Path: usj.3web.ne.jp!fu0.bekkoame.ne.jp!news1.bekkoame.ne.jp!news.ksw.feedmania.org!newsfeed.media.kyoto-u.ac.jp!Q.T.Honey!ngate01.so-net.ne.jp!news-post.so-net.ne.jp!not-for-mail From: Keita Ishizaki Newsgroups: fj.rec.animation,japan.anime,japan.anime.pretty Subject: Re: C.C. SAKURA OriginalStory#10=?ISO-2022-JP?B?GyRCISEbKEI=?= C.C.SAKURA VS K.K.Jeanne Episode0=?ISO-2022-JP?B?GyRCIUobKEI=?= 3/4) (Re: Kamikaze Kaito Jeanne #40 (12/18)) Date: Fri, 17 Aug 2001 06:31:26 +0900 Organization: So-net Lines: 723 Message-ID: <9lhe3f$ak7$1@news01de.so-net.ne.jp> References: <9jrjoh$fcs@infonex.infonex.co.jp> <9juiso$3q4$1@news01bg.so-net.ne.jp> <9kdl9n$fa3@infonex.infonex.co.jp> <9leqm1$gt3$1@news01cd.so-net.ne.jp> <9lerpv$ijg$1@news01ce.so-net.ne.jp> NNTP-Posting-Host: pdf54bd.kngwnt01.ap.so-net.ne.jp Mime-Version: 1.0 Content-Type: text/plain; charset=iso-2022-jp In-Reply-To: <9lerpv$ijg$1@news01ce.so-net.ne.jp> X-Newsreader: Datula version 1.20.09 for Windows Xref: Sakura.CardCaptors fj.rec.animation:937 japan.anime:71 japan.anime.pretty:564 石崎@夏休み中です  この記事は、とある事情でNetNewsに投稿できない藤森英二郎さんより頂いた、 さくら&ジャンヌ妄想小説です。  そう言うのが好きな人だけどうぞ。 #ちなみに、News自体は現時点ではまだ読めるそうです。 #ただ、それもそろそろ危ないとか何とか(汗)  長さの関係で4分割しました。この記事は、4分割投稿のその3です。  以前の記事は、 その1及び挨拶<9lerpv$ijg$1@news01ce.so-net.ne.jp> その2    <9leqm1$gt3$1@news01cd.so-net.ne.jp>  …よりお楽しみ下さい。 改ページ後より、藤森さんの妄想です。 (ここから藤森さんの妄想) C.C. SAKURA OriginalStory#10 C.C.SAKURA VS K.K.Jeanne Episode0 アニメ版妄想小説No.10『さくらとまろんと冬の海』(その3) ★海水浴場 砂浜 「う・・・うん・・・」 とうとう息を吹き返し、ゆっくりと目を開けるさくらちゃん。 その目に入るのは、目にいっぱい涙をためながら心配そうに覗き込む 知世ちゃんと、自分に覆い被さっている見知らぬきれいなお姉さん。 「ほえ・・・?わ、私、どうしちゃったの・・・?」 「良かった・・・さくらちゃん・・・さくらちゃんがおぼれている所を、  このお姉さんに助けていただいたのですわ。」 「えっ!あ、ありがとうございます!」 「え、えと、私はちょっと通りがかっただけよ。お礼ならこの子に言って。  あなたが息を吹き返したのは、この子の介抱のおかげだから。」 