Card Captor Sakura Original Story
後藤です。
・4/1「木之本桜さん12歳バースデー」記念、
・同日のTV版再放送最終話放映記念、
・去る3/26のBS2「封印されたカード」放映記念と、
・「今後は毎週金曜日、BSハイビジョンで見ましょう」記念の
オリジナルストーリーです。
実はこのストーリー、
news:96anpq$3p1$1@inc.m.ecl.ntt.co.jp
にて一度発表したんですが、あまりにも雑なので、増補改訂しました。
ただ、一度発表しているものなので、二度目の披露には躊躇いが
ありました。
この度、上記のきっかけを得たのと、
熱心な薦めもありましたので、この度発表することにしました。
といっても、そんな大層な内容ではありません。
考案のきっかけは、
・映画のラストの2,3日後には小狼が香港に帰っちゃうから、その前に
さくら、小狼それぞれの気持ちの整理をさせてあげないといけない
ということをふと考えたからです。
あと、
・極力自然な流れで、クライマックスをキスシーンに…
(おデコでも頬でもいいから)
というのもやってみたかったんです。
でも、ストーリー作るのって、難しいですね。
何度読み返しても、流れが平坦で、山場がなくって……
何せ文学的センスが無いから、詩とか情景とか季節などを絡めたような話、
なかなか作りづらくて。
時間的には「封印されたカード」ラストの翌日以降、
小狼&苺鈴の日本滞在最終日の前日です。
[SCENE1]
苺鈴、さくらの部屋に遊びに来ている。
苺鈴「じゃ、明日、噴水の前にね。小狼には伝えてあるから。」
さくら「う、うん…」
苺鈴「本当は小狼から申し込むべきところなんだけどねー。」
さくら「ううん、いいの…」
苺鈴「嬉しい?」
さくら「……」ぽっと顔を赤らめる
苺鈴「腕時計、ちゃんと持ってきてね。」
さくら「うん。」
苺鈴「小狼と、ペアだから。大道寺さん家の特注品なんですって。」
そこへ、お呼びでないケロが。
ケロ「よお、小娘!」
苺鈴「…何しに来たの?今、木之本さんと大事な話してるのよ。」
ケロ「あさって香港に帰るんやってな。」
苺鈴「そうよ。それがどうしたっての?」
ケロ「わいの真の姿、拝ましたろか、思うてな。」
苺鈴「一度見たじゃない……見たくない。」
ケロ「遠慮せんでもええねん。ええか、わいの真の姿は、そりゃもう…」
苺鈴「だから、見たくないって、言ってるじゃない!」
ケロ、お構いなしに真の姿に。
ケルベロス「どうや〜。カッコええやろ〜。」
苺鈴「別に。」不貞腐れて横になっている。
ケルベロス「ほれほれ。」
さくら「ケロちゃん、やめてよ〜。こんな狭いところで翼広げるの…」
ケルベロス「わいの雄姿、見納めになるでー。
…いや、知世に撮らせて、送ったるさかい。」
苺鈴「テープが勿体無いわ。」
ケルベロス「知世も、さくらばかり撮らんと、たまには全編わいの主役で
映画、撮ったらええねん。
さくらみたいに、コスチューム代はかからんし、
何と言うたかて、わいはそのままで十分、画になるしな。
この前のヤラセと違ごて、ゼニ、かからへん。」
苺鈴「何?そのヤラセって。」
ケルベロス「知世の奴、さくらが『創(クリエイト)』で作った化けもんを、
わいとさくらとユエとでやっつけるゆう映画、撮ったんや。
さくらに自分の作った衣装、着せたいばっかりにな。
知世はワルやで、ほんま…。」
苺鈴「何、言ってんのよ。大体、『わいとさくらと』って、何を勝手に
自分を最初に持ってきてるの?あんたじゃなくて、木之本さんでしょ?
