Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)
石崎です。
例の妄想第172話(その20)です。
# また、2週程空けちゃいました。^^;;;;
Keita Ishizakiさんの<bnvq06$acm$1@news01dd.so-net.ne.jp>の
フォロー記事にぶらさげる形になっています。
# 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から
# 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。
# そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。
(その1)は<bnvv4r$p9c$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その2)は<bol12s$5cr$1@news01cj.so-net.ne.jp>から
(その3)は<bpanfp$235$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その4)は<bpsnob$hnq$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その5)は<bretjg$k62$1@news01dj.so-net.ne.jp>から
(その6)は<budosi$mf3$1@news01dg.so-net.ne.jp>から
(その7)は<bvibt5$6bs$1@news01cb.so-net.ne.jp>から
(その8)は<c05ag2$aqq$1@news01di.so-net.ne.jp>から
(その9)は<c12ghi$g3q$1@news01de.so-net.ne.jp>から
(その10)は<newscache$sfa7uh$klk$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その11)は<newscache$9pfavh$4kg$1@news01a.so-net.ne.jp>から
(その12)は<newscache$t8l1xh$f2h$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その13)は<newscache$d6j5yh$q4j$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その14)は<newscache$sjiiyh$nsj$1@news01d.so-net.ne.jp>から
(その15)は<newscache$vkkgzh$hqd$1@news01b.so-net.ne.jp>から
(その16)は <newscache$mxh60i$oqb$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その17)は<newscache$03mh0i$c1i$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その18)は<newscache$n8rc1i$7l8$1@news01e.so-net.ne.jp>から
(その19)は<newscache$bmku2i$ss9$1@news01e.so-net.ne.jp>からどうぞ
^L
★神風・愛の劇場第172話『弱き者』(その20)
●水無月ギャラクシーワールド・ジェットコースター・『ネプトゥヌス』
ジャンヌが破壊したと思われるジェットコースター『ネプトゥヌス』の入り口に辿り着
いた氷室率いるジャンヌ特捜班。
ジャンヌが未だそこに居ると知り、早速中に入ろうとしたところ、警備員達に押し止め
られていました。
「ここを開けろ!」
「この落雷です。危険ですのでお下がり下さい」
頬に傷のある警備員は、そう言うと氷室達を外へと押し出そうとしました。
「我々は桃栗警察署のジャンヌ特捜班の者だ! ジャンヌがそこにいるのは判っているだ
ろう!」
そう言い、海の方を指さした氷室は絶句します。
これまでに無かったことに、ジャンヌが空中に静止していたからです。
そしてジャンヌの周りには雷が何度も落ちていました。
「警部!」
双眼鏡で海の方を見ていた春田が、警告の声を発します。
「どうした!」
「海に、誰かいます!」
春田に渡された双眼鏡で見ると、確かに海に誰かが居るようでした。