「知世ちゃんも、ありがとう・・・」 「じゃ、私はもう行くわね。また大波が来るかもしれないから、  あなた達もすぐ堤防の上まで逃げるのよ!いいわね!?」 「あ、あの、本当に、ありがとうございました。」 目を開けて夕日に照らし出された少女の顔が、さらに美しく 見えてしまったまろんは、自分自身も決して夕日のせいではなく 顔を赤くして、そそくさと堤防の方へと走り去ってしまいます。 「あ・・・お名前をお聞きしませんでしたわ・・・  さくらちゃんの命の恩人ですのに・・・」 「それより、ウェイブ対策を練らんとあかん。  ウェイブは沖に退いただけなんや。また来るで!」 「・・・ほえ〜っ!!」 「!?どうしました?さくらちゃん!」 「封印の杖が・・・ない!」 「な、なんやてえ!」 さくらちゃんが持っていた封印の杖も、知世ちゃんが持っていたビデオカメラも、 津波に飲まれた混乱の中でどこかに放り出してしまっていたのでした。 (クロウカードは、ウェットスーツの  カード専用ポケットの中に入っていたので無事。) ★海水浴場 堤防の上 「フィン!フィン!!いる?」 堤防の上まで駆け上がり、フィンを探すまろん。 どうも相手が悪魔ではないようなので、 フィンは手を出せずにそのまま堤防の上で見守っていたのでした。 「まろ〜ん。途中で変身を解くなんて、無茶をして・・・大丈夫なの?」 「私のことはいいの!それより、あの子達が・・・あ〜っ!やっぱり!」 まろんが砂浜の方を振り向くと、案の定二人の魔法少女は 逃げ出そうとはしておらず、それどころか砂浜や波打ち際のあたりを 走り回って何かを探しているようだ。 「やっぱりって・・・どういうことなの?」 「フィン、お願い!多分魔法の杖だと思うけど・・・それを探してあげて!」 「ま、魔法の杖ぇ!?」 人間界のテレビアニメを熱心に見ていたわけではないフィンには、 魔法少女だとか魔法の杖だとか言われても状況がよく理解できません。 しかしまろんには、あの二人の魔法少女が自分と同じように何か使命を持って 津波を食い止めようとしているのだということが直感的にわかるのでした。 「あの子達は、人に知られたくないだろうから、  私が探してあげるわけにはいかないのよ!でも、フィンなら・・・」 「ちょっとまろ〜ん、私にわかるように説明して!」 「んもう、じれったいわねえ・・・あの子達が光の壁を作って  津波を食い止めようとしたのはフィンも見てたわよね?」 「う、うん・・・」 「あの津波が悪魔の仕業かどうかはともかく、  何か不思議な力が原因で起きているのもわかるわね?」 「確かに、悪魔とは違う変な気配は感じたけど・・・」 「その気配、今も感じる?」 「えっと・・・うん、感じるわ!あっちよ!」 堤防の上から、沖の方を指差すフィン。 太陽は半分ほど水平線に沈み、さっきまでの荒れようが嘘のような 静かな海が広がっているが、津波を起こした「何者か」はまだ沖にいるのだ。 「津波は、また来るのよ。あの子達は、その津波を食い止めようとしているの。」 「人間に、そんな無茶なことできるわけないじゃない!」 「あの子達も、怪盗ジャンヌと同じように普通の人じゃないってことね。  さっきの津波だって、見事防いだじゃない。  ちょっと壁の高さが足りなかったけど。」 「それが、魔法少女なの・・・?」 「そう。そして、あの子達はこのロザリオやプティクレアと同じくらい  大事な杖を、津波に巻き込まれた時になくしちゃったんだわ。」 「あの子達はその杖を探しているのね?」 「私が他の人にジャンヌであることを知られたくないのと同様に、  あの子達も自分達が魔法少女であることを知られたくないはずなのよ!  だからお願い!フィン!!」 「わ、わかったわ・・・」 フィンなら普通の人には姿が見えないはずである。 仕方なくしぶしぶ砂浜へと飛んで行こうとする フインの羽をつまんで引き止めるまろん。 「や〜ん、何よう、まろ〜ん。」 「フィンは海の中を探してあげて?」 「え〜っ!こ、この寒いのにぃ〜っ?!」 「天使なら風邪をひかないんじゃなあい?  やってくんなきゃ、二度とジャンヌのお仕事はしてあげないんだから。」 「・・・んもう!わかったわよ!やればいいんでしょっ!」 まろんにつかまれている羽を振りほどき、海へと飛んで行くフィン。 「魔法の杖」がどんな形状の物かも知らぬまま・・・ ★海水浴場 海の中 (暗ろうてよう見えんなあ・・・) 封印の鍵を探して、暗く冷たい海の中を進むケロちゃん。 外はまだ明るいのですが、沈みかけた太陽の光は海の中まであまり届きません。 さくらちゃんたちは、砂浜を知世ちゃん、波打ち際をさくらちゃん、 海の中をケロちゃんが探すように分担していたのでした。 そして、フィンと話をしていたまろんは、知世ちゃんのフードの中から 黄色い物体が飛び出して海の中に飛び込むのを見ていなかったのです。 (そうや!グロウの力や!) グロウの力を使って、みずから光を発するケロちゃん。 ケロちゃんの体からこぼれ出た光の粒は、沈むでもなく浮かび上がるでもなく 漂って、海の中を少し明るくします。 元々真冬でも自前の毛皮(?)一枚で平気なケロちゃんは、 ファイアリィの力を使えば冷たい海の中でもへっちゃら。 海中の探索もみずから志願したのです。 (早よう見つけんと・・・) 明るくなっても、津波のせいで舞い上がった砂がまだ漂っている海の中。 あまり視界がきかずにあせるケロちゃんですが、自分の目と封印の鍵の わずかな魔力の気配を頼りに探し続けるのでした。 * (つ、冷た〜いっ!さ、寒いなんてもんじゃないわ!こ、凍っちゃうよ〜っ!) こちらも海の中を魔法の杖を探して進むフィン。 天使は人間としての感覚を残しているので、風邪をひかなくても寒さは感じます。 (魔法の杖って・・・どんな形の物なのよ〜?さっきから見つかるのは、  木の枝やゴミばっかり・・・え〜ん、まろんのバカぁ〜っ!) とにかく、「杖」らしき形状の物を探すフィン。 津波に立ち向かった少女が棒状の物を持っていたのはフィンも遠くから 見ていましたが、さくらちゃんの手を離れた封印の杖が、 「鍵」の形状に戻ってしまっているなんて思いもしません。 (あれ?なんか、あっちの方に光が・・・何かしら・・・?) フィンは暗い海中で、何やら光る物体が漂ってくるのを見つけ、 そちらの方向へと進路を変えるのでした。 * (な、何や?魚にしては変な生き物やな・・・?) (ホタルイカか何かの集団だと思ったら・・・な、何なの〜?) ケロちゃんの目の前にいるのは、人間のような姿をしているものの妙に小さく、 しかも羽が生えている生き物。 フィンの目の前にいるのは、どう見ても羽が生えたぬいぐるみだが、 発光しているし動いていた。 しばしにらみ合ったまま動かないケロちゃんとフィン。 水中ではお互いしゃべることもできず、相手の動きを見守るだけです。 (・・・あ、あかん、息が苦しゅうなってきよった・・・) (・・・これ、私が見えてるみたい・・・ん〜っ・・・ブクブク・・・) お互い息が切れてきた二人(二匹?)は慌てて水面へと浮かび上がり、 頭を出して荒い息をつくのでした。 「ぷはあっ!し、死ぬかと思たあ!」 「はあはあ・・・だ、誰よ、あなた!」 「なんや、しゃべれるんかい。わいはクロウカードの守護獣、ケルベロスや!」 「ケロベロス?」 「ケ・ル・ベ・ロ・スや!決してケロちゃんなんかやないで!」 (な、なんなのよ〜!こんな生き物がいるなんて聞いてないわよ〜っ!) 「そういうお前は・・・」 「な、何よ!」 「その顔、その体、その羽・・・」 (ギクギクッ!) 「妖怪やな!」 (ブクブク・・・) 「天使」だと見破られたかとあせったフィンですが、「妖怪」だなどと とんでもないことを言われて、力が抜けて沈んでしまいます。 「なんや、どないしたんや?」 ザバッ! 「誰が妖怪よ!私は・・・」 すぐに海から飛び出して全身を見せつけ、 天使だと名乗ろうとしてかろうじて思いとどまるフィン。 天使の存在を知らせていいのは、ジャンヌの生まれ変わりであるまろんだけです。 例え相手が自分の姿が見える得体の知れない生き物でも、 天使だと名乗るわけにはいきません。 「・・・妖怪なんかじゃないわよっ!」 (せめて『妖精』くらいに言って欲しいなあ・・・) 「妖怪やないとすると・・・その人間のような顔、その人間のような体、  その白い羽・・・わいのよう知っとるやつによう似とる・・・」 (ドキドキッ!) 「お前、ひょっとしてユエの仮の姿か?」 ドボンッ!・・・ブクブク・・・ 「ユエ」が何かはわからなかったフィンですが、人間に近い自分の姿と 白い羽を見て、「天使」以外に見られるとは思いもしなかったので、 またも力が抜けて海に落ちてしまったのでした。 ザバッ! 「や〜、ユエ。久し振りやな〜っ!」 「私は妖怪でもユエ?でもないわよ〜っ!私の名前はフィン!!」 再び水面に浮かび上がったフィンの手を取り、 上下に動かして再会を喜ぶケロちゃん。 フィンはその妙に暖かい手を振り払い、 こんな得体の知れないモノとは付き合いきれないとそっぽを向きます。 「なんや、ユエやないんか・・・」(がっかり) 「そうだ!こうしちゃいられない!私は探し物してる途中だったわ!」 「あかん!わいも鍵を探しちょるとこやった!」 「えっ、『鍵』?」 「なあ、お前、鍵を見かけへんかったか?  ペンダントになっちょる金色の鍵なんや!」 「ちょっと待って。『杖』じゃなくて『鍵』なの?」 「杖になる鍵なんや!ああっ、早よう見つけんと、また津波が・・・」 「ペンダントの『鍵』だったら、確かあっちの方で見たような・・・」 「ほんまか?!」 自分が来た方の、海の底を指差すフィン。 杖を探していたフィンは、海の底で金色に輝く『鍵』を見つけ、 それにわずかに妙な気配を感じたものの、杖ではないのでほっといたのでした。 「ありがとな〜っ!『フン』〜っ!!」 ゴボオッ!!・・・ブクブクブクブク・・・ザバッ! 「ゴホッ!ゴホッ!だ、誰が『フン』よ〜っ!!  わ、私は『フィン』なの〜っ!!」 汚物のような発音で名前を略されてしまい、 三たび海中へと沈んでしこたま海水を飲んでしまったフィン。 しかし、得体の知れない生き物はとうに海中へと潜り、 フィンの絶叫にも似た訂正の言葉は届かなかったのでした。 ★海水浴場 砂浜 「あったで〜っ!」 波打ち際で封印の鍵を探していたさくらちゃんの元へ、 鍵を持って飛んでくるケロちゃん。 もう光っていないので、薄闇の中その黄色い体も遠くからは良く見えません。 「ケロちゃん?!」 「『フン』っちゅう妖怪に見つけてもろたんや!」 「よ、妖怪さん・・・ですか?」 「ほえ?」 「違うっちゅうとったけど、体が小そうて、羽が生えとって、  海の中も空も自由に動けて、言葉もしゃべるんやから、妖怪しかあらへん!」 (そ、それだと、ケロちゃんも妖怪になっちゃうんじゃ・・・) (ケロちゃんは、妖怪さんというよりは妖精さんですわね。) さくらちゃんも知世ちゃんもケロちゃんに突っ込みたい所だったが、 今はその暇はない。 さっきからクロウカードの気配は再びどんどん大きくなり、 潮も引き始め、海鳴りも聞こえてきていたのである。 「今度こそ、封印しないと・・・レリーズ!」 ケロちゃんから封印の鍵を受け取り、封印解除して杖にするさくらちゃん。 ケロちゃんは再び知世ちゃんのフードの中に戻り、 いまだびしょ濡れの知世ちゃんを暖める仕事を続けます。 「おっ?知世もビデオ見っけたんか。」 「はい。防水仕様でしたので、なんとか無事でした。  さくらちゃんの勇姿を収めたテープがだめになってしまわなくて、  本当に良かったですわ〜っ!」 「はうぅ〜。」 無事ではあったが、砂だらけになってしまっているビデオカメラに 頬擦りしながらさくらちゃんの撮影を続ける知世ちゃん。 砂浜を探していた知世ちゃんは、鍵は見つけられなかったものの 自分が放り出したビデオカメラを見つけていたのでした。 重いビデオカメラは波にさらわれずに、そのまま砂浜に残っていたのです。 ・・・ゴオオオォォォォォォ・・・ 「き、来よったで!」 「こ、今度のは先程の津波よりはるかに大きいですわ!」 「シールドが効かへんとなると・・・ど、どないしたらええんやぁ!」 遠くからでもさっきの津波より大きいことがわかる、 高さ百メートルはあるかと思われる大津波。 沈みかけていた太陽をたちまち覆い隠して迫る巨大な黒い壁に対し、 さくらちゃんは少しもひるまず2枚のカードを取り出します。 「ファイアリィの時みたいに、2枚のカードを同時に使ってみる。」 「ウオーティさんと・・・ウィンディさん?」 「無茶や!あの大津波・・・もうクロウカードだけの力やない!」 「ほえ?」 「この一年の間に、この海岸で起こった波の力を全部集めたもんや!  言わば、海そのものを相手にしちょるようなもんやで!」 「臨海学校の時、妙に波が静かだったのですが・・・  まさかクロウカードさんがそんなことをしていたなんて。」 「・・・それでも、やらなきゃ・・・封印しなくちゃ!」 「さくら!」 「・・・だいじょうぶ。絶対、だいじょうぶだよ!」 「さくらちゃん・・・」 無敵の呪文を唱え、2枚のクロウカードを手に杖を構えるさくらちゃん。 その目の前には、海からそそり立つ巨大な水の壁が迫ってきているのでした。 ★海水浴場 堤防の上 「まろ〜ん!見つけたみたいよ。」 自分で「魔法の杖」らしきものを見つけることはできなかったものの、 「杖になる鍵」を探している得体の知れない生き物に、 鍵の場所を教えることができたフィン。 どうもその「鍵」が「魔法の杖」だったらしく、フィンは自分の役目を果たして 堤防の上で待つまろんの元へ戻ります。 「・・・って、なんでまたジャンヌに変身してるのよ〜!」 「だって、寒いんだもん。」 びしょ濡れで震えていたまろんは、堤防の影で再びジャンヌに変身して、 寒さを凌ぎながら砂浜の少女達を見守っていたのでした。 ジャンヌは海から小さな物体が飛び上がって、少女達の元へと飛んで行き、 その後「さくらちゃん」と呼ばれていた少女が再び杖を手にするのも 堤防の影から目撃しています。 (フィンのおバカ〜!誰が直接手渡せって言ったのよ〜っ!) と、思っていたのですが、どうも少女達の所に行った小さな影は フィンではなかったようで、フィンはもっと離れた海中から空に飛び立ち、 自分の所まで飛んできたのでした。 「あの変なのが、『魔法少女お付きの小動物』なのかしら・・・?」 「えっ!あの子達、お付きの小動物もいたの!?」 「・・・動物・・・ねえ?自分ではケロなんとかだって言ってたけど。」 「じ〜ん・・・本当に、魔法少女っているんだ・・・なんだか感動しちゃう。」 「あれがそうなら、あの子達も大変よね。」 「フィン、大変って?」 「とにかく、『変』な生き物だったの!」 変な生き物に『妖怪』呼ばわりされたばかりか、 汚物のようにまで呼ばれてしまって、まだフィンはプンプン怒っています。 ジャンヌの方はフィンの「ケロなんとか」という言葉から、 カエルのような小動物なんだろうと妙な想像をするのでした。 (カエル型なら、海の中もお手の物よね。やっぱりフィンより役に立ちそう。) 「さ、寒〜う!ちょっとあっためてよ!まろ〜ん。」 「キャ〜ッ!な、何〜っ!?」 びしょ濡れで震えているフィンは、ジャンヌの懐へもぐりこんでしまいます。 ジャンヌ自身も海に飛び込んでびしょ濡れになったのですが、変身を解き、 もう一度変身すると服は乾燥してきれいになっているのでした。 「あ〜、ぬくぬく。」 「んもう!ほんとに役立たずなんだから!」 自分の胸の中で丸まったフィンに腹を立てながらも、 なんだか愛しいと思ってしまうジャンヌ。 フィンが来てから一人きりになることがほとんどなくなり、 寂しさを感じる暇もない。 ジャンヌの仕事は気が進まないが、その事だけはフィンに感謝していたのです。 ・・・ゴオオオォォォォォォ・・・ 「はっ!ちょっとフィン!のんきに丸まってる場合じゃないわよっ!」 ポンポンと自分の胸を叩き、フィンに再び津波が来たことを知らせるジャンヌ。 ジャンヌの懐から顔を出したフィンは、堤防よりもはるかに高い大津波が 沈みかけた太陽だけではなく、空全体を覆いそうな勢いで迫ってくるのを 見るのでした。 「な、何なのお〜!?あれえ!」 「さっきの津波の倍どころじゃないわね・・・」 「冗談じゃないわ!