Path: ccsf.homeunix.org!CALA-MUZIK!newsfeed.media.kyoto-u.ac.jp!newsfeed2.dti.ad.jp!newsfeed1.dti.ad.jp!giga-nspixp2!feed1.sphere.ad.jp!ngate02.so-net.ne.jp!so-net.news!not-for-mail From: =?ISO-2022-JP?B?GyRCN0hCUyF3GyhC?= Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18) Date: Sun, 30 Oct 2005 00:23:16 +0900 Organization: So-net Service Lines: 611 Message-ID: References: NNTP-Posting-Host: news01e.so-net.ne.jp Mime-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=ISO-2022-JP X-Trace: news-fsa.so-net.ne.jp 1130599335 11414 192.168.20.15 (29 Oct 2005 15:22:15 GMT) X-Complaints-To: abuse@so-net.ne.jp NNTP-Posting-Date: Sat, 29 Oct 2005 15:22:15 +0000 (UTC) In-Reply-To: X-NewsReader: Datula version 1.51.09 for Windows Xref: ccsf.homeunix.org japan.anime.pretty:2840 fj.rec.animation:4641 携帯@です。 去る10月26日、神風怪盗ジャンヌのDVD-BOXが遂に発売になりました。 初回特典の携帯ストラップのあまりにショボイ出来に凹みましたが、ブックレットの方は きちんと作ってあって好印象。梅澤監督の娘(大の原作ジャンヌファン)が放映後、口を 聞いてくれたかどうかは、このDVDを観た人ならお分かりでしょうという、行間を読め と言わんばかりのコメントに爆笑。 それより以前、10月19日には、満月をさがして フルムーン ファイナルライブが発売に。 中身はファイナルライブで謳ったフルムーンの歌(単に、mycoさんの曲入れただけですが) の間に、満月達のドラマ(半年後から満月がその時のことを振り返って…ということになっ てます)が挿入されています。 種村有菜関連で発売が続いてますが、りぼん50周年記念ということなんでしょうか? # 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から # 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。 # そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。 # ……と書きつつ、実質「カードキャプターさくら」妄想であったりします。 # 今回は3回目。  それぞれの使命を帯びて、別々の場所で働いて来たさくらとまろん。  同じ日本で同じ時期に動いている二人がもしも出会ったら…という設定で、「神風・愛 の劇場」シリーズの中でも何度か二人が共演する話がありました。先々週から続く番外編 は、「神風・愛の劇場」本編にさくらちゃん達が登場した、神風・愛の劇場 第172話 において、さくらちゃん達がどのように動いていたのかを描くものです。 5回連続予定のその3です。 その1は、から、 その2は、からどうぞ。  以前のさくら&ジャンヌ妄想のことをお忘れの方は、以下からどうぞ。 ★CCさくらVS神風怪盗ジャンヌ 〜激突! 