Path: ccsf.homeunix.org!ccsf.homeunix.org!news1.wakwak.com!nf1.xephion.ne.jp!onion.ish.org!news.daionet.gr.jp!news.yamada.gr.jp!newsfeed.media.kyoto-u.ac.jp!Q.T.Honey!ngate01.so-net.ne.jp!so-net.news!not-for-mail From: Keita Ishizaki Newsgroups: japan.anime.pretty,fj.rec.animation Subject: Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18) Date: Sun, 23 May 2004 14:27:48 +0900 Organization: So-net Service Lines: 441 Message-ID: References: NNTP-Posting-Host: news01e.so-net.ne.jp Mime-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=ISO-2022-JP X-Trace: news-fsa.so-net.ne.jp 1085290040 14293 192.168.20.15 (23 May 2004 05:27:20 GMT) X-Complaints-To: abuse@so-net.ne.jp NNTP-Posting-Date: Sun, 23 May 2004 05:27:20 +0000 (UTC) In-Reply-To: X-Newsreader: Datula version 1.51.09 for Windows Xref: ccsf.homeunix.org japan.anime.pretty:2693 fj.rec.animation:5078 石崎です。 # 投稿が闇に呑まれた様子なので、再度投稿します。 例の妄想第172話(その13)です。 # またまた、間が空いてしまいました。仕事のばかやろ〜。(←言い訳) Keita Ishizakiさんのの フォロー記事にぶらさげる形になっています。 # 本スレッドは「神風怪盗ジャンヌ」のアニメ版第40話から # 着想を得て書き連ねられている妄想スレッドです。 # そういう2次創作物が嫌いじゃ無い方のみ、以下をどうぞ。 (その1)はから (その2)はから (その3)はから (その4)はから (その5)はから (その6)はから (その7)はから (その8)はから (その9)はから (その10)は (その11)は (その12)はからどうぞ ★神風・愛の劇場 第172話『弱きもの』(その13) ●水無月ギャラクシーワールド・ジェットコースター『ユピテル』  本来の力を発揮すれば、人間達が作り上げたどのような乗り物にも負けない速 さで飛ぶことが出来るはずの龍族。  その一員であるトールンやアンが、自分たちよりもずっと遅い速度でしか動く ことが出来ない乗り物で絶叫を上げている様子をエリスは冷静な目で見つめてい ました。  魔王の側近く仕え、いざという時はその盾となるべく鍛えられ育てられた── 少なくとも、本人はそのように理解していました──彼女にしてみれば、加速度 の方向が予測がつかないために、少々身体が痛くなる程度の乗り物でしかなかっ たのですが。 *  トールンの絶叫は他の乗客の声量を全て足したよりも大きかったので、その周 辺を歩いている人たちの中の何人かは、思わず立ち止まりました。  もっとも、絶叫はこの遊園地の中では珍しくもなく、それ故に一度立ち止まっ た人の大半は再び歩き始めたのですが。 「ツグミさん?」  フリーフォール「テルス」に乗った後、大観覧車の方向に歩いて来たツグミ達。  トールンの声が響き渡った直後、固まってしまったツグミに、弥白は呼びかけ ました。 「ツグミさん」  最初呼びかけた時には反応が無かったので、再び声をかけると、ツグミは反応 しました。 「どうかしたんですの?」 「いえ。ちょっと、知っている人の声が聞こえたような気がしたものだから」 「お知り合い?」  日下部さんの声でも聞こえたのかしら。  そう考えた弥白でしたが、ツグミの答えは全く違うものでした。 「私の知り合いというよりは、彼の知り合い」 「全君の?」 「はぃ?」  何の事だか判らない、という表情で全は首を傾げました。 「全君が昔住んでいた家の隣のお姉さんなのよね。確か。彼女の声が」 「それなら、アンお姉さんでぃす」 「アンさん? 外国の方かしら」 「らしいわね。豪州訛りの英語を喋ってた」 「まぁ、全君はオーストラリアに住んでいたのね」 「違いまぁす…あ…」  思わず本当のことを言いそうになり、全はしまったと感じます。  自分がアン──この名前すら通り名なのですが──の家の隣に住んでいたのは、 魔界に住んでいた時のことなのですから。 「『おーすとらりあ』に住んでいたのはアンお姉さんだけでぃす」  間違ってアウストラリスの単語を出さないように注意しながら、全は言いまし た。 「そうよね。全君はフランスに住んでいたんだものね」 「はぁい」 「それじゃあ、フランス語とか話せるんですか?」  それまで、会話に入って来られないでいた佳奈子が話に割り込んで来て言いま した。 「あまり上手くはありませんが」 「!」 「!」  全がフランス語で話すと、弥白とツグミは軽く驚きました。 「(ノイン様に教わっていて良かったでぃす)」  何とか上手くごまかせたことで、全は密かに胸を撫で下ろしていました。 「アンさんの声、あのジェットコースターから聞こえていたみたい」  ツグミが指差した先には、白い木組みでコースが造られたジェットコースター がありました。 「木製のジェットコースター『ユピテル』ですね」 「それじゃあ、そちらに行ってみる? 全君」  そう全に言ったツグミ。ですが、全は首を振りました。 「アンお姉さんには何時でも会えるでぃす。それより、あっちに行きたいでぃ す」  そう言うと、全は海の方に突きだしたジェットコースターの方を指差しました。 「あれは…ハイダイブコースター『ネプトゥヌス』ですね」 「それじゃ、そっちに行こうか。山茶花さん、お願いします」 「わかりました。それじゃ、こちらに」  弥白と佳奈子の案内で、目的のコースターの方に歩き出したツグミ達。  全と手を繋いで歩いていたツグミは、彼が何故か緊張している様子なのに気づ きます。  そのこと自体には、特に疑問は感じていなかったツグミ。  子どもだと思っていた彼もきちんと「男の子」なのだろうかと考えた位です。  まさか、全が今朝方ノインから言いつけられていたことで、緊張しているとは 思いもしませんでした。 「だからその時が来る前に、ツグミさんを安全な場所に連れ出して下さい」  全は心の中で、今朝方ノインから言われたその言葉を反芻していました。 ●水無月島・海の聖母マリア教会 「東大寺警部。冬田以下桃栗警察署からの増援、ただ今到着しました」 「うむ」  聖女の命、頂きます。  この島の中で今朝方届いたジャンヌからの予告状の対象である、「聖女」が存 在すると思われる唯一の場所である聖母マリア教会の前で、桃栗署からの増援部 隊を引き連れて来た冬田が、東大寺氷室警部に到着を告げていました。 「しかし湾岸署の連中が良く我々の増援にうんと言いましたね」 「別に事件が起きたとかで、彼らもてんてこ舞いということらしい」 「成る程。予告の時間まで間がありません。至急、周囲の様子を調べませんと」 「うむ。頼むぞ」 「それで、作戦はどうしますか?」 「当初は、我々は隠れていて現れたら周囲を封鎖する手筈だったのだが、我々は 地理に不案内な上に数も少ない。正攻法で行くぞ」 「正攻法?」 「周囲を隙間無く警官で囲み、ジャンヌの侵入を許さない。もちろん、屋根の上 や下水道の出入り口まで人員を配置する」 「それで突破されたら?」 「冬田、ここに来るまでに湾岸署の連中に会わなかったか?」 「そう言えば、検問してましたね」 「それが答えさ。彼らに協力して貰う。何しろ、ここは我々の所轄では無いのだ。 人員の数が足りない」 「了解。ところで、提案があるのですが」 「何だ」 「そろそろ学校が終わる時刻です。都さんに連絡を入れて良いでしょうか?」 「……良いだろう。この際、都の手も借りよう。都の勘はあれで馬鹿に出来な い」 「ありがとうございます。それでは、早速連絡を」  そう言い、携帯電話を取り出した冬田は嬉しそうでした。  もちろん、普段からしているサングラスのために、表情は良く判らないのです が。 ●桃栗町  その日の授業を稚空は全くと言って良い程に聞いていませんでした。  そのお陰で、先生に指された時に答えられなかった稚空。  そのピンチに何ら恥じることなく「聞いてませんでした」と、堂々と答えてし まう辺りが稚空らしくもあるのですが、そのせいで先生の怒りを買ってしまい、 立たされることになってしまいました。  授業が終わった後で、校舎を飛び出した稚空。  オルレアンに駆け足で戻りながら、人影がいないのを良いことに、アクセスの 白い羽根を取り出し、通信を試みた稚空。  しかし、やはり濱坂市までは心の声が届かないのか、何の反応もありませんで した。  オルレアンの自宅に戻ってみても、弥白の側に居るであろうアクセスはもちろ ん、セルシアもトキも戻っている気配はありません。  意を決してベランダ伝いに鍵を開け放してあるまろんの部屋にも入ってみまし たが、もちろんまろんも出かけたまま。  ダイニングテーブルの上にはセルシア宛のメモが1枚残されていましたが、そ こには帰りが遅くなるとということ以外には、まろんの行き先を告げるような情 報はありませんでした。 「水無月ギャラクシーワールドか……」  自室に戻り、携帯電話に保存されている、弥白から来たメールを改めて見直し た稚空。  もしかしたら、まろん達もここにいるのかも。  そう思い、自分も行こうかと考えた稚空。  ですが、結局思いとどまりました。  後から考えれば愚かしくもその時の稚空はそう考えていたのです。  まろんが遊園地に行くのなら、俺を誘わない訳はないと。 ●ジェットコースター『ネプトゥヌス』近辺 「そうか。了解した」  そう言うと、レイは携帯電話を閉じました。 「何だったの?」 「司令部から御子の情報だ。どうやら、この遊園地のアトラクションを惑星の並 び順に乗っているらしい。で、今はユピテルの辺りだそうだ」  電話の内容を尋ねたミナに、レイは答えました。 「すると、御子の気が変わらない限りはここには暫く来ないってことね」 「そうだな」  そう答えながら、日没後に仕掛けるとすれば、この辺りが戦場になるだろうか と考えてしまう辺りが、根っからの武人であるレイの性でした。 「それじゃあ、あれに乗ろうよ」  海に突き出たコースターを指さし、ミナは言いました。 「コースターならさっきも乗っただろう。ほら、プルートとか言う」 「真っ暗闇の中を走るコースターなんて、ちょっと面白くなかったな」  二人が乗った暗黒コースター「プルート」は、室内コースターであるために、 今一ミナに取っては面白みが足りなかったのでした。 「そろそろ打ち合わせの時間だぞ」 「後、一つ位は大丈夫だよ」 「しかしあの行列だ。間に合わないかも」 「でもでも」 「あら? 奈美さんと麗子さん?」 「え!?」  躊躇するレイをミナが説得しようとしていた時、背後から声をかけられました。  この偽名を知る者は、この地上に一人しかいません。  二人が振り返ると、ツグミがシルク──今は、全と名乗っていますが──と一 緒に立っていました。 「こんにちわ。奈美さん達もここに来ていたのね」 「こんにちわ。ツグミさんにこんな所で会うなんて」 「お知り合い?」  ツグミの後ろに立っていた黒髪の少女が、レイとミナを見比べながら言いまし た。 「ええ。麗子さんと奈美さん。以前、困った時に助けてくれて。あ、こちらは山 茶花弥白さんと大門佳奈子さん。今日、ここを案内してくれているの」 「初めまして」  今朝方遠くから姿を見た二人を紹介され、彼女達も普通の人では無いと知るレ イとミナは僅かに緊張しつつ、挨拶を交わしました。 「奈美さん達もあれに乗るの?」 「うん!」 「それじゃあ、一緒に行列に並びましょうか」 「そうしよう! ね、麗子」  ミナにそう言われ、渋々肯くレイなのでした。 ●ジェットコースター『ユピテル』 「次はあのコースターよ。行くわよまろん!」 「おう!」  まろんが買って来たアイスクリームを食べた後。  疲れから回復したのか早くも都は次の目標に向かって前進を始めました。  まろんは正直もう少し休みたかったのですが、文句一つ言わずに都に付き合い ます。 「次は木で出来たコースターなのね」 「だから、『木星』なのか…」  そんなことを話しつつ、コースターの入り口に辿り着いたまろん達。  早速行列に並ぼうとした都は、当然ついて来ていると思ったまろんが居ないこ とに気づきました。 「またあの子は……」  どうせ、可愛い女の子でも見つけたのだろう。  軽い目眩を覚えつつ、まろんの姿を人混みの中から探そうとした都。  すぐに、まろんは見つかりました。  まろんが立ち止まっていた理由は、都の想像したとおりでした。 「おーい。アンさーん」  そう言いながら、まろんはぶんぶんを手を振っていました。  見れば、出口の方には見間違いの無い様な褐色の肌をした女性二人と男性一人 が歩いていました。  もっとも、まろんの呼びかけは届かなかったらしく、さっさと向こうの方に歩 いてしまいましたが。 「ほらほら。アンさん達ならさっき会ったでしょ。早く行列に並ぶのだ」 「はぁい」 *  十数分行列に並ばされた後(都が言うには、本格的に開園すれば数時間待ちに なるだろうとのことでした)、コースターに乗り込む順番が来たまろん達。  その前に、それまで乗車したコースターでも言われたことですが、手荷物をロ ッカーに預けるように言われました。 「お客様、その首から下げている物も外した方が良いですよ。途中で千切れてし まうかもしれません」 「え?」  係員に首から下げていたロザリオを指差され、まろんは少し焦りました。 「(やばっ。都に見られたら…)」  そう思い、まろんは都に気づかれないようにロッカーのバッグの中にロザリオ を入れました。 「(今、敵に襲われたらまずいかな? ま、神のバリヤーもあるし、何とかなる か)」  少々不安を覚えつつ、まろんはコースターに乗り込みました。 「それでは、出発しまーす」 「行ってらっしゃーい」  係員に送られて、ゆっくりとコースターは巻き上げ部分を上昇して行きました。  