暗がりで顔形は良く判りませんが、氷室にはそれがまろんに見えて仕方がありませんで
した。
その視界が、再び雷光によって遮られます。
「うわっ」
「大丈夫なのか?」
海面に漂っている人影は、どうやら泳ごうと藻掻いている様子でした。
彼女(氷室はその人影が女性だと確信していたのです)の近くに落雷があり、感電死し
てもおかしくありませんでしたが、彼女はとにかく生きている様子でした。
「こりゃあいかん。早く、あの子を救出…」
しかし、氷室達はその少女を救出することはありませんでした。
*
「エリスの奴、しくじったな」
押しかけて来た警官達が地面で動かなくなった後。
警備員の服装をした元人間達の指揮官・オットーは呟きます。
その前にも予兆があったのですが、警官達の姿を見て確信しました。
もっとも、予兆の方は直ぐに消えてしまったのですが、こちらについては深追い不要と
ノインから指示が出ていました。
「隊長。撤収命令が出たそうです」
従兵として使っている少年──実際の年齢は少年どころではありません──が、そう彼
に呼びかけました。
「了解。中隊総員には隊長──救出隊を収容後、予定の行動を取れと命令。それで判るは
ずだ。本部小隊はこの場で待機」
「はっ」
やはり計画に無理があったのでは無いか。
エリスは出来ると言ったが、指示が細かすぎた。
そんなことを彼は思い、そしてこう呟きました。
「あの嬢ちゃん達。どうして自分達だけでやろうとするかな」
そう呟くと、オットーは従兵の駆けて行った先──コースターの駅舎──へと歩いて行
くのでした。
●水無月ギャラクシーワールド・ジェットコースター『マルス』
その少女と獣は、何度もエリスの領域に進み、そして引き返していました。
「学習能力が無いの?」
少女達の姿を見て、エリスは呆れたように言いました。
「(なら、もう少し“能力”を強めて…)」
エリスが次に少女に打ち込むべき暗示について考えていると、視界の隅で少女と黄金の
獣の方向に今一人、接近しているのが見えました。
銀色の髪のその青年も背中に翼を生やしているところをみると、彼も魔法使いか、さも
なくば人間では無いのでしょう。
彼は明らかに自分の姿を認めていて、それでいて自分には何もする事無く、少女と合流
を計っているようでした。
仕掛けるか。一瞬思い、エリスは踏みとどまります。
この場から動いてしまっては、自分の能力の効果が薄れかねません。
エリスの役目はあくまでも、神の御子を襲撃する作戦。
その戦場の場の支配だから。
青年はやがて少女と合流しました。
青年は自分の方を指さして、それに対して少女は頷きます。
少女はノインの使う呪符のようなカードを手にし、何事か呟くと彼女の足下が光ります。
少女はカードを空中に回転させながら投げ、手にしていた杖を掲げました。
カードは杖の上で静止し、そして光と共に消えました。
そのカードが何の意味を持つ物なのか。
ノインの呪符と同じように、何らかの術をかけているのでしょう。
そしてその対象は恐らく自分。
そう思い、エリスは身構えました。
「……?」
しかし、エリスの身には何事も起きませんでした。
何かが向かってくる気配もありません。
不思議に感じて少女を見ると、獣と青年と共に『ネプトゥヌス』の方に向けて前進を再
開していました。それまでよりは大分ゆっくりとした速度でしたが、その前進は止まるこ
とがありません。
「いけない」
そう呟くと、エリスはその場から跳躍しました。
一端地面に着地し、再度の跳躍。
その際、着地点にあった売店の天井に大穴を空けていますが、エリスは気にすることは
ありません。
エリスの視界の中で、少女達の姿が段々と大きくなりました。
青年は両手をこちらに向けて身構え、獣は口を開き、自分に対して攻撃を仕掛けようと
身構えているのが見えました。
同時に、少女が驚愕と恐怖が入り交じった表情を見せているのも見えます。
攻撃があるものと思い、エリスは空中で身構えます。
「攻撃しちゃ駄目!」
しかし恐怖に震えているはずの少女は、そう叫んで両手を伸ばし、攻撃を制止していま
した。
一体何故? そう思う間もなく少女はもう目の前です。
「(ごめん、ちょっと痛いかも)」
心の中で詫びつつ、少女の身体を蹴り飛ばそうとしました。
もちろん、手加減ならぬ足加減をして。
「え?」
しかし、エリスの足は少女に届く前に遮られました。
それにぶつかった瞬間、少女の周囲が光り何かの紋様が現れました。
「障壁ぃ!?」
構わず、障壁毎少女をエリスは蹴飛ばしました。
「ほぇぇぇぇ!」
「さくら!」
少女の悲鳴を背中に聞きながら、エリスは着地します。
エリスが見上げると、早くも少女は空中で体勢を立て直していました。
「ちっ」
再び、エリスは空中へ跳躍します。
銀髪の青年の両手の間が光り、無数の礫とも思える攻撃──詳細は不明──が放たれま
す。同時に、金色の獣は炎を吐きました。
直撃したところで、どうということは無い風に思えましたが、服を駄目にしたくなかっ
たので魔術でそれを防ぎます。
「この程度!?」
空中で体勢を立て直したエリス。
この時、無意識のうちに種としての力も使っているのですが、この時ばかりは任務の方
を優先していました。
見ると、少女が杖を掲げ再び何かの呪文を唱えている最中でした。
「シールド!」
「(盾? すると防御魔術? そういうことなら遠慮は要らないか)」
そう感じたエリスは、全力で障壁毎少女を蹴飛ばしました。
「とりゃあっ」
「ほぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ…」
少女の悲鳴が段々遠ざかって行き、やがてそれは暗闇の海に消えました。
「ありゃ…。大丈夫かな」
着地したエリス。
何度かの跳躍の内に、エリスは海の直ぐ側にまで来ていました。
勢いとは言え、少女を海の中に叩き込んでしまったことで、エリスは少々慌てていまし
た。
「生きてる…よね、よね?」
恐る恐る、海を覗き込むエリス。
その彼女の前の海面が盛り上がり、水流が正確に彼女に向け押し寄せました。
「わあっ」
龍族──本人は認めていませんが──の力を以てしても、エリスは水圧の力でその場に
立っていることは出来ずに地面に打ち倒されました。
「痛てて…」
自然の波で無いことは、波が直ぐに消えてしまったことで判ります。
そうであるとすれば。
「良かったぁ」
倒れたままの状態で空を見上げると、少女が自分を見下ろしていました。
それを見て、エリスは安堵のため息をつきました。
しかし、安堵するばかりではありません。
少女の位置を確認して起き上がると、再び跳躍し少女を狙います。
しかし、少女はエリスの攻撃を只待っていることはしませんでした。
少女はひらりとエリスの攻撃を回避、再びカードを取り出し囁きました。
「風よ、戒めの鎖となれ」
空中に魔法陣が描かれ、その上に立つ形で少女は杖を掲げます。
取り出したカードを空中に投げると、それは回転しつつ杖の上で静止。
そして少女はそのカードの名を口にします。
「ウィンディ!」
一瞬、羽根を生やした女性の姿がエリスには見えました。
次の瞬間、エリスの身体の周りに風がまとわりついていました。
そしてエリスの身体は地面に落下せず、更に持ち上げられて行きました。
「何、これ。竜巻? 違う、これは…。うわぁっ!」
エリスは少女の作り出した風により『ネプトゥヌス』とは反対側に吹き飛ばされて行き
ました。
視界がぐるぐると回転し続け、流石のエリスも目を回してしまいます。
意識が飛ぶ前、エリスの視界に大観覧車が入ります。
その扉の開いたゴンドラから先程の少女と同じ服を着た黒髪の少女が、機械を手にして
自分の方を見つめているのでした。
●水無月ギャラクシーワールド・ジェットコースター『ネプトゥヌス』
レイが神の御子──怪盗ジャンヌに加えた火炎の術による攻撃は、障壁毎彼女を包み込
み、海に落ちても炎が消えることはありませんでした。
ジャンヌの視界が奪われている隙に、レイはミナが倒れている場所へと飛んで行きまし
た。
「おい、しっかりしろ!」
ミナが倒れ込んでいる支柱と見えた場所は、通路を兼ねていました。
その上に仰向けにミナ──姿は怪盗ジャンヌ──が苦しそうに横たわっていました。
「…ごめん…ちょっと、気を抜いちゃった…」
ミナの右脇腹からは血が流れ出て白い衣装を赤く染め、身体の横で池となり下の海へと
滴り落ちていました。
治癒力が高いとは言え、こんなところまで人間と同じで無くても良いのに。
そう、レイは思います。
「しっかりしろ。今、手当てする」
治癒の術を苦手とし、ミナ任せにしていたことをこれ程悔やんだことはありません。そ
れでも、応急処置程度のことは出来ます。
「傷は浅い」
「気休めは良い…。レイ。それにしても…酷い格好ね」
上半身が殆ど下着姿となったレイのことを言っていました。
「私も油断した。とにかく、時間を稼いだ。今の内に撤退する」
そう言うと、レイはミナの身体を両手で抱えました。
ミナの傷に障らないよう、ゆっくりとした速度で浮かび上がりました。
「!」
突然、飛行することを止めたレイ。
向こう側に人間達の物らしい灯りが見えました。支柱の影に隠れ、そのままじっとして
いる内に光は明後日の方を向き、レイはため息をつきました。
レイはゆっくりとノイン達が待っている警備センターの方向へ向かおうとしたのですが、
そうは問屋が卸しませんでした。
「ち…。見逃してくれないか」
レイ達が浮かんでいる場所の左側。
そこに、このコースターの名物である海面上の水平ループがありました。
その頂点部分にジャンヌが立ち、自分たちのことを見ていました。
「!」
レイはジャンヌの姿を認識すると同時に、身体を水平方向に滑らせました。
直後、そのまま飛行を続けていれば居たであろう空間を、赤いリボンが通り過ぎます。
続いて、垂直上昇したレイ。その下では戻って来たリボンが、レイ達の方に向かって来
ているのが判りました。
「う…」
全速で回避しようとしたレイ。
しかしミナのうめき声が聞こえたために一瞬動きが鈍りました。
「しまっ…」
ジャンヌのリボンが足に絡み付き、そのままレイはジャンヌが居る場所まで勢い良く引
き寄せられて行きました。
そのままコースに叩き付けられる寸前、レイは指先から光線を放ち、ジャンヌのリボン
を焼き切ります。
そのまま脱出するには勢いがありすぎ、レイはコースにそのまま着地しました。
「どうやら、このまま行かせてはくれないようね」
そう呟くと、レイはミナの身体をコースの横にある通路上に横たえました。
その間、ジャンヌに背中を向けていましたが、不思議とジャンヌは攻撃して来ませんで
した。
「勝負!」
再び手中に剣を出し、水平ループの反対側にいるジャンヌと向き合います。
ジャンヌの顔に表情というものが消えていることにレイは気付きました。
先程の戦いでジャンヌにも一太刀ならず浴びせたため、ジャンヌの衣服もあちこち切り
裂かれた状態で肌が露出していました。
しかし、恥ずかしがるそぶりも見せず、無表情のまま手にはリボンを携え、一歩、また
一歩とジャンヌは歩み寄ってきました。
「はぁっ!」
光球を再び、ジャンヌに浴びせたレイ。
先程と同様、障壁ごとジャンヌは炎に包まれます。
しかし先程と違い、炎に包まれながらもジャンヌはしっかりとした足取りで、前進を止
めません。
「この!」
指先から光線を放ち、レイはコースターのレールを切断し、ジャンヌの足場を崩落させ
ました。しかし。
「馬鹿…な」
無くなってしまったレール。
しかし、そこに透明な床があるかのように、ジャンヌは歩いていました。
「く…来るな!」
ジャンヌを包んでいた炎はレイの予想よりも早く消えかかっていて、レイは次なる光球
を放ちました。しかし、それはジャンヌに届くよりも遙か目の前で弾け、炎も期待程は広
がりを見せませんでした。
「障壁を…広げてる…」
「ミナ?」
「もっと、攻撃して。レイ。今が…チャンス」
「判った」
レイは、ミナに言われるまま攻撃を繰り返しました。
それは全て、ジャンヌの遙か手前で弾けて消えました。
「今よ! 突撃!」
ミナのその言葉だけで、レイには十分意図が伝わりました。
「うおぉぉぉぉぉぉ!」
レイは光球を数発、前方に打ち込むと同時に剣を構え、突進しました。
光球は障壁に遮られることなく、ジャンヌを掠め、その後方で炸裂しました。
その爆風にあおられ、僅かにジャンヌがよろけます。
剣技を誇るレイであれば、その程度の隙で十分でした。
瞬時にジャンヌに近接。
リボンの懐に飛び込むと、剣でジャンヌのリボンのステッキを弾き飛ばしました。
「ミナ!」
「了解!」
ミナが怪我人ということも忘れ、レイは叫びます。
そしてミナもそれに良く応えました。
ミナが障壁を操作することでジャンヌの武器であるリボンは、海面へと落下して行きま
した。
「たぁっ!」
武器を失った相手でも、レイは全く遠慮しませんでした。
彼女相手に少しでも気を緩めることは、即、死。
そう悟っていたレイが剣を水平に振るうと、ジャンヌは後方に飛びました。
その着地点に向かい、光球が数発レイの背後から放たれます。
コースターのレールが消失し、足場を失ったジャンヌは視界から消えました。
「ミナ!」
驚いて、背後を振り返ると横たわったまま光球を発射した格好のままで、ミナが肩で息
をしているのが見えました。
「大丈夫か」
「大…丈夫」
そう言うと、親指を立てて見せました。
が、直ぐに表情を引き締め叫びました。
「レイ、後ろ!」
「!」
早くも立ち直り、音もなく背後に忍び寄って来ていたジャンヌの斬撃を辛うじてレイは
受け止めました。
ジャンヌの手には、いつの間にか再び剣が握られていました。
「嘘…」
レイとジャンヌは互いに一歩も引かず、つばぜり合いを演じていました。
それを見ながらミナは思います。
あの剣はリボンが変化したものの筈。
であるならば、私の障壁を超えて戻って来るなんてあり得ない。
「うおっ」
倒れているミナの目の前に、レイが飛ばされて来ました。
「障壁が…ミナ!」
「ごめん。気を抜いた」
レイに言い、ミナは再び集中しました。
「嘘…融合…出来ない!?」
「どうした!」
ジャンヌと対峙したまま、レイは叫びました。
「心を合わせられない」
「何だって? それじゃ、彼女は……」
「レイ!」
ジャンヌは大上段に剣を構えていました。
隙だらけの身体に、剣を打ち込むレイ。
しかし、その剣は見えない壁に阻まれました。
光球による攻撃も、もちろん不発。
その間、ジャンヌは剣を構えたまま身動き一つしていませんでした。
相変わらず、ジャンヌの顔からは表情が消えていて、レイはまるで人形を相手にしてい
るように感じます。
そしてジャンヌが遂に動きました。
その一瞬の隙に攻撃を加えるつもりだったレイ。
ジャンヌが剣を振り下ろした瞬間、レイは光球を複数放ちます。
その結果を見る前に、ジャンヌの振り下ろした剣圧による真空波と推測される攻撃がレ
イを襲いました。回避することは可能でした。しかし、レイの後ろには動くことが出来な
いミナが居るのです。
剣圧による攻撃はレイが急遽展開した障壁の威力を上回り、レイは攻撃を身体で受け止
めることになりました。
「ぐはっ」
膝をレールについたレイ。
服は切り刻まれ、下着を別にすれば裸同然の姿となっていました。
手にしていた光の剣も消えています。
しかし、そんな自分の姿よりもレイはまず確認しないといけないことがありました。
「ミナ…」
背後を振り返り、レイは唖然とします。
ミナの服──ジャンヌの服ですが──も各所で切り裂かれ、ミナは呼びかけにも応えず
ぴくりとも動きません。
「そんな…嘘でしょう? 返事してよミナ!」
ミナの方に駆け寄ろうとしたレイ。
背後に殺気を感じ、咄嗟に前方──ミナの方角に飛びました。
直後、ジャンヌが振り下ろした剣がレールを破壊しました。
剣圧のよる攻撃は今回は無く、レイに新たなダメージはありません。
「う…レイ…大丈夫……。判ったわ…」
「何が?」
「彼女の…心…暗闇……」
「もう良い。喋るな!」
「融合…するから…決めてよね」
「ああ、判ったから」
「三…二…一…」
直後、レイは最後の力を振り絞り突進しました。
最早剣を生み出す力も残っていなかったレイは、自らの拳そのものに力を乗せ、ジャン
ヌに殴りかかりました。
「うおおおおおお!」
レイの渾身の一撃は、障壁に妨げられることはありませんでした。
しかし、ジャンヌの左手が天使の力を乗せたレイの右手の拳を止めていました。
「ぐ…」
「捕まえた」
確かにその声は神の御子の声でした。
しかし、声に生気がありません。
レイの拳を掌で握りしめたジャンヌ。
只の少女の筈なのに、レイは振り解く事が出来ませんでした。
「(新体操…とかで鍛えているということか?)」
ジャンヌの腕を見て、冷静にレイは感じます。
左手で光球を放とうとしました。
しかし普段なら直ぐに作り出せる筈の光球を作り出すことが出来ません。
「(力切れってこと…)」
絶望を感じたレイ。
急にジャンヌはレイの腕を放しました。
何とか離れようと藻掻いていたレイは、後ずさりよろけます。
体勢を立て直そうとする間もなく、腹に大きな衝撃を感じ、レイはミナの倒れている場
所まで吹き飛ばされました。
「うう…」
レイが目を開けると、目の前にはミナの姿がありました。
「ミナ…ミナ!」
「レイ…。駄目…だったね。…やっぱり、二人だけじゃ……」
「ごめん。私がみんな悪かった…」
「レイの所為じゃ無いよ」
ジャンヌの足音が直ぐ側に迫っていました。
止めを刺しに来たということでしょう。
どうせ死ぬのなら、せめて最後は…。
最早立ち上がる気力すらなく、レイはレールの上を這いずって行きました。
「ミナ…」
「レイ…」
互いの手と手が合わされ、二人は覚悟を決めました。
「次の世界でも、きっと一緒」
「ああ、約束だ」
そして目を瞑り、二人でその時を待ちました。
しかし、幾ら待ってもその時は来ませんでした。
ひょっとしたら、もう二人は死んでいるのかもしれない。
そう思い、レイは目を開けました。
ああ、やっぱり私達は死んだんだ。
だって、天使が目の前に立っていて……。
「天使!?」
そう小さく叫び、レイは半身を起こしました。
「未だ死ぬのは早いですよ。お二方」
暗闇の中でも光り輝く銀色の髪。
金色の瞳と白い翼。
「ユキ!」
どこから現れたのでしょう。
何時の間にかユキがミナとレイの間に立ち、障壁でジャンヌの攻撃から二人を守ってい
るのでした。
(第172話・つづく)
主役登場(違)。次の話は明日かな(笑)。
では、また。
--
Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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