視聴率争奪戦(嘘)〜 <8fmjm7$fhl$1@news01bd.so-net.ne.jp>からのスレッド http://ccsf.homeunix.org/ccs/ccsF-list5.html#Jeanne (CCSF) ★カードキャプターさくらF 第10話「さくらとまろんと冬の海」 <9leqm1$gt3$1@news01cd.so-net.ne.jp>からのスレッド http://ccsf.homeunix.org/ccs/ccsF-list12.html#F-10 (CCSF)  既に第172話のことを忘れてしまった方は、以下から参照して頂けると幸い。 (その1)はから (その2)はから (その3)はから (その4)はから (その5)はから (その6)はから (その7)はから (その8)はから (その9)はから (その10)はから (その11)はから (その12)はから (その13)はから (その14)はから (その15)はから (その16)は から (その17)はから (その18)はから (その19)はから (その20)はから (その21)はから (その22)はから (その23)はから (その24)はからそれぞれどうぞ  それでは、「レリーズ!(封印解除)」(←実質、さくら妄想なので) ★神風・愛の劇場 番外編『さくらとまろんと遊園地』(その3) ●水無月ギャラクシーワールド上空  本来の姿を取り戻したケロちゃん──本来の姿なのでケルベロスと呼ぶべきでしょう─ ─と共に夜空に飛び出したさくらは、一旦高度を上げました。  今のさくらは友枝小の制服姿。万が一にでも、誰かに自分の顔を見られる訳には行きま せんでした。  ある程度の高度を稼いだ後、さくら達はコースターへと近づいていきます。  それにつれ、コースターの状況も明らかになりました。 「急げさくら! あのコースター、もう長く保ちそうに無い!!」 「うん!」  ジェットコースターへと飛んで行こうとしたさくら達。  ですが。 「あれ!?」  気がつくと、さくらの目には崩れ落ちたジェットコースターのコースでは無く、大観覧 車が映っていました。 「何しとんのや!」  ケルベロスの声で我に返ったさくら。  慌てて、百八十度反転してコースターへと前進を再開します。 「急げさくら!」 「うん!!」  再び、ジェットコースターへと接近しようとしました。 「ケロちゃん!」  今度は、さくらの方が先に気付いてケルベロスに声をかけました。 「あ…、又、戻っとる!?」 「もう一度!」  改めて、ジェットコースターの方へ向かおうとしたさくら達。  しかし、何度やっても結果は同じでした。 「何をしている。ケルベロス」  ユエの声がしたのは、さくら達が再びジェットコースターへと向かおうとした時でした。 「ユエか。遅かったやないか!」  さくら達がコースターに向かおうと夢中になっていた間に、いつの間にかユエが側まで 来ていました。 「避難する客のせいで、元の姿に戻れなかった。それよりも、あれを見ろ」  ユエは、先程さくらが乗ろうとしていたジェットコースター『マルス』の方を指差しま した。 「何や? コースターの上に人がおる?」  ケルベロスの声を聞き、さくらもユエの指の先、コースターの中心のロケットを眺めま した。 「本当だ。けど、良く見えないよ」 「あいつは何者や?」 「さあな。ただ、一つだけ明らかなことがある」 「何や?」 「あのコースターの辺りを中心に結界が張られているようだ」 「何やて!? 全然気づかんかった」 「役に立たない奴」 「何やて!」  馬鹿にされ、ケルベロスは怒ります。 「かなり薄い結界だからな。気づかなくても無理は無い」 「そうか。その結界があるから、コースターに行けないんだね」  そう言い、さくらは肯きました。 「少し、違うようだ。結界は通り抜けることが出来る程薄いものだ。一体何のために張っ ているものか、判らん」  ユエは首を傾げました。 「恐らくは、結界の中にわいらを先に進ませない何かがあるんやな」 「結界は、その何かを外に漏れ出さないためにあるのだろう」 「その何かって?」 「……」  沈黙してしまったユエ。  しかしすぐにケルベロスが呟きます。 「匂い…かもしれん」 「匂い?」 「さっきも、あのコースターに乗らずに引き返したな、さくら」 「うん。あ…! 蜜柑の香り」 「そう。蜜柑の香りや」 「何の話だ」 「さっき、あの子のいる辺りで蜜柑の匂いがしたの」 「あいつは匂いで人を惑わす魔法を使っているのかもしれん」 「それなら、何とかなるかも」 「成る程。試してみる価値はありそうだ。だが…」  ユエは、コースターの人影が気になる様子でそちらをじっと見ていました。 「大丈夫やて。向かってこん所を見ると、攻撃力は大したことないやろ」 「だがな」 「大丈夫だよ」  さくらはそう言うと、さくらカードを取り出し杖を縦に掲げます。  足下に魔法陣が描かれ、さくらはそのカードの名を叫びます。 「盾(SHIELD)!」  さくら達の周囲に、淡い色の障壁が展開されました。 「成る程、シールドは魔法も防ぐさかい」 「うん。万が一攻撃して来ても、盾が守ってくれるよ」 「だが、盾を張ったままで移動出来るのか?」 「だから、ゆっくりと動くの」  ゆっくりとジェットコースターへ向けて移動を再開したさくら達。  さくらを先頭にケルベロス、ユエの順番で進み、ユエは背後を警戒しつつ進みました。  その時、辺りが光ったかと思うと雷鳴が響きます。 「ほぇぇっ!!」 「これは近いで」 「こんな時に」  自然現象である雷が実は人為的に起こされたものであることも知らず、さくら達は前進 を続けました。 「ここだ。この先に結界がある」 「うん」  強力な魔力を持つさくらですら、見落としてしまいそうな僅かな気配。  ユエさんはどうして気づいたのだろうとさくらは思います。 「成る程。巧妙な結界やな」 「ケロちゃん、判るの?」 「こりゃ、余程近づかんと判らんで」  「翔」の呪文と「盾」の呪文の同時使用。「盾」は術者の大切なものから優先して守る とは言え、慎重に移動して行くさくら。 「どうやら、上手くいったようやな」  ユエが結界だと言った場所を潜り抜けても、三人はジェットコースターへ向けて飛行を 続けていました。  向こうのコースターは今にも落ちてしまいそうで、さくらは焦れったい思いを抱きます。  そればかりでなく、こうしている間にも続けざまに雷鳴。雷がコースターを直撃してい るようにさくらには見えて仕方がありませんでした。  もう少し速度を上げようか。そうさくらが声をかけようとした時です。 「さくら! 奴が来る!!」  ユエの警告の声に振り向くと、人影が丁度さくらに向けジャンプして来る所でした。そ の跳躍力と速度は、さくらの「跳(JUMP)」にも匹敵、いや上回っているように思われま した。 「さくら!!」  人影の正体が明らかになるに連れ、さくらは目を見張ります。  それは白髪──光の加減でそう見えたのです──の少女で、知世の家のお手伝いさんが 着ているようなエプロンドレス姿でした。  一見戦闘とは不釣り合いに見えるその格好。  しかし、見かけと戦闘力が別物であることをこれまでの経験でさくらは知っています。 けれど。 「攻撃しちゃ駄目!」  さくらを守ろうとそれぞれ攻撃をかけようとしたケルベロスとユエの前に立ちふさがり、 両手を広げてさくらは止めました。  二人の攻撃を通し、向こうの攻撃だけを防ぐ。  さくらにそのようなことが出来るのかについての不安があったという訳ではありません (その懸念については、後になってから気づきました)。  さくらが止めたのは、これまで戦って来たクロウカードの本体や、誰かが魔法で作り出 したモノとは違う、生命の息吹を感じたから。  そんなさくらの思いも知らず、エプロンドレスの少女はさくらに向け足を振り上げまし た。スカートが捲れ下履きが露わになるのが見えますが、その足はさくらの手前で遮られ ました。 「障壁ぃ!?」  「盾」の存在に少女は驚いた声を上げたものの、そのまま少女は足を振り抜きました。 「ほぇぇぇぇ!!」  驚いたことに少女は「盾」を足の力だけで動かしていて、さくらは自身が作り出した 「盾」に押される形で後方に飛ばされました。 