最前部に乗車したまろん達の右手には春の日差しを受け輝く海が見え、左前方 には開園直後に乗った大観覧車がゆっくりと回っていました。  大観覧車で都から言われたことを思い出したまろんは、隣に座っている都の方 を見ました。その都はと言えば、前方を真剣に見つめていて、まろんが見つめて いることにすら気づいていない様子です。  それで再び前方を注視したまろんの目の前に、コースターの頂点が迫っていま した。  頂点に辿り着いた直後、コースターは公称50度の落下角を持つファーストドロ ップをやや左側に捻るように曲がりつつ落下して行きました。 「キャアアアアアア…」  乗客の叫び声と共に疾走するコースター。  ファーストドロップを終えた後、キャメルバック状のコースを上下しつつ、や がてコースターは、コースが描き出している渦の中心部へと水平方向に回転しつ つ向かっていきました。  その様子を上から見ると、まるで台風の目に向かってコースターが駆けている ように見えました。実際、このコースターのことを「白き台風」と製作関係者が 言っていた程です。その名称は、諸般の事情で使うことは出来なかったのですが。  やがてコースターは渦の中に呑み込まれて行きました。  すると、それまでの開放的な空気は一変して、コースの木組みに囲まれた僅か な隙間をコースターが右へ左へと振り回される形となりました。  木製コースター特有の震動がまろん達観客を揺らし、思いもかけない方向から の加速度に観客は悲鳴を上げ続けていました。  そんな中、まろんも叫び声を上げつつも、妙に冷静でいました。 「(これはひょっとして、良い特訓になるのかも?)」  様々な方向から自分の身体に襲いかかる加速度の暴力。  コースターに乗りまくって自分を鍛えれば、この前の戦いのような不覚は取ら なくて済むかも。そんなことをまろんは考えていました。 ●水無月ギャラクシーワールド入り口  まろん達が遊園地で楽しく遊んでいた頃、都が想像したとおり大和もこの遊園 地にいました。  本当ならば、都を誘って二人で来ている筈だった遊園地。しかし、都は自分で は無くまろんと遊ぶためにチケットを自分から奪い取ってしまいました。 「はぁーあ」  久しぶりに両親に会うことが出来たということで悪いことばかりでは無かった ものの、今日の大和は来賓の相手をするばかりで、遊園地で遊ぶことすら出来ま せん。  一人で遊んでも空しいだけだと自分で自分を慰めていましたが。  そして今、大和はそろそろ現れる筈の大事な招待客を迎えにメインゲート前に 立っていました。  何でも、この遊園地のキャラクターグッズを開発したという会社のご令嬢とそ の友人だとかで、大和はその子達の案内をするように父から頼まれたのです。 「(案内と言ったって、彼女達も自分達だけで遊びたいだろうに…)」  大財閥のご令息というだけで、特別扱いをされた経験を持つ大和は、父からの 依頼に疑問を感じないでもありませんでしたが、ちょっと困った顔をしつつ自分 に頼んだいかにも頼りなげな父の顔を見ると、まるで自分を見ているようで嫌と は言えませんでした。  そんなことを内心思いつつ、暫く待っているとそれらしき車がゲート前に現れ ました。  黒塗りのリムジンが二台。そしてワゴン車が一台。  停車した車から最初に降り立ったのは、黒服を着た警護の者。  それが全員女性であると気づき、大和は少し驚きます。  やがて黒塗りの車のもう一台から降り立ったのは、長い黒髪の可愛い小学生高 学年位の女の子。続いて、もう一人の同い年位の短い髪の女の子が降り立ちまし た。  二人とも学校帰りらしく、制服姿でしたが立ち居振る舞いから最初の黒髪の子 が問題のご令嬢なのだろうと判断します。  二人が車から降り立つと、黒服の女性達は車を駐車場の方へ走らせ二人の側に は一人も残りませんでした。  二人(と言うよりは黒髪の女の子)に話しかけようと近づいた大和。  見れば黒髪の女の子の方は手にビデオカメラを持ち、もう一人の女の子の方を 熱心に撮影していて、その女の子の方は肩に載せた縫いぐるみに何か話しかけて いる様子。 「(なんか、変わった女の子だなぁ)」  そんな感想を抱いてしまった大和は、何だか黒髪の女の子が短い髪の女の子の お母さんみたいだなと感じてしまいます。 「(僕のお母さんは、あんな風になかなか側にいてくれなかったけど)」  などと、自分が子どもの頃の妄想に耽っていると。 「参りましょう!」 「うん!」  大和の横を黒髪の少女とその友達が駆け抜け、遊園地の中に入って行ってしま いました。 「あ、待って下さ〜い!」  事態に気づくと、大和は慌てて二人の少女を追いかけるのでした。 (続く)  予定通り(謎)。  では、また。 -- Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp