶えがある。
誰からだっただろう?

美夏「『桜内義之』が居たのも, 間違いのない事実だろう?
      記憶も写真も, 何もかもが無くなってしまったのならともかく,
      音姫先輩は沢山持っているじゃないか。
      忘れなければ, また取り戻せる」
音姫「でも, 弟くんは, 魔法で消されたんじゃなくて,
      そもそも魔法で作られた命だったのよ?
      魔法が解けたから, ……消えてしまったの。
      それなのに取り戻せるなんて……」
美夏「作られた命という意味では, 美夏も桜内と同じだ。
      学校には居られなくなったが, みんなが友達になってくれた。
      もう生徒ではないけれど, こうして友達に会いに来る事もできる。
      想いが魔法に勝つというのなら, これだけ音姫先輩に想われているんだ,
      桜内だって戻ってくるさ!」

根拠など無いだろう。
しかし美夏の言葉は, 折れかけていた音姫の心を支え止めた。
そう, 義之は戻って来る。
必ず取り戻す。
自分がそう信じないでいたら, どうして願いが叶う筈があるだろうか。

音姫「信じなくちゃ, ね。弟くんの事。
      必ず帰って来るって。
      よおし, 弟くんを取り戻す方法, 絶対見付けるぞ!」
美夏「その意気だ, 音姫先輩!」

ようやく生気を取り戻した音姫。
美夏と一緒にガッツポーズを決めると, ――お腹が鳴った。
そういえば, 今は昼休みだった。

美夏「食堂, 行こうか。
      実は美夏もまだ何も食べてない」
音姫「そ, そうだね……」

随分久しぶりに笑った気がする。


4.
美夏のことは学校中の生徒が知っているので,
食堂へ行くまでの間も声をかけられる事が多かった。
ちょっと時間ができたから遊びにきたんだ,
すぐ帰るからあまり大騒ぎしないでくれ,
次は出入り禁止にでもされたらたまらないからな,
などと美夏は適当にごまかし, 音姫と一緒に歩いた。

食堂と言っても音姫は弁当持参なので,
美夏がきつねうどんとバナナを注文するだけである。
流石にここでは人が多いので, 二人は他愛もない話題に留めた。
むしろ美夏がロボットである事を隠す必要が無いため,
以前はできなかった研究所での話などが平気でできる。

ななか「あれー? 美夏ちゃんじゃない。来てたの?」
 美夏 「おー, ななか, 久しぶり」

先に食事を済ませたらしい, ななかが声をかけてきた。
音姫・ななか・美夏と有名人が揃ったせいで, 周囲が騒々しい。

 美夏 「またななかの歌が聴いてみたいな。
        今日の放課後, 軽音部はあるのか?」
ななか「うん, 練習やってるよ。
        美夏ちゃんが来たら, 小恋も板橋君も喜ぶと思うから,
        きっと来てよ!」
 美夏 「判った。
        楽しみだな, 『卒業』の時以来か。
        そういえば, 今度はななか達の卒業パーティがあるし,
        練習にも力が入っているんだろうな」

数ヶ月前, 美夏の『卒業』式の時,
準備期間がほとんど無かったにも関わらず,
ななか達軽音部は本番の卒業記念パーティにも劣らない
生演奏を披露していた。
そして季節は巡り, 本来の卒業式が近付いているのだ。
ななか達が付属を卒業し本校に進学する。

ななか「うん……でもメンバーが足りなくて。
        美夏ちゃんの時にやった曲, ギター無しだと難しいのよ。
        今から作曲するんじゃ間に合いそうにないし……
        本番をカバーで妥協はしたくなかったんだけどなあ」

何気なくななかが口にした言葉に, 音姫と美夏は顔を見合わせた。
そうだ, メンバーが足りずに困っていた軽音部に,
助っ人で入ったギター担当。それも義之だった。

 音姫 「白河さん!
        天枷さんの卒業記念パーティの時,
        確かにその曲を演奏したのよね!?」
ななか「えっ, どっ, どうしたの音姫先輩, 突然!?
        ……そりゃ, 間違いなく演奏しましたよ。
        音姫先輩だって聴いてたじゃないですか」
 美夏 「つまり, その時はギター担当も居たんだよな!?」
ななか「うん。……あれ? 誰だっけ?
        居たのは間違いないんだけど……
        え, どうして思い出せないの私!?」

頭を抱えるななか。
義之の記憶は無くなっている。
だが, 義之が居たという証拠は残っている。
小恋が写真を持っていたのと同じだ。
しかしななかの場合, 物証ではなく自分自身の記憶が証拠になっている。
――思い出せるかもしれない。

 美夏 「ななか, それは……」
 音姫 「待って天枷さん。
        ……白河さん, 今日の軽音部, 他の人も誘える?
        月島さんと板橋君だけじゃなくて, 花咲さんに雪村さん,
        それに沢井さんと, できれば杉並君も。
        みんなにとても大切な話があるの」
ななか「え, ええ, 声かけてみます。
        でも, 一体何なんですか?」

集まった時に話すから。
きっと全員集めてね。
そう言って, 音姫と美夏はななかと別れた。

音姫も, まゆきと由夢を呼びに行った。
美夏には, 水越先生を呼びに行ってもらった。
色々忙しいだろうから, 来られるかどうかは判らないけど。


5.
----(すみません, ここからはまだ文章化できていません)----

放課後までの間, 音姫は改めて考えた。

魔法は人を幸せにするもの。
幸せにできない, 幸せになれないのなら, 魔法なんか要らない……
一時はそう考えた。
短絡的だったと, 今は思う。
だけど, 魔法の在り方を, 考え直すべき時が来ているのではないか。
今までとは違う, 人と魔法の付き合い方をする時が。

正義の魔法使いは, 影からみんなを守らなければならないと思っていた。
だけど, 一人ですべてを抱え込むのは辛い。
義之が居てくれて, 自分は救われた。
義之が居なくなって, 自分は絶望した。
だけど, 前提が間違っていたんじゃないか。
自分は正義のヒロインなんかじゃない。
一人で全部抱え込むなんてできない。
二人なら耐えられた。三人ならもっと耐えられる。
義之を取り戻すのも, 初音島の魔法の監視も,
一緒にやって欲しいとまでは言わないけど, みんなに知っていて欲しい。

音姫は, 義之の事だけでなく, 魔法の事もみんなに話すことを決めた。

(未了)
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----(更にここからは, ネタ出しだけで粗筋にもなってません)----

美夏の口調, 特に他人の呼び方, 忘れてる〜〜〜〜!

杏は美夏の事を憶えていません。
「世界征服ノート」が残っていれば, それを切っ掛けに話ができるかと
思ったんだけど, D.C.II最終話で破棄しちゃってますから……
でもノートを取るというのは, 杏の救済になるかも。
ef - a tale of memories.の千尋みたいに。

「所長の友達」というのはアイシアの事です。
さくらに呼ばれて初音島へ来て, 音姫を救える人として美夏を見出し,
現状を伝えたという事にしています。
本人は今何をしているかと言うと, ……桜を相手に何かするのかなあ。
まさかまた咲かせたりはしないだろうけど……

「恋人だった記憶を無くした男女」というのは, 勿論D.C.S.S.の純一と音夢。
ちなみに非公式新聞にも載っていますので, 実は杉並もこの話を知ってます。
但し「朝倉が誰を選ぶかトトカルチョ」記事の続報という扱いです(^^;;;

由夢は実は, 義之が帰って来る事も予知しています。
但し, その時自分に義之の記憶が無い,
「帰って来たのを迎えるけど誰なのか知らない」という状態である事も
知ってしまっているため, 忘却前には絶望し,
忘却後には無関心なのです。


……これをどう組み合わせれば結末に到れるだろう……


-- 
水野夢絵@元秋田 <mwe@ccsf.jp>
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