「さくら!」  ケルベロスとユエが、飛ばされそうになったさくらを受け止めてくれたため、何とか空 中でさくらは体勢を立て直すことが出来ました。  さくらの手には、一枚のカード──「盾」──があり、既にシールドの効果が切れたこ とを教えてくれています。 「次、来るぞ!」  一端着地した少女は再度跳躍して、さくらに迫りつつありました。  相手の敵意が明らかとなった以上、ケルベロスとユエは遠慮無く、少女に向け攻撃を加 えます。 「ちっ」 「魔術も使えるか」  が、ケルベロス達の攻撃は少女の手前でまるで吸い込まれるように消えてしまいました。 「この程度!?」  ジャンプを繰り返していたので飛ぶことが出来ないと思われた少女。  しかし、空中に浮かんだ状態で姿勢を変更していました。 「さくら、また来るで!」 「うん! 盾(SHIELD)!!」  再び、さくらはシールドを張り直します。 「とりゃあっ!!」  少女はかけ声と共に、先程とは比べものにならない勢いで「盾」毎、さくら達を蹴り飛 ばしました。  ケルベロスとユエはさくらを助けようとしましたが、三人は盾に押されるように、暗闇 の海へと飛ばされて行くのでした。 ●水無月ギャラクシーワールド・大観覧車  この遊園地の中で最も高い場所の一つである大観覧車。  その天辺のキャビンの上にエリオル達の姿がありました。  そのキャビンの中には客が居るのですが、気づかれると面倒なので眠らせています。 「あらら。あの子達、海に飛ばされちゃったよ。どうするの?」  手を額に当て、遠くを眺めていた奈久留ことルビー・ムーンは言いました。 「大丈夫。さくらさんは、僕以外の何者にも負けることは無いよ。そう、『絶対、大丈夫 だよ』ですよ」  大きな杖を手にしたエリオルが言いました。 「どうやら、エリオルの言う通りのようですね」  スピネル・サンのその言葉で、ルビー・ムーンは目を細めます。 「なかなか、やるじゃない?」 ●水無月ギャラクシーワールド近く・海上 「ほぇぇぇぇ!!」  悲鳴を上げつつ、「盾」もろとも海に飛ばされて行ったさくら達。  「盾」は途中で消滅してしまい、空中で姿勢を立て直すことも間に合わず海に飛び込ん でしまう直前、飛ばされながらさくらは次のカードを取り出し叫びます。 「水(WATERY)!!」  本当なら、もっと適当なカードがあったのかもしれません。  しかし、それを考える余裕すら無く、さくらはその時目についたもの──海──を見て、 それを操ることの出来るカードを選択しました。  カードを使用した直後、海面が大きく凹みました。  それだけ落下までの時間が伸び、その間にケルベロスとユエは体勢を立て直しさくらを 二人で支えます。さくらの「翔」の力もあり、何とか空中でさくら達は静止しました。 「ありがとう、ケロちゃん。ユエさん」 「礼は良い。とにかくあいつを何とかしないと」  ユエが指差した先には、エプロンドレスの少女が立っていました。 「さくら、反撃や! あいつは岸壁におる!」 「うん!」  さくらは新たにカードを使うことはしませんでした。  何しろ反撃の材料は周り中にあるのです。 「ウオーティさん、お願い!!」  さくらが願うまでもありません。ウオーティの力により海面が凹んだ分、周辺の海面は 盛り上がっていました。  そのままでも岸壁に波が叩き付けるところをウオーティの力も加わり、さくらは岸壁に 立つ少女に水流を浴びせます。  水流の後を追うように、陸地へと飛行したさくら達。  見下ろすと、水流に打たれた少女が立ち上がったところでした。 「良かった。大丈夫みたい」  少女が無事な様子を見て、さくらは呟きます。  地上の少女もさくらを見上げ、ほっとした表情を見せた気がしました。 「さくら、来るで!」  地上から人間技とは思えない跳躍を見せた少女。  さくらは、彼女の攻撃をただ待っていることはしませんでした。 「風よ、戒めの鎖となれ」  空中に魔法陣が描かれ、その上に立つ形でさくらは杖を掲げます。 