あんなのに巻き込まれたら、  ジャンヌと言えどもどうなることかわかったもんじゃないわよ?」 「そんなの関係ない!  ・・・それに、あの魔法少女達だけじゃ止められないんじゃ・・・」 すでに自分自身が逃げ腰になっているフィンと、なんとしても 魔法少女達を助けて津波を止めたいと考えているジャンヌ。 先程の魔法の壁があの魔法少女達の力の限界だとしたら、 今度の大津波は間違いなく堤防を越えて町を壊滅させそうだ。 ジャンヌの専門は悪魔退治だが、 それでも何か自分にできることはないのだろうか? 「フィン、あれには悪魔は全然関わっていないのね?」 「・・・やっぱり悪魔じゃないわ。津波の中に、何か別の力を感じるの。」 「悪魔じゃないとしても・・・どうにかならないの?」 「ジャンヌの悪魔封印用のピンなら、一時的に動きを止めるくらいは  できるかもしれないけど・・・」 「それでいいわ!」 左手でプティクレアをかざし、中からピンを取り出すジャンヌ。 「神の名の元に!」 1本・・・2本・・・プティクレアからジャンヌの力の及ぶ限りピンを出し、 右手の指ではさんでいきます。 「じゃ、ジャンヌ・・・」 3本・・・4本! 「はあはあ・・・こ、これなら・・・どう?」 「ジャンヌ・・・無茶をして・・・」 右手の指の間に1本づつ4本のピンをはさみ、 堤防の上に立って大津波を見つめるジャンヌ。 その前には、夕焼けで赤く染まった空を1/3ほども覆い隠した、 巨大な水の壁がそそり立っていたのでした。 ★海水浴場 砂浜 「あの津波を止めよ!ウオーティ!ウィンディ!」 撮影している知世ちゃんの所からは水着に、堤防のジャンヌの所からは やっぱりすっぽんぽんに見えるウエットスーツを着たまま、 封印の杖を振るって2枚のカードを同時に使うさくらちゃん。 開放されたウィンディは風の力で津波を押し戻そうとし、 ウオーティはウェイブに操られて津波を構成している水そのものを 逆に操って津波を押し戻そうとする。 遊園地を火の海にしたファイアリィをも一瞬で倒す、 4大元素のうち2つものカードの力。 「お〜っ!津波の勢いが弱まったで!」 「すばらしいですわ!さくらちゃん!」 さしもの大津波もその勢いを弱め、ついには停止するかと思われたその時、 再びじりじりと津波はさくらちゃんの方へと動き出す。 「んんっ・・・!」 「さくらちゃん!」 「さくら〜っ!」 目をつぶり、渾身の力で2枚のカードを操るさくらちゃん。 それでも、大津波は止まりません。 イレイズと自分自身を友枝町からこんなに遠くまで運んだことにより 力を使い果たしていたウェイブは、1年近くに渡ってこの近辺で発生した 波のエネルギーを全部吸収し、力を貯えていたのである。 その大質量とエネルギーは、ウオーティとウィンディの 同時攻撃ですら退けるほどだったのでした。 ★海水浴場 堤防の上 「さっきとは違う魔法ね・・・すごい・・・」 「でも、まだ津波は止まってないわ!」 堤防の上から砂浜で津波を止めるべく魔法を使っている少女を見守るジャンヌと、 相変わらずジャンヌの懐に入ったまま顔だけ出しているフィン。 フィンは一刻も早く逃げ出したい所でしたが、 ジャンヌが踏みとどまっているので見捨てては行けません。 少女の魔法で極端に速度が遅くなったものの、まだ津波が少女に襲いかかろうと 少しづつ動いているのを確認したジャンヌは、 いよいよ自分もピンを投げるべく振りかぶります。 「こ、こんな遠くからピンを投げるの?」 「あの大きさなら、目をつぶってたって当たるわよ!」 自分の胸の間から心配そうに見上げるフィンをチラッと見て、 右手の指の間にはさんだ4本のピンに祈りを込めるジャンヌ。 「闇より生まれし悪しき者を、ここに封印せん!チェックメイト!」 ジャンヌは、堤防の上から迫り来る大津波に向け、 渾身の力を込めて4本のピンを同時に放つのでした。 #クロウ・リードの属性は「闇」だったから、 #クロウカードも「闇より生まれし者」になりますね。 ★海水浴場 砂浜 (はう〜っ!もう、だめぇ・・・ほえ?) もうだめかと思われた時、さくらちゃんの頭上を4本の小さな光の矢が 通り過ぎ、目前にまで迫っていた水の壁に突き刺さります。 とたんに、電撃が走ったかのような光が津波の中を走り、 じりじりとさくらちゃんの方に迫りつつあった水の壁が停止するのでした。 「な、なんや?何が起こったんや?!」 「今ですわ!さくらちゃん!」 「う、うん!汝のあるべき姿に戻れ!クロウカード!」 津波が止まったのを見て、津波に向けて封印の杖を振るうさくらちゃん。 さしもの大津波もたちまち分解し、水のような魔力の流れとなって 封印の杖の先端に集まり、1枚のカードを構成します。 「・・・ふう。」 「やりましたわ!さくらちゃん!」 「ようやった!さくら!」 ついにウェイブを封印したさくらちゃんは、 気が抜けて砂の上にへたり込んでしまいました。 しかし、封印されたウェイブのカードはしばしさくらちゃんの頭上で 漂っていましたが、ふわふわと後ろの方へと飛んで行きます。 「ほえ〜っ!」 「こ、こら〜っ!どこ行くんや〜っ!」 さくらちゃんは慌てて立ち上がり、 堤防の方へ飛んで行くウェイブのカードを追うのでした。 ★海水浴場 堤防の上 「やった!やったわ!」 「あ、あの大津波が・・・消えちゃった・・・」 「消えてなくなっちゃったってことは、あの少女が創った魔法の壁と同じで、  あの大津波も魔法の産物だったのかもね。フィン。」 「ま、魔法って・・・すごいのね・・・」 巨大な水の壁が跡形もなく消えてしまったことに驚きながらも、 大津波の脅威から開放されて喜ぶジャンヌとフィン。 自分の放った悪魔封印用のピンがどれだけ役に立ったのかはわかりませんが、 それでも魔法少女達の手助けができたらしいのは誇らしくもありました。 「あら?ジャンヌ、何か変よ?」 「えっ?」 改めて砂浜の方を見ると、ぼんやりと光る極小の物体がジャンヌめがけて 飛んで来る。そして、それを追うかのように二人の魔法少女が 堤防の方へと走って近づいていた。 (ま、まさかあの変な生き物なんじゃ・・・) (まずいわ!ジャンヌの姿を見られちゃう!) 一度会っただけなのに、フィンは二度と「自称ケロなんとか」の 「魔法少女お付きの小動物」には会いたくなかった。 まして、その変な生き物には自分の姿が見えている。 人がいる所で会ったら、自分の存在が人に知られてしまうかもしれない。 ジャンヌの方は、さっきまろんの姿で魔法少女達に会っているし、 少女達を助けた時に変身シーンを見られた恐れもある。 ここでジャンヌの姿を見られたら、まろんとジャンヌの関係を疑われそうだ。 「いや〜ん!」 「へ、変身を解かなきゃ!」 フィンは慌ててジャンヌの懐から飛び出し、町の方へと逃げてしまう。 ジャンヌは、頭のリボンをほどいてまろんの姿へと戻るのでした。 * 変身を解いたまろんの目の前にぼんやりと光る小さな物体が止まり、 光を失ってまろんの手へとスーっと降り立つ。 つかんで見ると、それは一枚のカードだった。 (・・・「波」・・・「WAVE」・・・?) まろんの手の中にあるのは、漢字と英語の文字、 それに波の絵が書いてあるタロットのようなカード。 (・・・どうもあの大津波は、こいつのせいだったようね・・・) 悪魔を封印するとチェスの駒になるのと同様に、 フィンが感じた力の源を封印するとこのようなカードになるのだろう。 今、堤防に付いている階段を駆け登ってくる魔法少女達は、 このカードを集めているらしい。 (・・・魔法少女も、大変なんだ・・・) 怪盗家業(悪魔封印業)を始めたばかりのまろんにも、 その大変さは容易に想像できる。 今回の津波のように、その「力の源」が悪魔以上に直接的に 人に災いをもたらすものならなおさらだ。 実際、魔法少女達がいなければ、まろん自身のみならず町まで 大津波に呑み込まれていただろう。 (・・・これは、私には無用の物ね。) 魔法少女達の大体の事情を理解したまろんは、 息せき切って堤防の上まで駆け上がってきた魔法少女に、 このカードを渡すことを決意するのでした。 * 「はあ、はあ、はあ・・・」 「はい、これ。落とし物よ。」 高い堤防を駆け上がって息を切らしているさくらちゃんの前にいるのは、 さっき助けてくれたきれいなお姉さん。 そのお姉さんが、「全てわかっているわ」というようなほほ笑みを浮かべながら 自分にクロウカードを差し出している。 「ほ、ほえ・・・?あ、あの・・・」(なんだか、観月先生みたい・・・) にっこりとほほ笑んでカードを差し出している目の前のお姉さんを、 メイズの時の観月先生に重ねてしまったさくらちゃんは、 思わず顔がゆるんで「はにゃ〜ん」となってしまいます。 「あ、ありがとうございます・・・」 にこやかな顔の中にも観月先生同様有無を言わせぬ迫力を感じ取った さくらちゃんは、観月先生の時と同じに何も聞かず素直に クロウカードを受け取るのでした。 (く〜っ!か、かわいい・・・思わず抱き締めたくなっちゃう。) (ああっ!なんだかとっても絵になりますわぁ。) その時、太陽は水平線の彼方にほとんど沈んでしまっていましたが、 堤防の上だけはかろうじて赤く照らし出していた。 さくらちゃんの後を追って堤防の上に駆け上がってきた知世ちゃんは、 「はにゃ〜ん」となりながらお姉さんからクロウカードを受け取っている さくらちゃんを、絶好のアングルで撮影しているのでした。 * 「ハ・・・ハ・・・ハックション!」 せっかくの美しいシーンをぶち壊すかのようにくしゃみをしてしまうまろん。 ジャンヌの服は、破れようが濡れようが変身するたびに 新品同様に再生しますが、まろんの服はそうはいきません。 変身前の状態をそのまま再現したまろんの服は、ケロちゃんのおかげで なかば乾いている知世ちゃんの服とは対照的にびしょ濡れのままだったのです。 「いけませんわ!すぐ、濡れた服を脱いで体を暖めないと、  カゼをひいてしまいます!」 「知世ちゃんのキャンピングカー、シャワー室あったよね?」 「もちろんですわ。さくらちゃんの命の恩人にカゼをひかせるわけには  まいりません。ぜひ、熱いシャワーを浴びて行ってくださいな。」 「べ、別にいいわよ。私より、あなた達の方が  熱いシャワーが必要なんじゃない?」 「私はウェットスーツだから大丈夫だよ。  私より、普通の服のお姉さんと知世ちゃんの方がびしょ濡れなんだから、  早く熱いシャワーを浴びないと。」 「わたくしはカイロ(ケロちゃん)がありましたから大丈夫ですわ。  わたくしより、おぼれたさくらちゃんと、  びしょ濡れのままこんな寒い所にいたお姉様の方が・・・」 「ハックション!」 「くしゅっ!」 「クシャン!」 「・・・ふふっ。」 「あははっ。」 「おほほっ。」 互いに譲り合っていた三人ですが、 三人共くしゃみをするに及んで笑い出してしまいます。 とにかく、早くしないと三人共カゼをひいてしまうと。 まろんはジャンヌに変身することによってその間寒さから身を守って いたのですが、今は濡れた服と夕方の冷たい風に震えています。 知世ちゃんは背中のケロちゃんに暖めてもらっていましたが、 暖かいのが背中だけではさすがに長時間はもちません。 防水・防寒が完璧な知世ちゃん特製ウェットスーツを着ているさくらちゃんも、 長時間濡れたままでいたので体が震えてきていたのでした。 「・・・これは、三人とも熱いシャワーを浴びるべきですわ。」 「そうだね。知世ちゃん。」 「お、お願いしようかな・・・(ブルブル)」 「キャンピングカーのシャワー室ですから、三人で入るには  さすがに小さいですけど、お湯はタンク式なのであまりもちません。  狭くて申し訳ないですが、三人一緒に入るしかありませんわね。」 「うん!」 (さ、三人一緒って・・・え〜っ?!) あこがれの魔法少女の前ですっぱだかにならなければならないということに 戸惑うまろんの手を引き、さくらちゃんは駐車場に置いてある 知世ちゃんのキャンピングカーの方へと走って行きます。 そのほほえましい光景をも、 知世ちゃんのビデオカメラは余さず撮影しているのでした。 ◆アイキャッチ入りま〜す(最後のアイキャッチです)◆ (3/4はここまでです)  では、最後の記事へと続きます。 -- Keita Ishizaki mailto:keitai@fa2.so-net.ne.jp