主役は。」
ケルベロス「ちっちっちっ…甘いで、小娘。わいはな…」
さくら「ほ、ほえ〜……;」
[SCENE2]
そして、デート当日。
ともえだ商店街の広場、噴水前。
待ち合わせ時間、噴水のそばに立っている小狼。
腕時計を見ている。
木陰から様子をうかがっている苺鈴と知世。
とーぜん知世はビデオを構えている。
苺鈴も双眼鏡を首に提げている。
苺鈴「やっぱり遅れるのね、木之本さんは」
知世「それがさくらちゃんのよいところですから。」
苺鈴「今日のこのデート、私がコーディネートしてるんだから
ぜひ成功させてもらわなきゃ。」
知世「お優しいんですね、苺鈴ちゃんは。
…でもこれで、私も『さくらちゃんのおデート』の画が
撮影できますわ。」知世の目がキラリン。
苺鈴「……いつも思うんだけど、大道寺さんのビデオカメラ、
今小狼がいるところまで録音できるの?」
知世「今日は特別な日ですから、隠しマイクを用意しました。
昨日さくらちゃんと李君にお渡しした腕時計に仕込んでありますの。」
苺鈴「はー、そういうことだったの。あのペアウォッチ。」
知世「これをつけていただければ、お二人の会話が聞き取れますわ。」
知世、苺鈴にヘッドフォン型の受信機を渡す。それをつけながら、
苺鈴「……ぬいぐるみも言ってたけど、大道寺さん、人が悪いわね。」
知世「まあ、ケロちゃんが?」
苺鈴「聞いたわよ。ヤラセ映画の話。」
知世「おほほほほほほ。」
苺鈴「まあ、それはいいとして、
ぬいぐるみったら、元の姿に戻れるようになったのがよっぽど
うれしかったのか何か知らないけど、私に見せびらかすのよ。」
知世「ケロちゃん、いつも気になさってましたわ。」
苺鈴「昨日なんか、木之本さんの部屋の中で変身して、
翼を目一杯広げちゃってさ。うっとりしてるの。バッカみたい。
ぬいぐるみが剥製になっただけじゃない、ねえ?」
知世「あ、さくらちゃんが…」
……
さくら、現れる。息を切らせて。
さくら「…ごめんね、待った?」
小狼「いや…」
さくら「夕べから待ち遠しくて、全然眠れなくなっちゃって、ごめんね…」
小狼「…行こうか。」
さくら「うん…」
小狼「あ、あの…、さくら…」
さくら「なあに?」
小狼「その、…その服、かわいいな。さくらに似合っていると思う…」
さくら「本当?」
小狼「ああ…」
さくら「…うれしい、ありがとう。」
うれしくて、目をキラキラさせて、小狼の顔を見つめる。
小狼「…」
真っ赤っ赤の小狼。さくらの手を握ろうとするも、自分の手がふるえている。
……
隠しマイクからの会話を聞いている知世と苺鈴。
苺鈴「ほら、そこよ、小狼。それをきっかけに手を握れって言ったじゃない。」
知世「まあ☆」
苺鈴「……あーっもう、何やってんのよ、じれったいわね。
早く握っちゃいなさいよ。」
知世「素晴らしい演出、ありがとうございます。」
……
さくらの方から、小狼の手を握る。
2人見つめあい、微笑む。
苺鈴「やれやれ…結果オーライってとこね。」
知世「さくらちゃんの笑顔、超絶かわいいですわ〜☆」
[SCENE3]
映画館。
恋愛映画。映画を見ている2人。
夕ぐれの海辺を背に抱き合う恋人同士のシーンが映し出される。
さくらと小狼の席より前方で、相変わらず撮影を続行している知世と、
しばし映画に見入っている苺鈴。
スクリーンに視線が行っている2人には、知世&苺鈴は気づかない。
映画に感動して涙が頬を伝わっているさくら。
それに気づいてそっとハンカチを差し出す小狼。受け取るさくら。
さくら「ありがとう…」涙をそっと拭う。
……
苺鈴「(同じく、映画に感動して泣きながら)うっ、ううう…
あのさ、大道寺さん」
知世「はい?」
苺鈴「(鼻をかみながら)こんな暗いところで、撮影できるの?」
知世「ええ、このカメラは母の会社の特製で、隠しマイクからの音声受信の他、
赤外線撮影もできますし、暗いところでも鮮明な画が録れるよう、
色々な工夫が凝らされてますの。」
苺鈴「あ、そう…」
知世「それだけじゃありませんわ。
ビットレート15MbpsのMPEG2記録形式で、
画質は高品質・高精細、
テープメディアではなくDVD−RWメディアに記録できて、
その場で簡単な編集もできますの。
それから、ギガビットイーサネットのインタフェースもついてますし、
映像の配信サーバとしても……」
苺鈴「………;あの、映画、見たいんですけど…」
勝手にしゃべっている知世。知世の技術論の展開に閉口する苺鈴。
そうこうしている間に、上映終わり、客が続々映画館を後にする。
……
さくら「…とってもよかった。いっぱい、泣いちゃった…」
イマイチこの手の映画が不得手で返す言葉が出ない小狼。
小狼「……、行こうか。」
さくら「うん。」
……
苺鈴「あ、行っちゃうわよ。」
知世「はい、追跡ですわ。」
[SCENE4]
喫茶店。
さくら、あたりをキョロキョロ見回す。
苺鈴、自分達に気づかれたかと、思わず姿を引っ込める。
知世はマイペースで撮影快調。
誰もいないことにさくら、ほっとする。
小狼「どうした?」
さくら「ううん、何でもないの。…また誰か出てきたらって、
ちょっと心配しちゃった。」
小狼「そうか…」
……
苺鈴「あーっ、ビックリしたあ。見つかったかと思った…」
知世「だいじょうぶですわ。さくらちゃんはふんわりですから。」
苺鈴「小狼はトロいし、やっぱり2人はお似合いなのね。」
……
雪兎「いらっしゃい。」ウェイター姿の雪兎が。
さくら「雪兎さん!」
雪兎「あ、お邪魔だったかな?」
さくら「…どうしてここに?」
雪兎「バイト。とーやも一緒だよ。」
さくら「やっぱり…」
雪兎「でもだいじょーぶ。とーやは厨房だから、当分手が離せないよ。」
ほっとするさくら。
雪兎「ご注文は?」
さくら「クリームソーダ2つ。」
雪兎「かしこまりました。…とーやには内緒にしておくからね。」
数分後、クリームソーダを持ってきて
雪兎「お待ちどうさま」
さくら「ありがとうございます。」
雪兎「じゃ、もう邪魔しないから、ごゆっくり。」
真っ赤になるさくらと小狼。
……
知世「月城さん、ナイスフォローですわ」
苺鈴「ねえー、私達も何か注文しない?お腹すいたわー。」
何となく退屈になってきた苺鈴。
[SCENE5]
遊園地へ向かう途中。
ともえだ公園。
楽しそうに歩く2人と、
その後をこっそりついていく2人。
…クロウの気配には気づいても、知世&苺鈴には気がつかない2人。
苺鈴は空腹の余りポップコーンをムシャムシャ食べながらだったりする。
ときどき鳩にもくれてやっている。
知世「ああ、今日はベストショットの連続で目眩がしそうですわ〜☆」
苺鈴「……、よくやるわね〜。」
知世「このデートコースも、苺鈴ちゃんがセッティングなさったんですか。」
苺鈴「トロい小狼が、自分で決められるわけ、ないでしょ。」
知世「まあ。」
苺鈴「今後もデートのたびにサポートしてあげなきゃならないなんて、
そんなの、やだからね。」
知世「そういうことでしたら、今後はぜひぜひ私がフルコースで
サポートさせていただきますわ。」
苺鈴「とにかく、考えられる限りのことはしたのよ、これでも。
2人のためを思って。」
知世「本日の結末は、どうなってますの?」
苺鈴「え?」
知世「劇的な展開だったり、するんでしょうか?」
苺鈴「あ、あ、あのね、いちおう、木之本さん家まで送って…」
知世「ええ。」
苺鈴「その、あの、…小狼が…木之本さんのおデコに、
その…、チュッ…て…キスを…」
知世「まあ☆」
「キス」の一言に、あらぬ妄想に耽る知世。
苺鈴「あ〜っもう、恥ずかしいこと言わせないでよー。」
恥ずかしくてジタバタしている。
知世「それは何があっても録り逃すわけにはいきませんわ〜☆」
こんなことを言っている苺鈴&知世の存在に
まだ気が付かない、前を歩いている2人。
[SCENE6]
遊園地。カップルだらけだったりする(当たり前)。
苺鈴「(ムスッとして)女同士で来るところではないわね〜。」
知世「まあ、私達は遊びに来たわけではありませんから。」
……
ジェットコースター。
喜んでいるさくらと、かなり怖がっている小狼。
……
回転ブランコ。さくらだけ乗っている。小狼は見守っている。
回っている間、小狼に手を振っているさくら。手を振り返す小狼。
苺鈴「小狼って、案外この手のもの、苦手なのよねー。
まあいいわ。ここは木之本さん主導みたいだし。」
相変わらず撮影を続けている知世。
……
観覧車。2人は手をつないでいる。
2人が乗り込んだすぐ後に、
すばやく後続の車に乗り込む知世&苺鈴。
苺鈴「気づかれなかったわよね。」
知世「抜かりはありませんわ。」
……
さくら「そう言えば、観覧車に乗ってたときだったね…
あの子(無のカードのこと)出てきたの。」
小狼「ああ…そうだったな」
さくら「念のため、今日はカードさん達、置いてきたの。」
小狼「…いつもあんなこと、起こって欲しくないけどな。」
小狼、微笑む。
さくら「そうだね。」
さくら、小狼に微笑を返すも、
明日小狼が香港へ帰ってしまうことに寂しさを感じ、
胸がキュンとした。
さくら(明日、帰っちゃう……)
ちょっと顔が曇ってしまう。
小狼「どうした?」
さくら「え?あ、ううん、何でもないの。」再び笑みを返す。
……
苺鈴「ここから撮影するの、やっぱり無理があるんじゃない?」
知世「そうでもありませんわ。」
ふと周りを見る苺鈴。カップルばっかり。
苺鈴「あ〜あ、やんなっちゃう。やっぱり女同士で来るところではないわ。
小狼を片付けたら、早く彼氏、見つけないと。」
全然意に介さない知世。
[SCENE7]
夕方、木之本家。
小狼はさくらを家まで送っていた。ここまではセッティング通り。
苺鈴&知世はまだついてきている。
門の前。
小狼「今日は楽しかった…。」
さくら「うん…」
小狼「ありがとう。」
さくら「こちらこそ…ありがとう。」
さくらの胸の痛みはさらに増してきた。
あと数分でいなくなっちゃう。嫌だ……
せめて今夜だけでも、ゆっくりお話したい……。
苺鈴「いよいよね…」
知世「ええ☆」
……
さくら「小狼君…」
小狼「ん?」
さくら「あ、あのね…、夕食、うちで食べてかない?」
小狼「え?」
さくら「お父さん出張でいないんだ。今夜はわたし一人なの…」
さくら、小狼の顔をじっと見つめる。
小狼も、さくらとゆっくり話したかった。
小狼「あ、ああ…。」
さくら「よかった…」
家の中に入る2人。
小狼「でも、ケルベロスは?」
さくら「ケロちゃんは、今日一日、知世ちゃん家にいるわ。
お菓子、ごちそうするからって。」
小狼「そうか。」
さくら「今頃知世ちゃんに一杯お菓子もらって幸せそうな顔してると思う。」
……
苺鈴「あ、そうだった……;
帰るといるんだ、あのスポンジタワシ。
今日は一晩中、自慢話聞かされるんだわ…」暗くなる苺鈴。
知世「ケロちゃんには部屋から出ないよう、言っておきますから。」
苺鈴「でも、予想外の展開になったわ。」
知世「これは、少女漫画とは思えない展開ですわ☆」目が輝く。
苺鈴「…さすがの大道寺さんも、撮影はできないでしょう。」
知世「ご家庭での撮影は、さくらちゃんの許可をいただかないと…」
苺鈴「そうよねー。」
知世「でも、お2人の会話はこのまま……おほほほほ。」
苺鈴「あっそ。…ま、いっか。」
2人は帰宅するも、盗聴は続行することとなった。
苺鈴「結局、キスシーンの撮影、お預けね。」
知世「合成しますわ。過去のライブラリーから…」
苺鈴「……やっぱ、ワルだ…」
[SCENE8]
夕食終わり、さくらの部屋。
コーヒーを飲みながら話をする2人。
さくら「小狼君に、見せたいもの、あるんだ。」
小狼「見せたいもの?」
さくら「小狼君にもらった熊さんね」
小狼「え?ああ…」
さくら「ほら、ここに大事にしてあるよ。『小狼』って名前付けたの。」
小狼「そうか…、ありがとう。」
さくら、棚の戸を開けて熊を見せるが、その傍らに何か置いてあることを
思い出して、急いで閉める。
さくら「あは、あはははははは……。」
小狼「さくら……?」
さくら「あ、あの、…小狼君のご家族、お変わりない?」
小狼「え?……ああ。母上も、姉上達も。
姉上達は元気すぎて困るくらいだけどな。早く結婚すればいいのに。」
さくら、香港の李家のことを思い出しながら、
お姉さん達にペタペタ触られたことや、小狼のお母さんにキスされたこと、…
さくら「また、お会いしたいな。」
小狼「……、そう言えば、あのときから母上は、さくらのこと、
気に入っていたような…。まるで、こうなることがわかって
いたんじゃないかって、…」
さくら「…」
小狼「…」
さくら「…、また、香港、行ってみようかな」
小狼「え?」
さくら「ほら、小狼君、見て、この前のカード。」
小狼「え…ああ…」
希望(ホープ)のカードを受け取る。
小狼「希望(ホープ)…。無のカードが希望……」
さくら「このカード、本当はね、
あの子(無のカードのこと)だけじゃないの。」
小狼「え?」
さくら「本当はね、カードには字が書いてなかったの。」
小狼「…」
さくら「もともと、羽の生えたハートの絵だけだったんだけど、
あの子と一緒になって、こうなったの。」
小狼「それって…」
さくら「もともとこのカード、わたしが作ったの。」
小狼「…」
さくら「ううん、ひとりでにできたの。」
小狼「…」
さくら「4ヶ月前、小狼君が香港に帰っちゃうって、知世ちゃんから聞いて、
それで、もう会えないのかって……そう思ったら、
すごく悲しくて、胸が苦しくなって……、
そしたら、魔方陣が現れて、カードが…」
小狼「さくら…」
さくらの目が潤んでいる。
さくら「あの時、空港に行けたのも、
小狼君の気持ちがなくならずに済んだのも、
このカードのおかげなの。」
小狼「…」
さくら「だから、…」
小狼「…」
さくら「もう会えないなんて、やだ……」
さくら、小狼の胸の中で、涙がこらえられなくなって。
さくら「やだよ、もう……」
小狼「さくら…」そっと肩を抱き寄せる。
さくら「小狼君………」
……
大道寺家。
顔を見合わせ、困り顔の苺鈴と知世。
苺鈴「…、そろそろ小狼を迎えにいきましょ。」
知世「ええ…」
……
その隣の部屋で、菓子を貪り食った結果、
腹が膨れて動けなくなっている某ぬいぐるみ。
ケロ「わいはしあわせもんや…」
[SCENE9]
翌日の朝。さくらの部屋。
ちょっと目が赤いさくら。
棚を開けて、小狼からもらった熊のぬいぐるみの隣に置いてあった何かを
とりだし、ギュッと抱きしめている。
さくら「……」
そして、それを袋に詰める。
1階から、
藤隆「さくらさーん。知世さんですよー。」
さくら「あ、はーい。」
身支度をして、1階へ。
[SCENE10]
国際空港。
小狼と苺鈴を見送りに来たさくらと知世。
苺鈴「木之本さんも、インターネットはじめたら?私達みたいに。
小狼にも勧めてるのよ。」
さくら「うん、知世ちゃんに教わって、メール書くよ。」
知世「簡単ですから、すぐに覚えられますわ。」
苺鈴「それじゃ、ちょっと大道寺さんと土産物見てくるね。」
さくら「え……」
苺鈴、作戦どおり知世とその場を離れる。
……
向き合いながらもしばし俯く2人。
さくら「…」
小狼「…」
……
苺鈴「木之本さんに、住所と電話番号を書いた紙、持たせた?」
知世「ええ」
苺鈴「とりあえず、お互い連絡だけはできるようにしておかないとね。」
知世「さくらちゃん、まだお元気なかったですわ。」
苺鈴「でも、つらいのは今だけよ。早く立ち直ってもらわないとね。」
……
さくら&小狼「あ、あの……」
顔を合わす2人。
さくら、カバンから熊のぬいぐるみを出す。
さくら「これ…。」
小狼「え?」
さくら「やっと渡せるよ、これ。」
小狼「これは…」
さくら「昨日、ちょっと、見られちゃったけど…」
昨日、小狼の熊のそばにあったのは、
いつか小狼に直接渡すときのために作っておいた熊のぬいぐるみ。
小狼「…、これ、『さくら』って、名前付けていいか?」
さくら「うん。」
小狼「あ、あの、さくら……」
さくら「……なあに?」
意を決して
小狼「……俺、戻ってくる。」
さくら「え?」
小狼「……、時間、かかると思うけど、必ず。」
さくら「小狼君……」
小狼「……それまで、待っててくれ。」
さくら「……、どれくらい?」
小狼「わからない……、けど、必ず戻ってくる。」
さくら「必ず?」
小狼「ああ。」
さくら「…うん、待ってるよ。ずっと。」
小狼「…ありがとう。」
お互いの住所と電話番号を書いた紙を交換する。
……
苺鈴「どうやら、立ち直ったみたいね。」
知世「ええ。
ではこれで、何の躊躇いもなく決定的なシーンを…」撮影開始。
苺鈴「…、あのねー。」
……
目を閉じるさくら。
さくらの額にそっとキスする小狼。
……
感動して涙ぐんでいる苺鈴と知世。
苺鈴「(洟がジュルジュル)あたしって、大演出家になれるかも…」
知世「ええ…」
……
おや、何故か空港でバイトしていたあの2人。
桃矢「ん?(さくらと小狼のキスシーンを目の当たりにして)
あーっ!あのガキ、何してやがる!」
雪兎に羽交い絞めされている。
桃矢「ゆき、離せ!」
雪兎「とーや、駄目だよ。仕事中なんだから。」
さりげなく桃矢の妨害をする。
[SCENE11]
飛行機の中。
苺鈴「いつか、木之本さんを香港に招待したら?」
小狼「ああ…。」
苺鈴「でも、香港にお嫁に来るんじゃ、木之本さん、
おねーさま達には苦労するんじゃない?」
小狼「……」
苺鈴「まあ、小狼の方から日本に行くのが一番いいんだけどね。」
小狼「え?」
苺鈴「今度から一人で行きなさいよ。
まったく、手がかかるんだから。これじゃいつまでたっても
彼氏見つけられないじゃない。」
小狼「……ああ。」頬を赤らめる。
微笑む苺鈴。
苺鈴「さあ、帰ったら、おばさまにパソコン、買ってもらうのね。」
[SCENE12]
飛行機を見送るさくら、知世
知世「行ってしまわれましたね…」
さくら「うん…、早速お手紙書くよ。…インターネットとか言ったっけ。
それ、教えてね。」
知世「はい」
すると、何故か
山崎「インターネットと言えばね」
さくら「ほえ?」
山崎「代表的なのはワールドワイドウェブだよね。
ウェブってくもの巣という意味なんだけど、
インターネットは実際にくもの糸でコンピュータ同士を
結んでいるんだよ…」
さくら「そ、そうなの…?」
千春「はいはい」山崎の耳を引っ張り、退場。
千春「ごめんね、さくらちゃん、知世ちゃん。
……大体、何だって空港でデートしなけりゃなんないのよ。
ちょっと、聞いてる、山崎君?」
山崎「あはははははははは。」
さくら「え?あの2人、何故……」呆気にとられている。
仲むつまじい2人の様子を見て微笑む知世。
[SCENE13]
その日の夕方。
さくら、買い物の帰り道。
夕飯の買い物と、小狼への手紙を書くため、エアメール用の封筒と便箋を
買った帰り。
日中の暑さから徐々に解放されようとしている。
風が吹いてくる。この季節にしてはさわやかな風。
麦わら帽が飛ばされないように、空いている手で押さえている。
さくら「いい風……」
風の心地よさを感じながら、
さくら「もう、着いたかな……」
ローラーブレードを転がしながら、一人並木道を通り、家路へと。
BGM:丹下桜さんの「西風の帰り道」。
[END]
--
S. GOTO
mailto:goto.shinichiro@lab.ntt.co.jp
Fnews-brouse 1.9(20180406) -- by Mizuno, MWE <mwe@ccsf.jp>
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