「風(WINDY)!」  呼び出されたウィンディは少女の身体にまとわりつき、そして竜巻のように彼女を遊園 地の外へと運んで行きました。少女の悲鳴を乗せて。 ●大観覧車  さくら達に取り残される形となった知世。  もちろん、ただ待っていた訳ではありません。  愛用のビデオカメラを手にして光学ズームを最大にしてさくら達の活躍をビデオに収め ていたのです。  とは言え、知世の居る観覧車のキャビンは地上百メートルの高さにあり、高度差と距離、 そしてさくら達の移動速度の関係で、思う様な絵が中々撮れないでいたのですが。 「さくらちゃん!」  今日、さくらが戦っていたのは使用人の服装を着た少女。  少女はさくらの魔法をものともせず、さくらを追い詰めている─そのように、知世には 見えたのです。  とは言え、知世に何が出来るでも無く、さくらが何とかしてくれると信じて、カメラを 構え続けることしか出来なかったのですが。  少女の攻撃により、海に飛ばされたさくらを見て、知世は叫び声を上げました。  しかし、すぐに安堵の表情を浮かべます。  さくらが飛ばされた方に大きな波が起こり、岸壁に立っている少女に襲いかかり、押し 流しました。直ぐに少女は立ち上がり、さくらに攻撃を仕掛けましたが、さくらは直ぐに 魔法──ウィンディ──を使い、少女を吹き飛ばしたのです。  少女は風の渦に巻き込まれ、ぐるぐると回りながら知世がビデオカメラを回している観 覧車へと近づいてきました。 「変わったメイドさんですわね」  ファインダー越しに少女を捉える知世。少女の肌が褐色であることが、少女が近づいて 来るにつれ明らかとなって来ました。  彼女を巻き込んだ風の渦は観覧車を逸れ、海の向こうへと移動して行きました。  風の渦に巻き込まれた少女を知世は何時までも追い続けていました。 ●ジェットコースター・『ネプトゥヌス』 「急がなくちゃ」  行く手を阻んだ少女を排除し、さくら達は事故を起こしたジェットコースターへと進ん で行きました。  幸いにして海に転落しかけたコースターの車両は未だ無事で、さくら達は安堵のため息 を吐きました。 「あいつ…」 「何か、匂うな」 「クロウさんと、何か関係があるの?」 「いや…。ただ、どこかで嗅いだことがある」  ケルベロスが彼女の匂いを確かめるかのように鼻を鳴らします。 「龍の者…」  ユエがぽつり、と呟きました。 「龍? ドラゴン?」 「人間の間に伝わっているのとは少し違うけどな。けど、その話は後や」  ケルベロスは首をコースターの方に向け、横を向いていたさくらに注意を促しました。  コースターの人に自分達の姿を見られる訳にはいかない。  そのような訳で、さくら達はコースターの乗客に姿を見られないように慎重に背後から 回り込みました。 「さくら、どないする?」 「うん。これを使おうと思うの」  さくらが手にしていたカードは、「THE FLOAT」と書かれていました。 「フロートのカードか!」 「うん。これなら…」  さくらがカードを使おうとした時です。  コースターが突然動き始めました。  それも、海面に落下するのでは無く、コースに戻って行く方向で。 「何!?」 「何やて!!」 「ほぇぇぇ!」  三者三様に驚きを表現している間もコースターは上昇を続けていました。 「これも…龍のチカラか」 「怪盗ジャンヌさんが何かしてるのかも…」 「兎に角、カードキャプターの出番は無くて済みそうやな」  そう言いつつ、さくら達が緊張を解こうとした時。  コースターの動きが止まりました。 「ほぇ!?」  続いて、女の子の悲鳴が響きました。  コースターから今の悲鳴の主らしい人影が、海面に向かって落下しつつありました。 「大変!!」 「さくら!」  慌てて、女の子を受け止めようとさくらは飛んで行きました。  ジェットコースター『ネプトゥヌス』は海面から百メートルの高さがある。  さくらが読んだリーフレットにはそう書いてありました。  そんな高さから落ちれば、下が海でも一溜まりもない。  何としても助けなきゃ。  女の子を受け止めようとしたさくらをユエとケルベロスも追いかけます。  ケルベロスはさくらの背中に叫びました。 「さくら、フロートのカードや!」 「そうか!」  今し方使おうとしていた「浮(フロート)」のカードは、さくらの手の中にありました。 早速、カードで少女を空中に浮かべようとしたさくらですが。 「上だ! さくら!」 「ほぇぇぇ!!」  再び、コースターが海面に向かって落下しつつありました。  そしてそれは、女の子を助け出そうとしていたさくらの真上だったのです。 「ほぇぇぇぇぇぇ!!」  慌ててさくらはコースターを回避しました。  しかし、コースターはそれ以上落下することは無く、再びコースに向かって急速に戻り つつありました。 「さくら! 下だ!!」  ユエの声が下から響き、さくらは慌てました。 「(大変!!)」  慌ててカードを手にしたさくら。 「あかん、間に合わん!!」  ケルベロスの悲鳴のような声が下から響きます。 「キャアアアアア……」  その更に下から、女の子の悲鳴がさくらの耳に届きます。 「(駄目! 間に合わないよ!! 誰か、時間を止めて!!)」  後から考えれば自分がそれをすれば良かったのですが、その時さくらは「浮(フロー ト)」のカードを使いながらそう思っていたのです。  女の子を助けようと、海面に向かってユエは急降下を続けていました。  人間に見られてしまう危険はありましたが、人一人の命に変えられるものではありませ ん。  さくらの魔法は未だ発動されず、これはもう駄目かもしれない。  ユエは思いますが、最後まで希望は捨てません。  その時、ユエの身体を風が通り過ぎていきました。  急降下していたので、下から上への風は感じていたのですが、それとは別の風が吹き上 げてくるのを感じたのです。  みると、海面に向かって落下しているはずの少女が、風に流されるように宙を舞ってい ました。 「…彼の者の身体を宙に浮かべよ! 浮(FLOAT)!!」  さくらの魔法か!? ユエの考えを打ち消すかのように、主が魔法を唱える声が上から響 きました。  すると少女の身体がふわりと浮き上がって行きました。  ユエの方も少女に近づいて行き、彼女の身体を抱き抱えます。  ユエ達にとっては幸運なことに、黒髪のショートカットの少女は、気を失っていました。 「良かった。間に合ったよ」  少女を抱き抱えたユエが上を見上げると、さくらがほっとした表情でこちらを見ていま した。 *  絶対に間に合わないと思った魔法が何とか間に合い、さくらはほっと一息。 「さくら、あれ」 「ほぇ?」  ケルベロスが首を向けた方を見ると、ジェットコースターも停止しつつありました。 「一件落着やな」 「うん」  先程から断続的に続いている雷が、またコースターの向こう側に落ちました。 「行こう。雷を受ける危険がある」 「うん」  ユエに言われ、さくらも肯きます。  ユエが少女を抱え、さくら達は取りあえず陸地へと向かうのでした。 ●大観覧車 「何とか、間に合ったようですね」  観覧車のキャビンの上で、さくらの戦いを見守っていたエリオル達。 「どうしてあの子に手助けを?」  エリオルの脇に控える、スピネル・サンは言いました。 「エリオルらしくなーい」  同じく、ルビー・ムーンはつまらなさそうに言いました。 「私の予定に無いことは、好まない。ただ、それだけです」  エリオルは呟きました。 「だとすれば、あれは貴方の予定にあることですか?」  ジェットコースターの方を注視していたスピネルが、エリオルに注意を促します。  エリオルが見ると、ジェットコースターでは戦いの第二幕が開催されようとしていまし た。 「無いね。だが…さくらさんが絡まないのなら、私にも関係の無いことだ」  そう言うと、エリオルはさくら達の方に視線を戻してしまうのでした。 (つづく)  そろそろ、第174話を書き始めないと(ぉぃ)。  では、また来週。 −−−− 携帯@ mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp